3月3日(木)4日(金)に,不登校をはじめとする学校における集団での学習になじめない児童生徒を対象に,ワクワクする体験的な学びの場を提供するプロジェクト「東大LEARN in 広島」を開催しました。
今年度4回目となるプログラムのテーマは,「はしからはしへ 君は はしを つなぐことができるか?」でした。
10名の子供たちが「はし」をキーワードとして「はし」をつなぐことができるのか,探っていきました。
≪1日目:オンラインでの開催≫
講師(●)が,参加した子供たち(○)に向けて,次のスライドを提示しました。
● 「今回のテーマは,これです。」
● 「今から,言うよ。」「はし」
● 「『はし』はどの『はし』をイメージする?」
・・・
○ 「もう一回言って!」
● 「はし」
・・・
○ 「ブリッジ(橋)の『はし』かな?」
● 「違うよ。端っこの『はし』だよ。」
○ 「ええー。」
● 「はし」
○ 「次こそ,ブリッジ(橋)の『はし』だ。」
● 「正解!」
○ 「いえーい。」
● 「なんでわかったの?」
○ 「なんとなく。」
○ 「チョップスティック(箸)は分かりやすい。だって,イントネーションが違うから。」
○ 「『はし(橋)』と『はし(端)』は難しいな。」
● 「えっ,今どっち言ったの?」「分からないよ。」
子供たちは,伝えられた「はし」が何を指しているのか今までの経験などを駆使して,聞きながら考えていきました。
○ 「イントネーションの違いで聞き分けたらいいんだよ。」
○ 「前後の文でイントネーションは,変わるんじゃないかな。」
● 「もし東京だったら,(イントネーション)は違うのかな。」
● 「ちょっと東京の中邑先生に聞いてみようよ。」
● 「中邑先生!」
中邑先生:「みんなが何を言っているのか分からないな。『はし(橋)』と『はし(端)』の区別がつかないよ」
○ 「広島と東京は同じだ!」
● 「これ他の地域だったらどうなの?」
中邑先生:「大阪の友達がいるので聞いてみよう。岡先生!」
中邑先生:「岡先生,『はし(箸)』もってきて。」
岡先生:「中邑先生!『はし(橋)』なんてもってこれんわ!」
○ 「えー!大阪は逆…!?」
ここで講師が子供たちにミッションを投げかけます。
「みんなに,ミッション!」
―他の地域では,どんなイントネーションなのか調べろ!―
子供たちは,一旦画面から離れ,調べました。
戻ってきた子供たちは,
○同じ東京都でも本土と小笠原諸島などで結構違うらしいです。
○音声で“はし”を発音してくれるものを見つけた。
○栃木も(広島と)イントネーション3つとも一緒だって
○北海道釧路市のおばあちゃんと電話をつないでみたら,広島と同じだって。
○鹿児島の人に聞いてみたら,箸は同じだった。
などなど
親戚や知り合いに聞いたり,発問してくれるWEBサイトを探したりして調べたようです。
多くの全国各地の情報を報告していました。
講師が,
「さあ,明日のミッションはこれだ!」
と投げかけて1日目が終了しました。
≪2日目:集合(広島市内)≫
新白島駅に集合し,それから,三角州(広島城や県庁のある)の北端へ移動し,
そこで,子供たちに,三つのミッションが言い渡されました。
―どうやら,この三角州の「はし」を歩いていくと,重要な「はし」に出会い,「はし」で出会えるらしい―
ミッション1 「はしを歩き,はしを探しながら,一番重要なはしを撮影しろ!」
ミッション2 「ここから4つ目のはしの はしの はしの はしに書いてあるミッションをクリアしろ!!」
ミッション3 「この写真の場所に,14:00までに集合せよ!!!」
「はしのはしのはしのはし?」
「よく聞こう。あっ,はし(橋)の はし(端)の はし(箸)の はし(端)か!」
「重要な橋って何だろう…。」
ネットでのマップ検索は禁止。時間内に,子供たちは,目的の場所までたどり着くことができるのでしょうか。
縮尺のない白地図が配られ,子供たちは考えます。
「ここはどこだろう。」
「どっちからこのはし(端)に行こうか。」
「この写真のはし(橋)は,宇品橋っぽいな。でも自信ないな。どうやって調べよう。」
悩みながらも作戦会議を終え,4組のグループは,それぞれ進む東西の端を選び,進んでいきました。
西からはしへコースは,3組のグループが挑戦
東からはしコースは,1グループが挑戦。橋を巡っていくうちに,調べたいものがたくさん!
三角州を縦横無尽に端から端へ。
街の人に聞き込みをしながら目的地のはしが,宇品橋の端であることをつきとめた子供たちは,無事宇品橋に到着しました。
宇品橋の下で,ミッションの報告会を行い,見つけた重要な橋について共有していきます。
すると,
橋の検査に来られていた
広島市道路交通局道路部道路課橋りょう保全対策係の左:胡子さん,右:三木さんが子供たちに話しかけてこられました。
「君たち何しているの?」
「重要な橋の話をしているの?教えてほしいな。」
「みんなが重要だと思った相生橋もとても重要な橋ですね。」
「橋は,人を運ぶだけでなく,ライフラインも運んでいます。上を見てみるといろいろな大きさのパイプがあるでしょう。」
「戦前からある橋。宇品橋のように,街づくりのために作られた橋もあります。全て,重要な橋です。」
宇品橋の構造についても詳しく説明していただき,子供たちの質問にも丁寧に答えてくださいました。
報告会が終わり,最後のミッションです。
講師は,
「今日は寒い中,長い距離良く歩いたね。橋の向こう側にお店があるからそこでジュースでも飲みながらゆっくり終わりの会をしよう!ただし…」
と意味深な言い方をします。
ここでプログラムの途中,講師に渡されていた封筒を開封し見てみると・・・
「向こう側に行けれんじゃん!」
「どうやって行くの?」
「御幸橋まで戻って迂回していけば行けるよ!」
「いやだよ!一休さん方式で渡ればいいんよ!」
ひと悶着ありつつも,
子供たちはなんとか宇品橋を渡り,お店にたどり着きました。
朝からずっと,寒い中「はしからはしへ」探究した子供たちは,
温かいお店で,休息し,
バス,JRを乗り継いで,それぞれの家路へ
プログラムを終えた子供たちは,
「マップ検索がないと不便だった。スマホを持っていないと,迷子になった。昔の人はどうやって道を選んだのか気になりました。」
「同級生の子や先生と一緒に歩きながら学べた。」
「広島市は,河川敷が多い。」
「歩いてみると,広島県は広い。」
「心に残ったことは,橋の難しい話を聞いたり,ハンバーガーショップに行ったこと。」
「人間ってテクノロジーに依存しすぎて,テクノロジーがないと生きられないようになっている。便利になったけど簡単に崩壊しやすいことが問題。」
といった感想を寄せてくれました。
参加した子供たちには,このプログラムで学んだことから,さらに探究を深め,自ら学び続けることを期待しています。
過去のプログラムの様子などはコチラ→https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku17/learn.html
「LEARN」についてはコチラ→https://learn-project.com/
「東大ROCKET」についてはコチラ→ https://rocket.tokyo/