令和3年2月19日~26日に、広島市中区全域の皆様及び就業者の方を対象に、PCR検査のトライアル実施を行いました。
⇒ PCR検査の集中実施・トライアルの振り返り【令和3年3月11日】
PCR検査のトライアル実施(部分的・試行的実施)の目的や次の感染拡大時に備えた対策等については、こちらをご覧ください。
⇒ PCR検査集中実施の進め方【令和3年2月10日】
本県が今後予定している、PCR検査の集中実施に関して、令和3年1月29日に会見を行いました。
PCR検査の集中実施の意義や目的、これまでにいただいたご意見やご質問等にお応えしています。
感染状況|これまでのPCR検査の取組|PCR検査の集中実施の意義・目的|
専門家の意見|県民のみなさまにお伝えしたいこと(FAQ)|基本計画案|メッセージ
PCR検査の集中実施 [令和3年1月29日(金)]
会見のスライド全体はこちら PCR検査の集中実施について (PDFファイル)(1.76MB)
まず、最初に感染状況について説明していきます。
次の図は、3月以降の発症日別の流行曲線と、11月以降を拡大したグラフです。
11月末から急カーブで感染者が増加しましたが、年末で増加のピークは抑えられて、現在は減少傾向にあります。
赤のラインは、過去の7日移動平均のピークです。
現在の感染者数と過去のピーク時の数値を比較すると、減少傾向にあるとは言え、1月14日時点で過去のピークの約4倍の数値になっています。
感染者が減ったとは言いながら、それまでの3つの感染の山のピークを大きく上回っています。
次に11月以降の流行曲線を拡大したグラフでは、12月12日から取り組んでいる集中対策期間において、感染拡大に歯止めをかけることができています。
しかし、現状で、やっと12月の急増し始めた頃に戻ったところで、まだまだ安心できる感染状況ではありません。
続いて、他自治体の感染状況と本県を比較していきます。
次の図は、直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数の推移について、他県の状況を表したものです。
12月下旬には、広島県が、全国2番目となった時期もありましたが、1月28日時点で6.94まで下がっており、27日時点で全国31番目まで下がっています。
また、次の図は、茨城県と北海道のグラフを抜き出したものです。
茨城県は、時短の要請をして、12月には10を切ったものの、時短要請を止めた後、12月下旬から再び感染が急拡大しています。北海道においても、同様の傾向が見られます。
現在、都市部を中心に全国で感染が拡大しており、さらには、国内で変異株の市中感染の疑いもある中、広島県がこのまま減少傾向が続くかどうか、非常に重要な時期であると考えています。
次の図は、本県におけるインフルエンザの定点医療機関あたりの報告患者数を示した流行曲線です。
平成27年以降の毎年の状況を示していますが、例年、1月から2月にかけて、流行のピークを迎えていることがわかります。
ちょうど今の季節が、感染症が猛威を振るう時期であり、より強い警戒が必要な時期であるといえます。
ちなみに、今シーズンのインフルエンザは、ほとんど0に近い値で推移しています。コロナに対する感染防止対策が、インフルエンザの流行も抑えているものと思われます。
次に、公表日別の県市別分科会参考指標をお示しします。
広島市の新規報告者数は、ステージ3の「15人以上」の基準を下回る状態が続いています。
その他の指標も、療養者数以外はステージ3の基準を下回っており、広島市はステージ2相当と判断しています。
ただ、減少傾向にはありますが、依然として本県の警戒基準値である新規報告者数「4人」の2倍以上の数になっています。
ここで、広島県がこれまで取り組んできたPCR検査について、振り返っていきます。
次の図は、PCR検査の体系を示したものです。
有症状者に対しては、
特に診療・検査医療機関(身近な診療所)の拡充については、県医師会などのご協力を得て、県民の皆様に「かぜ症状で早期受診」を徹底して呼びかけているところです。
無症状者に対しても
そして今回、広島市の中区・東区・南区・西区内の住民・就業者の方に対して、PCR検査を集中実施します。
参考となりますが、次の図はPCR検査の受検状況(各機関の受検者数、陽性者数、陽性率)を示しています。
診療・検査医療機関では、有症状者の方が受検されるので、陽性率は7.92%と高くなっています。
また、PCRセンターでは、広島市内の流川と観音の陽性率が2.63%で特に高いことがわかります。
続いて、PCR検査の集中実施の目的について説明していきます。
第2次集中対策では、次の4つの戦略に取り組んでいるところです。
また、令和3年1月26日には、中間評価として、
【参考リンク】第2次 新型コロナ感染拡大防止集中対策(1/18~2/7)中間報告
このことから、市中感染は継続しており、再拡大のリスクを抑え込んだとは言えない状況で、
引き続き、市中感染のリンクを遮断して、感染を減少させる必要があると考えています。
さらに、令和3年1月24日時点の
この2つのグラフから、広島市の感染経路不明割合は、4割程度で、医療機関における陽性率は、2%程度になっていることがわかります。
以上のことから、広島市において「市中感染が継続している」と考えています。
広島県では、これまで4つの感染の山がありましたが、今回の4つ目の山における現在の感染情報は、1つ目から3つ目の山のピークと比較してもまだ高い水準にあります。
次に、PCR検査の集中実施を「行う場合」と「行わない場合」の感染拡大の違いについて説明していきます。
検査の集中実施を「行う」場合と「行わない」場合に分け、それぞれ4人の潜在感染者がいるという仮定で話を進めます。
次の図の上半分【検査の集中実施なし】の場合のイメージををご覧ください。
まず、Aさんは発症して感染が判明します。中等症ということで、入院され、入院1名となります。
他の潜在感染者のBさん、Cさん、Dさんは無症状なので、感染していることに気づかず、行動します。
別の人へ接触、そのまた別の人が別の人へ接触、といった具合にどんどん接触者が増えて、感染が拡がっていきます。
発症した場合か、積極的疫学調査を行うまで見つけることはできません。
それまでは感染の経路を経つことができないということです。
次の図の下半分【検査の集中実施あり】の場合のイメージをご覧ください。
同じくAさんからDさんまでが潜在的な感染者ですが、集中検査を実施することで、潜在感染者を全員発見できます。
うちAさんは中等症の症状も出始めたので入院。Bさん、Cさん、Dさんはホテルで療養していただくことで、その後の感染を止めることができます。
上も下も1名ずつ入院しますので、短期的には同じ負荷です。
ところが、中長期的には、新規の入院者が発生しない分、集中検査を行った場合の負荷を軽減できます。
集中検査を行った分、感染者が一度に見つかるので、短期的な負荷は大きくなります。
しかし、中長期的には、新規の療養者が発生しないので、負担は軽減します。
県では、感染が再拡大すれば、医療への負荷も大きくなり、社会経済活動への影響もさらに長期化する恐れがあることから、「感染を低い水準に抑え込むことが非常に重要」と考え、「集中対策」に取り組んできました。
結果として、飲食店を通じての感染は減少傾向にあります。
職場については、テレワークの推進などを、家庭内についても体調の悪い方は医療機関の早期受診をお願いし、医療機関での検査体制も整備してきました。
しかしながら、市中での感染はまだ継続しています。
どこにいるか分からない無症状や軽症の方からの感染については、ターゲットを絞った対策は非常に困難です。
そのために…
PCR検査の集中実施により無症状者・軽症者からの感染拡大をできる限り遮断します。
この検査の集中実施以外で見つかる感染者が少なくとも、本県独自で定めている警戒基準値を下回るところまで抑え込んでいきたい。
これにより、再び、積極的疫学調査により、感染拡大が抑え込めるようになると考えています。
専門家の意見をご紹介していきます。
まず、日本医師会の有識者会議の提言として、社会経済活動と感染制御の両立のためには、市中における無症状陽性者の早期発見が重要であり、有病率に拠らず容易に検査を受けられる公的な体制を確立することが提案されています。
日本医師会の有識者会議での発言として、感染拡大を抑制するために、無症状者を含め感染者をできるだけ多く見出し、感染予防に努めるべきであり、そのためには、大規模PCR検査体制の整備が必須である。
市中感染が蔓延して有病率が高くなっている地域に対しては、地域住民を対象とした大規模PCR検査を積極的に実施すべきである。
という意見がありました。
日本医師会の有識者会議では、普遍的検査は、流行抑止に対して有効な方法であるという寄稿もあったところです。
本県の新型コロナ対策専門員会議においては、1月13日の会議において、広く市民を対象としたPCR検査の実施にあたっては、検査の有用性のみならず、結果の解釈などもセットで丁寧に情報提供を行うとともに、陽性者に対するその後の疫学調査や療養施設・医療体制の確保についても併せて実施することが必要である。というご意見をいただいたところです。
本庶(ほんじょ)先生や山中先生などノーベル賞受賞学者による声明においても、PCR検査能力の大幅な拡充と無症状感染者の隔離の強化について国に要望しておられます。
先週開催された経済財政諮問会議においては、サントリーの新浪氏が、無症状者への検査拡大と、隔離施設の大幅確保による隔離の徹底に舵を切るべき。
広島県で無症状感染者を含めた大規模検査が行われる予定であり、大変望ましい方向ではないかと思う。
という発言があったところです。
ここからは、これまで頂いたご意見やご質問などにお応えします。
一番の目的は、無症状者・軽症者の方を見つけて、感染の経路を断ち切ることです。
職場や家庭内など、市中感染の割合は依然として高い水準です。
これまで、職場でのテレワークの推進や、家庭内での感染対策などをお願していますが、無症状者や軽症者の方は自覚のないまま行動されるので対策を行うのが非常に困難です。
感染の再拡大防止と、社会経済活動への制約の長期化を回避して、影響を最小化するため、「早く、強く、短く」という考え方のもと、広島市の特に感染者が多い地域において、PCR検査を集中的に実施し、感染の経路を可能な限り断つことで、確実に感染拡大を抑え込みたいと考えています。
市中感染は収まっていない状況です。
広島市の直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数は、依然として警戒基準値の「4人」を大きく上回っています。
また、人口10万人当たりの全療養者数(入院者+宿泊・自宅療養者数)も、警戒基準値の「6人」を上回っています。
なお、感染が収束すると見込める状況になれば、別途判断する必要があると考えています。
感染状況が改善しない場合、医療、生産、消費において大きな影響が発生します。
例えば、重症、中等症など症状のある方については、治療のための医療費が発生し、無症状者についても、宿泊療養の費用が発生します。
言うまでもなく、皆様の命と健康を守るために必要な費用ですが、感染者数を減少させることは、医療現場の負担を減らし、医療費等を低減させることができます。
また、入院治療や宿泊療養をしている間は、その方の生産活動がストップし、間接的には、様々な生産活動や消費活動に、ひいては、県民総生産等に影響を及ぼすことが考えられます。
こうした社会的な損失・影響を最小限にとどめるため、医療提供体制に余裕があるタイミングで、PCR検査を集中的に実施し、無症状者から感染に繋がる、感染拡大の芽を摘みとることは意義があると考えています。
多くの方に検査を受けていただくことで効果が大きくなりますので、対象者の方は積極的を検査を受けていただけますようお願いします。
こちらは、PCR検査集中実施の効果を試算したものです。
対象者の4割が受検した場合、陽性者が、約2,300人から約3,900人判明します。
その陽性者1人がそれぞれ1人に感染させるとして、この連鎖を遮断することで、患者の発生を未然に防ぐことができます。
つまり、死亡が30人から50人、重症患者が50人から80人、中等症が110人から190人抑制できる計算になります。
これに伴って医療費も、約11億円から約19億円抑制できます。
これらの患者数に県民所得を乗じると、2億円~4億円が失われることになります。
さらに、感染状況が改善されないと、消費活動が停滞することによって、県全体で県民総消費額が、約59億円から92億円減少します。
まず、初めに申し上げたいのは、検査したから感染者が増えるというわけではありません。
すでに感染している方が見つかるということです。
PCR検査の集中実施により、確かに、一時的には陽性者が多く顕在化しますが、早めに拡大の芽を摘み取ることで、中長期的にはトータルの感染者数を減らすことができます。
また、この集中実施の対象者は、基本的に「無症状」の方です。原則、ホテルなどで療養していただくので、医療体制への負荷は限定的と考えています。
「医療崩壊」を防ぐためにも、集中的に実施する必要があります。
感染者が再拡大すれば、飲食のみならず、関連産業や医療体制への影響がさらに長期化しかねません。
社会経済活動を1日も早く回復させるため、「早く、強く、短く」という考え方のもと、 広島市の特に感染者が多い地域において、PCR検査を集中的に実施し、感染の経路を可能な限り断つことで、確実に感染拡大を抑え込みたいと考えています。
お気持ちはよくわかります。
しかし、検査の有無に関わらず既に感染されていることに変わりありません。
陽性であると分かれば、慎重に行動できます。
これは、この集中検査に限らないことです。
あなたご自身のみならず、家族や職場の同僚を守るためにも、積極的に検査を受けてくださいますようお願いします。
現在、日本で行われているPCR検査の精度では、偽陽性が起こる可能性が極めて低いとされています。
偽陰性は10%~30%起こる可能性がありますが、仮に、28万人が受検した場合、1.2%(陽性率)に当たる約3,900人の陽性者がいると見込まれ、それ以外に約430人は偽陰性となる可能性があります。
しかし、偽陰性が出るデメリットより、無症状・軽症の感染者を見つけることに大きな意味があると考えています
陰性の結果が出ても決して気を緩めることなく、引き続き、家庭内での感染予防対策の徹底や感染拡大地域との往来を慎重に判断するなどの感染予防の徹底をお願いします。
検査を受けたその日は陰性でも、次の日には感染することもあるので、検査を受ける意味がないのでは、ということについて、仮に陰性と結果が出る方が次の日に感染したとしても、今回の集中検査は、検査時点での陽性の方を見つけ、そこからの感染経路を止めることに大きな効果はあると考えています。
なお、陰性が判明した方については、決して油断することなく、引き続き、家庭内での感染予防対策の徹底や感染拡大地域との往来について慎重に判断していただくなど、感染しない・させない行動をお願いします。
完全に陽性者をなくそうとすれば、対象者全員に対して短期間で複数回の検査を実施する方法もあります。
受検を強制することができない中では、県民の皆さんのご協力が得られる範囲で、集中的に検査を実施するとともに、積極的疫学調査やPCRセンターなど、従来の対策と組み合わせて最大限の効果を出していく必要があると考えています。
今回の集中検査では、1日最大8,000件の検査に対応できる体制を整備する予定です。
県内の検査機関のほか、県外の検査機関と契約し、複数の検体を混合して同時に検査する「検体プール検査法」の活用により、検査能力の拡大とコスト削減を図りたいと考えています。
また、なるべく早く検査結果をお知らせできるよう、検体の搬送体制等についても整備します。
人の移動で引き起こる市中感染の対策として、感染の囲い込みとして、積極的疫学調査の徹底や、早期発見のため、身近なクリニックでの検査、PCRセンターでの検査などでしっかりと対応します。
仮に、感染の兆しが見えるようなことがあれば、これまでの経験をもとに適切で効果的な対策の手を打ち、早期に抑え込みます。
PCR検査集中実施の基本計画案について、お示しします。
対象者は、広島市中区・東区・南区・西区内の住民及び就業者で、原則として無症状者及び軽症者としています。
かぜ症状等のある方は、医療機関を受診していただきたいと思います。
実施期間は、2月中旬から数週間、検査方法は、唾液によるPCR検査で、試験管のようなプラスティックの容器にご本人が唾液を入れてもらうことになります。
図:検査キットのイメージ
検査場所については、各区内に数か所、公的施設などを確保する予定です。
検査料は無料で、事前予約を原則としています。
また、広島市薬剤師会のご協力を得て、容器の配布などをお願いすることを調整しているところです。
その他、詳しい内容は、近日中に発表したいと思います。
居住者、就業者ごとの検査フローです。
下の図のように、居住者の方には、事前予約の上、検査会場へ行っていただきます。
なお、中区、南区、西区、東区の順番に1週間程度ずつ巡回実施していく方向で最終的な調整を行っています。
就業者については、事務局から個社ごとに連絡させていただき、キットの送付と回収について調整をさせていただきます。
検査手法は、原則として、検体プール検査法で行います。
検体プール検査法は複数人(5人程度)の検体を混合し同時に検査を実施するもので、陽性の場合、元の検体全てについて、個別検査を実施し陽性・陰性を判定する手法です。
効率的な検査が可能であり、国からも無症状者に幅広く検査を実施する場合の検査法として認められています。
また、対象者の皆様への告知につきましては、ポスティングを中心に行います。
実施日時、場所、予約方法、検査結果の連絡方法などの詳細については、実施計画が決まってから、改めて、発表いたします。
最後に県民の皆さんへのメッセージをお伝えします。
広島市の市中感染は収まっておらず、無症状・軽症の方が、自覚のないまま家族や職場の方へ感染を拡げてしまうこともあります。
PCR検査集中実施は、無症状・軽症の陽性者の方を見つけ、感染の経路を遮断できる手段です。
県民の皆様にご理解をいただきたいのは、この集中検査の目的は、「積極的疫学調査により感染拡大を防止できる水準」まで感染レベルを抑え込むということです。
感染が拡大すると、入院者の数が増えて医療体制をひっ迫させます。
感染の拡大と制限の緩和をずっと繰り返すようでは、いつまでも経済の正常な回復は見込めません。
PCR検査集中実施により、「積極的疫学調査により感染拡大を防止できる水準」にまで感染レベルを抑え込むことができれば、医療体制をひっ迫させることなく、経済的な損失を最小限に抑え、早期に社会経済を回復させることができるものと考えています。
皆様どうかご理解くださいますようお願いいたします。
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