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PAの理論と手法について

 PAプログラムは,冒険教育(冒険の要素を取り入れ,特定の教育目的をもって体験学習として組織的に行う活動 ※1)の一つであり,主に大自然の中で行われる冒険教育(ロッククライミングや沢登りなど)を,「もっと身近に行える活動で,その効果をより身近なもの」にするため,アメリカの教育学者や心理学者などによって開発(1971年)されたプログラムです。(※1出典:冒険教育の理論と実践(杏林書院))

 PAでは,体験的な活動を通して参加者(個人や集団)が主体的に「学び」を獲得できるよう,次の3つの考え方(理論)をもとに,プログラムを行います。

<理論1> フルバリューコントラクト(Full Value Contract)の考え方 ~ 学び合える環境づくりのための約束 ~

 PAプログラムでは,グループ活動を行う一人ひとりが,楽しみながら学習するために, 「一生懸命」,「安全」,「フェア」の3つを大切にしながら活動することをプログラムのスタート前に約束します。

 フルバリューコントラクト

 この3つの約束は,『フルバリューコントラクト』と言います。

 「一人ひとりは,大切でかけがえのない存在であり,自他の価値を最大限に尊重するための約束事」という意味です。

 人と人との関係性の中で,学び合える環境を参加者自らがつくるための考え方であり,参加者自らがプログラムによって獲得した「気づき」などの『学び』をもとに,自分たちの言葉で,自分たちのルール(規範)や約束事を決めることにつなげていきます。

<理論2> チャレンジ・バイ・チョイス(Challenge by Choice)の考え方 ~ 自己決定による挑戦 ~

 人の内面は,安心できる「コンフォートゾーン」,適度な負荷がかかる「ストレッチゾーン」,自己制御不能になる「パニックゾーン」という3つの領域に分かれます。

 人が成長する領域は,適度な負荷のかかる 「ストレッチゾーン」です。

個人が持つ3つの領域は,個人によって差があります。他者には分かりにくく,指導者など,第3者の指示や命令によって,ストレッチゾーンへ適切に導くことは難しく,誤ってパニックゾーンへ個人を追いやる可能性があります(図1参照)。

Cゾーン

図1 3つの領域のイメージ図

 

 PAでは,参加者(個人や集団)がコンフォートゾーンからストレッチゾーンへ一歩踏み出す場合に,「自己選択」と「自己決定」によって実行されることが「チャレンジ(挑戦)」であり,他者から強制されるものは「チャレンジ」ではないと捉えています。

 この考え方は,『チャレンジ・バイ・チョイス』と言います。

 「参加者自らが課題に対して挑戦する度合いや方法を自らが選択する」という意味です。この考え方をもとに,参加者(個人や集団)の自己選択と自己決定による課題への挑戦を促しならプログラムを進行します。

<手法> 体験学習サイクル(体験学習法) ~ 体験から学ぶための手法 ~

 「フルバリューコントラクト」「チャレンジ・バイ・チョイス」の考え方をもとに,参加者が主体的に「学びの環境」を醸成しながら,参加者(個人や集団)が効果的に体験から「学び」を獲得していくための手法として体験学習サイクル(体験学習法)があります。

 体験学習サイクルは,体験から学びとるための過程を次の4つの段階に分けています。

区 分

内 容

体 験

「まずやってみる」の段階

「体験してみる」,「人や物事と関わってみる」,「実際にやってみる」という段階

振り返り

「何が起こったか」の段階

体験の中で「何をしたか」,「何が起こったか」などの事実を思い返す段階

一 般 化

「どう考え,どう感じたか」の段階

体験の事実から「どう考え」,「どう感じた」と意味づけを行う段階

 ⇒ 「気づき」や「感じたこと」などを言葉や文字に言語化し,集団の中で『学び』として共有する。

適 用

「次にどうする」の段階

学習者が,気づきなどの学びを,次の活動にどのように生かすかを考える段階

 図2のように,「体験」から「適用」までの循環を繰り返しながら,参加者が体験から得る「気づき」などを『学び』として深化させる手法です。

体験学習サイクル

 また,「チャレンジ・バイ・チョイス」の考え方を踏まえ,課題に取り組む参加者自らが「目標設定」を行うことが,体験学習サイクルを循環させるための大切なポイントになります。参加者が学習する主体者となることで,「振り返り」の内容が「日常生活」につながる具体的な内容になります。