小室淑恵氏が登壇!「イクボス推進セミナー@福山」を開催しました![令和2年1月24日]
広島県では「イクボス同盟ひろしま」の活動の一環として「イクボス推進セミナー@福山」を開催しました。
今年度の「イクボス推進セミナー」2回目は,令和2年1月24日に福山市にて,株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏をお招きし,働き方改革についての講演と,第1回目と同様に働き方改革を進めるイクボス同盟メンバー及び小室氏,湯崎知事によるパネルディスカッションを実施しました。
≫第1回目のイクボス推進セミナーの様子
「イクボス推進セミナー@広島」
≫過去のイクボス推進トークの様子
(平成30年度までは,「イクボス推進トーク」として,「イクボス同盟ひろしま」のメンバーが代表を務める企業や地域を湯崎知事自ら訪問し,経営者や管理職の方々とディスカッションを実施)
イベントレポート
基調講演
「~業績もモチベーションも上がる!~経営戦略としての働き方改革」
<講師:小室淑恵氏(以下「小室氏」)>
ワークライフバランスではなく、ワークファミリーバランスをやるとうまくいかない。ワークファミリーバランスとは、育児など家庭的事情のある人にだけ配慮する施策です。これは中間管理職にとって会社の仕組みは何も変わっていないのに一部の人には残業をつけてはいけないと言われるということだ。だからいつも独身に残業をお願いするのでは、不公平感によって家庭のある人とない人との対立構造が深まっていく。いざというときには一枚岩になれないので業績にはマイナスに働くという傾向がある。大切なのはすべての人に「ライフ」はあるということだ。ワークライフバランスといえば育児や介護がわりやすいが、それ以外にもライフがたくさんある。たとえば子供が障害をもっているケース、自身が病気のケース。それを会社に言っていないことも多い。育児や介護だけ優遇されると「私だって不妊治療をしているのに」となり、女性の敵は女性となる。全従業員を対象とし、会社全体の働き方改革をしなければならない。
次に人口ボーナスと人口オーナスという考え方を紹介したい。人口ボーナスは若い人が多いという人口構造。安い労働力を武器に世界中の仕事を受注。高齢者が少ないから社会保障費がかさまず、財政が余る。それをインフラ投資に回せば爆発的な経済発展となる。1950年代の日本はこれだ。90年代から高齢者が増えて負担が若い人にのしかかりはじめる。経済的に豊かになると子供に教育投資をするので高学歴となる。高学歴化すると結婚年齢も後倒しとなり出産数は少なくなって少子化になる。人件費も高くなる。競争力を失い、世界から仕事が集まらなくなるので経済成長が鈍化する。こうして人口ボーナスは終わる。少子化のはじまりかけぐらいのころは、若い人から年金資金がたくさん入ってくるがまだ高齢者は少ないので、財政は余り、それを医療と年金等を増やして高齢者に手厚くする。手厚くなった医療により高齢者の寿命が延びて当初の見込みより一人当たりの負担額が大きくのしかかることになる。一方、人口オーナスとは支える側より支えられる側の方が多いという人口構造だ。労働力人口が減少し、社会保障体制を支えることが困難となる。人口オーナスが日本の問題点だと考えがちだが、ヨーロッパよりも後に日本がオーナス期入ったのになぜ日本の方が深刻になったのか。その理由は日本が少子化対策に極端に失敗してしまったことだ。90年代後半から手を打つ必要があったのに、いまだに待機児童が2万5千人いる。対策を打って成果が出るのに90年かかる。しかし、オーナス期に経済成長できないかといえばそんなことはない。
徹底して2つのことができるかどうかだ。ひとつは、生産年齢(15~65)をいかに最大限労働力に入れられるかどうか。そういう意味でいえばまだ労働参画できていない人がものすごくいる伸びしろのある国といえる。「女性」という、これほど教育された人をこれほど使っていない国はない。未曽有の潜在労働力である女性が活躍できるようにするのがオーナス期社会のとるべき戦略だ。
もうひとつが真に有効な少子化対策。特にワーキングペアレンツを重点にということが重要だ。女性活躍ということは、夫婦共働きを推進するということだが、夫婦で働きながらでは子供を産めないような社会環境では、未来の労働力を先食いしたということになる。二人で働ける社会環境を作りながら未来の労働力も確保しなければならない。
最初の子供が生まれたときに夫の帰宅時間が遅く家事育児を負担していなかった家庭ほど二人目三人目が生まれていないというのが、厚生労働省が11年追跡したデータだ。産後直後は妻が産後育児うつになりやすい。夫が育児休暇を取り妻の夜中の授乳を代わって7時間寝かせてあげ、朝日を浴びる散歩に出してあげる。妻の家事や育児を軽減することがとても大切だ。これまで女性活躍や少子化対策というと子供や女性に何にかをするという対策が多かったが、男性を含めて社会全体の働き方改革が最大のポイントだ。
オーナス期での成功の秘訣はボーナス期に成功体験をもった経営者や幹部がそれを捨てること。オーナス期の戦略に転換できた企業だけが勝てる。ボーナス期では男性ばかりで長時間働ける同じ条件の人を揃えたら勝てた。これに対してオーナス期では男女をフル活用しなるべく短い労働時間で質の高い仕事して、多様な人材を活用できた企業が勝つ。今後、企業は外国人を含めていろいろな働き方の人を内包しながらやっていく。そうなってくると仕事の属人化の排除をしていかなければならない。仕事をみんなで渡しあうことが必要。クラウド等IT化して家からでもどこからでも仕事ができるようにして、仕事のパスをみんなで回せるようにする。パス回しの美しさでトライを決める。こういうやり方に仕事を変えていく。
パネルディスカッション
<湯崎知事>
ひろしま未来チャレンジビジョンを10年前に策定した。このなかに「仕事も暮らしも欲張りなライフスタイル」というのがある。これまでは仕事に打ち込むため暮らしは犠牲にした。逆に暮らしのために仕事をあきらめた。これから広島県がめざすものが仕事と暮らし両方をあきらめない社会だ。仕事から得られる幸せ、暮らしから得られる幸せ、どちらもあると思う。そのバランスは人それぞれだが、その選択ができることが大事だ。
ただ単に働く時間を短くするだけ、それではいけないのでは。すべての人が生きがい、達成感を感じることができ、健康的であること。それが実は好循環を生んでいくのでは。
そのためには誰もが生き生き働ける職場環境をつくっていくことが必要だろうと思う。そのキーポイントがイクボスだ。
<株式会社オガワエコノス 小川常務取締役(以下「小川常務」)>
2016年度、広島県と共同で健康経営ということに着手した。人が健康でないと会社もよくならない。2017年度に両立支援規定を設定した。家庭や地域で何かあっても会社がサポートしますよという宣言だ。働きやすさ改革と社内でいっているが「CAR」という3つのアルファベットで表している。Cはコンプライアンス、Aはアライアンス、Rはリライアンスだ。社員が休みたいときそれを言いやすいような雰囲気づくりをめざしている。女性だけの部署を新設したりして雰囲気も明るくなっている。手段を目的化しないことも気をつけた。成果としては残業時間も有給休暇取得も進んできている。また、増収増益も達成した。
<美建工業株式会社 金平取締役部長(以下「金平部長」)>
「夕ご飯を家族と一緒に食べて欲しい」という言葉を常々社長が言っている。お父さんは子供が寝ているうちに会社に行き、寝てから帰ってくる。子供が家にいる土日はゴルフに行く。ほとんどお母さんが子育てをしているという時代があった。今はそうではない。お父さんも家族の一員として子育てをする時代だ。子供がいない人も一緒だ。仕事が終わったあとも充実していることが大切だという考え方で働き方改革をやっている。
まず、従業員アンケートの実施。そして定期的なジョブローテーションを実施した。女性社員の出産や育児等ライフイベントでの退職がなくなった。
<小川常務>
本当は成果イコールお金であって欲しいが、時間イコールお金という意識、つまり長く仕事をすればたくさん稼げるという意識がまだ抜けない。
それを打開するために2014年頃から人事考課制度を取りくんだ。これまでの年功序列を変えていくことに注力した。それをやったから、従業員の働き方改革やイクボスへの理解があるのではないか。
<小室氏>
削減した残業時間で浮いた手当を社員に還元して成功したという事例がある。基準を設けてそれをクリアしたチームに一人6万円を戻すというものだった。チームで協力し、時間当たり生産性を上げたチームが高評価され、実入りも良くなるというメッセージがしっかり社員に伝わった。
<湯崎知事>
県庁では目標管理制度を導入しているが、よく話し合いをすることが大切だ。どういう風に評価するのか、どんなことが必要かなど、しっかり目標として共通認識をつくる。それが時間だけではない評価につながってくる。
<金平部長>
働き方改革として会社を変えていこうと通達してもなかなか社員一人一人の末端まで伝わらないのが悩みだ。
<小室氏>
「朝夜メール」というのがある。朝と夜に一日の仕事を組み立ててメールしてチームのコミュニケーションを図るツールだ。予定や報告だけでなく、家族や体調のこととか、困っていること等書き込む。働き方改革をすると働く時間や場所がバラバラになるが、この朝夜メールではバーチャル雑談ができることで、チームの関係性がむしろ向上する。
<小川常務>
働き方改革をしてよかったことは、社員が自分の役割を自覚できたことだ。働き方が多様化するなかで自分らしさを実感してもらっているのではないか。会社が社会に必要とされているか私も経営者として自問自答しているが、社員もその気持ちを共有して見つめてくれる。働き方改革はそういう側面もある。
<金平部長>
社労士に就業規則や今回の法改正について社員に直接説明してもらった。分からないことを聞けたのは良かったという声やベテラン社員からは「うちの会社も変わってきているんだ」という声もあり、会社も変わってきているけど社員も変わってきていると実感した。やらなければならないことは山積しているが、何かひとつを決めてひとつずつやっていく。その次のことはそのときまた考えるという考え方でいいのではと思った。
<小川常務>
会社が大きくなったことや働き方改革を進めていくと会社がドライになっていく。プライベートな話はだんだん少なくなってきている。温かみのある組織はどうつくるのか。
<小室氏>
介護施設のコンサルをしたときに印象的だったのが、「ありがとう付箋」という施策だ。勤務がシフト化したり、仕事が専門化してお互い仕事の内容が分かりにくくなると自分の仕事が誰からどう評価されているか実感しにくい。チームメンバーはいるけど孤独を感じたりする。特にシフトで仕事をしていると次に仕事を引き継ぐ人の顔も見えない。そこでハート型の付箋を大量に買って、前のシフトの人がやってくれたこと、他の持ち場の人がやってくれたことで自分が助かったことを具体的に書いて休憩室の壁に貼って帰るということにした。自分のことが書いてあるとすごく嬉しい。
従来のリーダーはティーチング型、指示や命令を的確に出すというものだった。これはリーダーと似たようなタイプの部下がいる場合は有効だった。部下が多様となると意図が伝わらない。今はコーチング型がよい。指示命令ではなく、「あなたはどう思うの」と聞いて本人の中ある答えを引き出していく手法だ。忍耐がいるがこれを続けると自分たちで考えて答えを出せる組織になる。
<湯崎知事>
確かにドライになっているのは社会全体の傾向だ。広島県では子供参観日というのをつくっている。職員の子供を県庁に連れてくる。そうするとその人のライフが見える。
今、県庁は耐震化工事をしているがそれと同時に内装も変える。たとえばみんながよく使うコピー機を部屋の真ん中に持ってくる。そこにコーヒーマシンを置くとかして、コミュニケーションを促す工夫をする予定だ。オフィスレイアウトからのアプローチという方法もある。
<小川常務>
人は好きなことには努力を惜しまない。そこがポイントだと思うので、社員がもっと好きになってもらえる会社を目指したい!
<金平部長>
平均年齢が46歳で高めなので、これから介護をする年代が多くなってくる。今年は介護休暇を取りやすいように変えていきたい!
<湯崎知事>
この会社で働きたいと思ってもらえないとなかなか生産性も上がらない。その鍵を握るのはリーダーやボスだ。だから、皆さん、ぜひイクボスになって欲しい!
イベント概要
名称 |
イクボス推進セミナー |
日時 |
令和2年1月24日(金) 14時00分~16時00分(13時30分開場) |
会場 |
福山市ものづくり交流館 スカイホールスタジオA |
対象 |
県内企業の方(経営者,管理職,人事労務担当者等) |
参加費 |
無料 |
内容 |
プログラム |
主催 |
広島県(働き方改革推進・働く女性応援課) |
共催 |
福山市 |
登壇者紹介
講演者兼パネラー
小室 淑恵 氏
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げるコンサルティング手法に定評があり、残業削減した企業では業績と出生率が向上している。安倍内閣 産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会、文部科学省 中央教育審議会など複数の公務を歴任。著書に『プレイングマネージャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)等多数。2児の母。
イクボス同盟ひろしまメンバー(パネラー)
小川 貴広 常務取締役(株式会社オガワエコノス)
金平 京子 取締役管理部長(美建工業株式会社)
司会者
平尾 順平(ひらお じゅんぺい)氏 (NPO 法人ひろしまジン大学代表理事)
1976 年広島県生まれ。広島市立大学国際学部卒業。財団法人日本国際協力センターに入団。JICA(国際協力機構)への出向も含め、各種人材育成、教育案件を担当。平和祈念資料館を管理する広島平和文化センターに2年間勤務。2010 年5 月にひろしまジン大学を立ち上げ。
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