広島県の挑戦の「最前線」を紹介します!
何度も試行錯誤できる場,「ひろしまサンドボックス(砂場)」。
今回,このプロジェクトに携わる商工労働局イノベーション推進チームの皆さんに話を聴きました。
―ひろしまサンドボックスとはどんな事業ですか。
金田:あらゆるモノがインターネットにつながり,リアルな世界がデータで見える化され,AIが分析・制御する。そんなデジタル社会の到来にどう対応していけば良いのか,県内企業の経営者からは不安な声が聞かれました。県内企業の声を聞くと,「IoTやAIにどこからどうやって取り組めば良いか分からない。」「ROI(費用対効果)が分からない。」「個社では,リソース(資金,人材)がない。」という経営者が多勢でした。
そこから生じるリスクは行政こそが背負い,企業や大学,自治体など,課題解決のために県内外から集まった様々なプレーヤーが共創で試行錯誤できる実証実験の「場」をつくろう,そうして,平成30年5月,「ひろしまサンドボックス」が誕生しました。
―キックオフイベントを東京で実施した理由は。
尾上:広島県は,製造品出荷額が中国・四国・九州で第1位と,自動車をはじめとした製造業の基盤が強みですが,デジタル分野の技術・知見は決して十分ではありません。第4次産業革命に対応していくためには,製造業(ハードウェア)とIT(ソフトウェア)を融合させた,新しいサービスや製品を創出することが必要でした。
このため,首都圏を中心に集積しているIT系の企業に参加を呼びかけようと,東京渋谷で記者発表を実施しました。
―コンセプトはありますか。
金田:「失敗してもいい。」ですね。従来の補助金と異なる点です。何度でもチャレンジできる環境を創ることで,県内外から多くの企業や人材が絶え間なく広島に集まってくる好循環をつくることが目的です。
―反響はどうでしたか。
北岡:期待以上でした。昨年度の1年目は,2回公募を実施したところ,89件ものアイディアを提案していただきました。また,テーマを自由にしたので,ものづくりだけでなく,農林水産業,医療・福祉,観光,交通など,幅広い分野から提案がありました。
メディアからは,行政らしからぬコンセプトに強い関心をいただき,ひっきりなしに取り上げていただきました。これが更なる参加者を呼び込む仕掛けとなり,協議会には,現在900者を超える会員登録をいただいています。
―2年目はどのような展開をしているのですか。
北岡:公募終了後,協議会会員の声を聞くと,おカネだけじゃない「マッチング支援」や「技術支援」が期待されていて,会員の6割が引き続き課題解決にチャレンジしたいモチベーションを持っていることがわかりました。
一人でも多くの会員が,実証や事業化に向けた取組をスタートできるよう,パートナー企業と一緒に,様々なサポートメニューのラインナップを増やしているところです。
公共インフラの維持管理など,行政課題を解決するソリューションを募集する行政提案型のサンドボックスも第二弾として始めましたし,令和2年度からは,AI人材開発にも本格的に取り組んでいきます。
―どのような点にやりがいを感じますか。
尾上:様々な課題を抱えた地元企業や,素晴らしい技術を持っているスタートアップ企業の方々と出会い,お話をさせていただく機会が多いです。その方々を引き合わせ,新たなソリューションの創出に向かっていただく”最初の一歩”のお手伝いができた時に,大きなやりがいを感じます。
ここで生まれたソリューションが,社会をよりよく変えていくことを期待して取り組んでいます。
―特に難しかったことはなんですか。
岩男:最先端技術を持つ企業の方々とお話する機会が多く,勉強の日々です。新しい技術・発想の社会実装をサポートできるやりがいのある仕事です。
―職場の雰囲気はどうですか。
岩男:明るく活発な意見交換のできる職場です。様々な得意分野を持つ先輩たちがいるため,適切な指導をしてくれます。
北岡:イノベーション推進チームがある執務室では,他部署とのコミュニケーションパフォーマンスを高め,コラボレーションを促進させるため,自席を固定しないフリーアドレスを取り入れています。
これにより,新しい発想が「頭の中」だけではなく,「会話の中」からも生まれる環境を作っていますので,会話の絶えない賑やかな職場になっています。
尾上:職場はいつも,とってもフレンドリーな雰囲気に包まれています。優しい先輩たちが親身になって指導してくれます。未経験者大歓迎!
金田:今後,人口減少と少子高齢化が避けられない中,持続可能な産業や社会を実現するためには,AIなどの最先端のデジタル技術を活用した省エネ型の企業経営やスマートライフを追求していくことが必要です。
ただ,デジタル技術ありきではなく,あくまで,課題起点で物事をとらえ,解決に向けたプロセスが重要になってくると思います。ひろしまサンドボックスには,共通の課題意識を持った人たちが業種業態の垣根を越えて,絶え間なくワイワイ集まってきていただきたいですね。