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県内干潟の特性と水質浄化能について

印刷用ページを表示する掲載日2024年7月31日

県内干潟の特性と水質浄化能について

緒言

 干潟は生物生態系にとって重要であるだけでなく,人間にとっても身近な自然環境であり,アメニティー,水産資源育成,水質浄化機能等を有する場として重要である。しかし,戦後の経済成長に伴う沿岸開発によってかなりの面積が消失し,我が国全体で戦前82,600haあったものが,1992年には51,400haにまで減少してきている。瀬戸内海においてもほぼ同程度の割合で減少している [1] 2000年12月には,瀬戸内海環境保全審議会が環境保全基本計画の改正を行い,藻場および干潟の保全と回復の必要性を答申している。また,1997年には環境影響評価法が制定され,沿岸域で開発を行う際には環境に対する事前の影響評価が義務付けられ,1999年6月から実施されている。
 このような背景を考慮する時,干潟等の現況を把握しておくことは,今後の環境対策や将来における基礎資料として重要であると考えられるが,これまで県内における干潟調査データは非常に少ないのが現状である。そこで,県内干潟の現況を把握するため,それらの実態調査を行った。また,干潟には水質汚濁に対して高い浄化能があることが指摘されており,干潟の有する浄化能についても併せて検討を行った。

調査方法

  県内海域を西部,中部,東部の3海域に区分し,3年間かけて5ha以上の面積を有する干潟(砂浜も含む)を対象として,種類,規模,底質特性(粒度分布,IL, TOC, T-N, T-P),およびベントス現存量等の実態把握調査を行うと同時に干潟の浄化能について測定を行った。調査は,1998年度に西部海域,1999年度に中部海域,2000年度に東部海域を対象にして行った。調査時期は西部が9月~2月であるが,中部,東部はそれぞれ8月,9月に集中して調査した。
 調査方法は,大潮の干潮時に干出した潮間帯へ行き,堆積物の表層(約5cm層)を採取し冷蔵保存して実験室に持ち帰り,底質の性状を調べるため,底質特性項目を測定した。測定方法は表1の通りである。ただし,粒度分布はJISのふるい分析では最小のふるい目が0.075mmとなっているが,今回はこれにかわって0.063mm目(250メッシュ)のふるいを用いて測定した。
 一方,ベントスについては,25×25 cm,深さ25cmのコドラートを底泥に挿入し,枠内の泥を1mm目の篩いにかけ,篩上に残った底泥とマクロベントスを中性ホルマリンで固定して持ち帰り種の同定と現存量の測定を行った。同定はコドラート1または2回分の採泥で行った。なお,ベントスの調査は基本的には面積が10 ha以上の比較的規模の大きな干潟を対象にして行ったが,西部海域では全干潟で現存量の測定を行った。
 また,干潟の浄化量を推定するために底泥による酸素消費速度 (SOD)と底泥表層のChl.aを測定した。SODはインキュベーション温度をすべて20℃に設定し,オーシャノグラフィー製E/BODレシピロメーターを用いて測定を行った。測定方法の詳細については別報の通りである。[4]
 なお,干潟面積は1988~1992年にかけて環境庁が実施した第4回自然環境保全基礎調査の結果[5]から求めた。ただし,一部の干潟について,隣接しているものは1つの干潟と見なして修正を行った。

結果および考察

1.県内干潟の概況および底質特性

  今回調査を行った県内海域における5 ha以上の面積を有する干潟の分布を図1に示す。また,干潟の規模やタイプ,底泥の性状に関する調査結果を表2に示す。
 5 ha以上の干潟は西部海域では19カ所で,総面積は169 ha,中部では12カ所,総面積131 ha,東部で22カ所,総面積450 haで,県内の総計は750 haであった。表2に示した括弧内の値は,環境庁が行った1 ha以上の干潟面積の調査結果[5]で県内全域に現存している干潟の総面積は1,024 haである。この値を現存する干潟の全面積とみなして5 ha以上の規模の干潟面積の割合を求めると,西部,中部,東部でそれぞれ78.6,69.3,72.6 %であった。
 県内の干潟は大部分が10 ha以下の小規模なものである。海域別に干潟分布の特徴を述べると,西部海域では本土域にはあまり存在せず,厳島の本土側に集中し,また人工干潟の割合が比較的多い。中部海域には規模の大きな河川も少なく,本土域にまばらに存在する程度で数が少ない。一方,東部海域は西部,中部に比べ規模,数とも勝っており,総面積で西部海域の2.7倍,中部海域の3.4倍に相当する干潟が存在していた。特に松永湾の奥部に位置する河口干潟 ( No.13)は面積が204 haあり,県内で最大であり,芦田川河口のNo.1も87 haと大規模である。また,東部海域では干潟の潮下帯にかなりの規模のアマモ群落の存在が多数確認された。アマモ場は西部海域ではあまり認められなかったが,中部海域のNo.5の潮下帯では県内最大規模のアマモ場が確認された。
 今回,干潟潮間帯における底質の種類を感覚的に,礫+砂,砂,砂+シルト,シルトの4区分に分類し表2に記載した。礫,砂,シルトは粒径で区分され,それぞれ2 mm以上,2~0.063 mm,0.063 mm以下と定義されるが,粒径の巾を含んでいる上にそれらの混合割合も一定でないため,粒径分布や含泥率で干潟底泥の性状を厳密にこの4区分に分けることは不可能であるが,これらの感覚的区分は干潟の性状をイメージする上で重要であると考えられるため,あえて分類を行った。今回の調査データから大まかな指標として,中央粒径で分類すると,1.5 mm以上が礫+砂タイプ,1.5~0.5 mmが砂または砂+シルトタイプ, 0.5mm以下がシルトタイプにほぼ対応していた。また,シルトタイプのものはほとんどが含泥率10 %以上であった。
 表3には調査干潟の底質タイプの違いによる底泥の物理化学的性状の変化を調べるため,タイプ別の底質統計データを示した。
 表3から,同一の底質に分類されたものでも,すべての測定項目において大きな変動があることが分かる。今回分類した底質の違いによる測定項目の差異を平均値で比較すると,シルト質と砂質とでは含泥率で約20倍,TOCおよびT-Nで5倍,T-Pで2.5倍程度の違いが認められた。
 海域別に底質タイプの比較を行うと,西部海域ではシルトタイプはわずか1カ所しか存在せず,砂または砂+シルトタイプがほとんどで,ほぼ1:1の比率で存在していた。東部海域では,それとは対象的にシルトタイプの干潟の割合が最も多く,砂+シルト,砂の順であった。また,砂+礫タイプは西部海域の人工干潟だけにしか見られなかった。一方,中部海域はシルトタイプか砂タイプであった。これらの底泥性状の違いは,干潟の種類とある程度関連性が伺える。すなわち,前浜干潟では砂か砂+シルトタイプが多く認められたのに対し,シルトタイプは大部分が河口出口に形成される河口干潟であった。これは河川から微細な懸濁性有機物が供給され,河口付近に堆積するためと考えられる。

2.干潟に生息するマクロベントスの分布特性

 2-1.マクロベントス現存量

  今回調査を行った干潟におけるベントス現存量を環形動物,腹足類,二枚貝,甲殻類の4種類に大別して求めた結果を表4に示す。
 ベントス現存量を調査した干潟の総数は28カ所で,内7カ所の干潟(西部:5, 7, 11, 14, 15, 16および東部:10)において1Kg/m2以上の高密度な存在量が確認された。しかし,これらの干潟で現存量が大きいのは,主にアサリに起因していることが分かる。表4の現存量は湿重量で表示したものであるが,二枚貝と腹足類は殻付きの湿重量であるため,これらが多いとベントスの現存量は過大に見積もられることになる。その補正を行うため,二枚貝,腹足類の殻付き湿重量に対するむき身の湿重量の比率を測定した。その結果,両者ともその比率は0.25前後の値であったため,この値を用いて,他の種類と同様,身の湿重量ベースに換算した補正値を求め,表4に示した。しかし,補正後の値でもこれら7干潟の現存量が他の干潟よりかなり大きく,西部のNo.7を除いてすべて500g/m2以上であった。アサリが多い理由として人工放流が考えられるが,現地で聞き取り調査を行ったところ,これら7干潟すべてにおいてアサリの人工放流が行われていることが確認された。
 人工養殖を行っているこれら7カ所の干潟を除いて,マクロベントスの現存量を補正値を用いて考察を行うと,全体では299~0 g/m2の範囲であった。これらを底質の性状の違いで比較してみると,砂タイプは268~50.6の範囲で,平均が118 g/m2,砂+シルトタイプは299~53.5で平均は163 g/m2,シルトタイプは282~5.5の範囲で平均は101 g/m2であった。また,礫+砂タイプのものは現存量が24.2~0 g/m2と特に低い値を示した。この計算において,西部海域のNo.19では複数のデータが存在するため,平均値( 53.5 )を用いて計算を行った。今回の調査結果からベントス現存量を底質性状別に比較すると,砂+シルトタイプの干潟が最も豊富で,次いで砂,シルト,礫+砂の順であった。特に、礫+砂の人工干潟ではベントスはほとんど存在しないことが確認された。また,シルトタイプでは現存量に大きなばらつきが認められた。これは,シルト含量があるレベルまではベントスが豊富に生存するが,そのレベルを越えて有機物が存在し,底質がヘドロ状になると急激に減少することを示唆している。ちなみに,現存量が282 g/m2と高かった西部海域のシルト質の干潟(No.8)では含泥率が4.5 %で,ILもTOCもそれほど高くなかった。これを除く含泥率が10%以上のシルトタイプの干潟では現存量の平均値が55.7 g/m2とかなり低い値を示した。

2-2.マクロベントス種の出現状況

 各干潟で確認されたマクロベントスの種の出現状況を表5に示す。
 各海域のマクロベントス分布の概要を述べると,西部海域のNo.14及び19では,干潟に普通に見られる小型多毛類のコケゴガイとイトゴカイが優先する似通った生物相を示した。ただ,No.14では環境が不安定なためか,ホトトギスガイが夏と冬に突発的に大量出現した。中部海域のNo.1は含泥率が低く,砂質性多毛類のケンサキスピオが優先的に出現したが,富栄養海域に出現する二枚貝のホトトギスガイも多く見られた。No.5の優占種は干潟に普遍的に存在するゴカイ科のコケゴガイであり,富栄養な底質に多いカタマガリギボイソメも比較的多く出現した。No.7は河川水の影響を受けやすいためか,イトミミズ科の1種が優先し,スピオ科やヒトエラゴカイ科の多毛類も多く出現していた。一方,東部海域ではシルト質の干潟が多いため,他の海域と比較してベントスの種,および量とも少ない傾向が見受けられた。No.1では汚染に強いイトゴカイが卓越する群集構造にあり,シルト質に多いアナジャコ,ヤマトオサガニ,チゴガニなども見られた。No.7もシルト質の干潟で生物相は貧弱で,構成種はいずれも小型で短命な多毛類であった。No.10はアサリが他を圧倒する偏った群集構造を示した。No.13もシルト質で生物的に貧弱であった。No.16は砂泥質であり,アサリが多く出現するが,富栄養海域に多いホトトギスガイもこれに次ぐ個体数を示した。No.19は富栄養海域の状況を反映してか,アサリも生息するが,ホトトギスガイが著しく優先する特異な群集構造を示した。また,No.16, 19はともに砂州干潟で環境が類似しており,転石下で生活するヒライソガニが見られた。

 3.干潟の有機物浄化能の評価方法

 干潟が有する環境水質に対する浄化能は有機物の浄化と窒素,リン等の栄養塩の除去とがあるが[6],今回は有機物に対する浄化能について検討を行ったので,その評価方法の概要を述べる。
 干潟における有機物の浄化は,主として微生物により代謝分解されるもの,およびべントスが有機物を取り込んで成長する部分(同化量)と呼吸に利用しエネルギーとして消費される部分(呼吸代謝)とがある。しかし,干潟に供給される有機物は河川や海域から運ばれてくるものだけでなく,もう一方で底泥表層の底生藻類の一次生産によっても合成され,その有機物も他の有機物同様,微生物分解やベントスへの取り込みに利用される。それ故,正味の有機物浄化量を求めるためには,微生物およびベントスの呼吸代謝とベントスの同化量(成長速度)より求まる浄化量から干潟における底生藻類の一次生産量を差し引く必要がある。そこで,有機物に対する干潟の浄化量(Purification Ability for Organicmatter; PAO)は次式から求めることが出来ると考えられる。

 PAO = R+A-Gp  1)

ここで,

 R:バクテリアおよびベントスの呼吸代謝速度
 A:ベントスの成長(生産)速度
 Gp:底生藻類の総生産速度

 である。
 なお,有機物の浄化において,有機物の分解や取り込みだけでは評価出来ない部分,すなわち懸濁性有機物で微生物分解されにくいものやベントスに利用されにくい有機物等の干潟へのトラップ効果による水質浄化も存在するが,一旦トラップされた物の再懸濁等,不確定な要素が含まれていることや,規模の小さい干潟では有機物のトラップ効果も低いと考えられるため,ここではその効果を無視し,式 1)にはその項を含めていない。

4.県内干潟の浄化量の推定

 干潟による有機物の浄化能を求めるためには,式 1)で表されるように,バクテリアとベントスの呼吸代謝速度R(酸素消費速度)とベントスの生産速度A ,底生藻類の生産速度Gp を求める必要がある。
 表6には干潟底泥の酸素消費速度(SOD)とChl. a濃度の測定結果を示す。SODはベントスを含めた呼吸代謝速度の測定結果である。また,Chl. aおよびPhaeo.色素は表層1 cm層の泥を採取して測定した時の濃度である。
 干潟底泥のSODは東部海域が最も高く,平均値が2.53 g-O2/m2/日で,次いで西部海域が1.37 g-O2/m2/日,中部が0.60 g-O2/m2/日の順となり,海域において2~4倍程度の差が認められた。SODが最も大きな値を示したのは東部海域のNo.10で6.4 g-O2/m2/日であった。この干潟はアサリの人工放流が行われており,また人工養殖が行われている他の干潟でも概ね2 g-O2/m2/日以上の高いSOD値が得られた。それに対して,シルトタイプの干潟では有機物を多量に含んでいるにもかかわらず,SODが1 g-O2/m2/日以下のものがかなり認められたことから,SOD値の大きな干潟ではバクテリアよりもベントスの方がSODにより強く関与しているものと推察された。一方,底泥表層のChl.a濃度は水域の富栄養化レベルの違いを反映したためか,西部海域が東部,中部海域に比べて高めの値を示した。
 1で述べたように,海域ごとに底質特性の違いが認められたため,干潟の浄化に関連する項目や浄化量を各海域ごとに区分して求めた結果を表7に示した。
 広島湾の3干潟(No.6,14,19)で酸素消費量と炭酸ガス生成量の比率で表される呼吸商を測定した結果,モル比で1.04が得られ,干潟における有機物分解のほぼすべてが表層における好気的分解であることが確認された。[4]そこで,すべての干潟の代謝分解呼吸商を1.0と仮定して,SODを炭素ベースに換算したものを呼吸代謝速度( R )として表7に示した。また,ベントスの生産速度(A)に関しては,干潟には様々な種類のベントスが生息し,種別にベントスの成長速度を測定することは不可能であるため,仮定を設けてマクロ的に計算を行う必要がある。そこで,今回はベントスの中でも現存量が特に大きいマクロベントスのみを対象とし,また種間の成長速度の違いは無視して,マクロベントス現存量に対する生産量の比率( annual Production / Biomass; P/B比)を2.0と仮定し[1,6],ベントス現存量×P/B比より計算して求めた。なお,表4のマクロベントス現存量は湿重量で表示しているため,広島湾で実測して求めた換算値(表8)を用いて炭素ベースに換算した現存量から計算した結果を表7に示している。また,底生藻類の一次生産量( Gp )は測定を行っていないが,以前広島湾の自然干潟(No.19)で年間を通して測定した一次生産速度(118 g-C/m2/年)[7]に対する底泥表層のChl.a濃度の年間平均値(73.5 mg-Chl.a/m2)の比率=1.61g-C/mg-Chl.a/年を用いて,Chl.a濃度の平均値から推定を行った。
 PAOは西部,中部,東部海域でそれぞれ117, 27.9, 302 g-C/m2/年となり,海域間で違いが認められた。特に東部海域の干潟で有機物の浄化活性が高く,干潟面積を考慮した浄化量ではさらに大きな差がみられ,東部では西部の7.2倍,中部の35倍もの有機物浄化が行われている計算結果が得られた。
 最後に,これら干潟による浄化量と海域への流入負荷量との比較を行う。環境省のデータによると,平成3年度の広島県から瀬戸内海海域への有機物の流入負荷量は85.7 ton-COD / 日である。[8]TOCへの換算計数(TOC / COD) = 0.86と仮定 [9]して,これを年間の有機炭素負荷量に換算すると26,900 ton-C /年である。一方,県内全域の干潟による有機物浄化量は2,170 ton-C /年であり,流入負荷に対する比率は8.1%となる。従って,今回の調査結果から県内海域に流入する有機物量のほぼ1割近くが干潟により浄化されているものと推定された。

まとめ

  1998年から2000年にかけて県内海域を西部,中部,東部の3海域に区分し,5 ha以上の面積を有する干潟を対象として,面積,底泥の物理化学的性状や生息するベントスの種および現存量の把握を行った。また,これらの実態把握調査と並行して,干潟が有する有機物に対する浄化能についても検討を行った。
 県内干潟の総面積は1,024 haで,その内5 ha以上の面積の干潟は西部で19箇所,中部で12箇所,東部で22箇所存在し,総面積は750 haで,全体の73%を占めていた。西部には規模の大きい干潟はほとんど存在しないが,中部の黒瀬川河口,東部の芦田川河口,松永湾にそれぞれ47, 87, 204 haの大規模な干潟が存在した。西部では人工干潟の比率が高く,19箇所中9箇所が人工干潟であった。干潟に生息するマクロベントスの現存量はシルトタイプよりも砂もしくは砂+シルトタイプの方が豊富で,シルト含量が重量比で10%以上になるとかなり低下した。
 バクテリア及びベントスの呼吸代謝,マクロベントス生産量,底生藻類生産量から推定した干潟の浄化能( PAO )は西部,中部,東部でそれぞれ117, 28, 302 g-C/ m2/ 年となり水域間で差が認められた。この差は干潟のタイプやベントス現存量の違いに起因していると考えられた。水域ごとの浄化能に干潟面積を掛け合わせて求めた干潟全体の浄化量は2,170 ton-C/年で,この値は県内全体の海域への有機物流入負荷の8.1%に相当していた。
 本研究により,広島県内に現存している干潟の実態や海域に流入している有機物負荷に対してそれらが少なからぬ浄化の役割を果たしていることが明らかとなった。冒頭でも述べたが,現在残されている干潟や藻場はすでにかなり少なくなっており,浄化以外にも多くの機能や価値を有するこのような貴重な場所は極力保護し,保全していくことが好ましい。また,最近,人工干潟の造成が行われるようになってきたが,本調査結果からも伺われるように,人工干潟は一般的に構造上不安定なものが多く,生物の種および量が少ない上に,生息する生物の安定性も悪い。このような干潟は生態学的価値も浄化能も低い。従って,人工干潟の造成については各種の生物が安定的かつ多く住み着けるような場作り,すなわち,いかに自然に近いものにしていくかという工夫が今後の重要な課題となる。

参考文献

1]清木徹 (2000)干潟の生態と機能,日本の水環境 6中国四国編(日本水環境学会編),p15-31,技報堂出版,東京

[2]環境庁水質保全局 (1988)底質調査方法,70pp.

[3]Andersen, J.M. (1976) An ignition method for determination of total phosphorus in lake sediments. Water Res. 10時32分9-331.

[4]清木徹,平岡喜代典,李正奎,西嶋渉,向井徹雄,瀧本和人,岡田光正 (1998)広島湾における干潟の水質浄化能に関する研究―有機物の分解活性について―,水環境学会誌,21時42分1-428.

[5]環境庁 (1997)日本の干潟・藻場・サンゴ礁の現況,第1巻 干潟,p139-142.

[6]清木徹,岡田光正 (1999)前浜干潟の水質浄化能,水環境学会誌,22時52分7-532.

[7]Seiki,T.,Date,E.,Lee,J.G., Nishijima, W., Mukai,T.,Takimoto,K. and Okada, M.(1999) The significance of tidal flats for environmental preservation.
MEDCOAST99-EMECS99 joint conference, Land-ocean interactions: Managing coastal ecosystems, 269-282.

[8]内部資料

[9]浮田正夫(1982) わが国における窒素・リンの発生源構造と富栄養化に関する基礎的研究,京都大学学位論文,152pp.

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