宮島に生息するニホンジカは,野生動物として自然生態系の重要な構成種であるとともに,住民により大切に扱われてきた歴史があり,また観光要素の一つでもあり,人と密接に関わりながら生息しています。
しかしながら近年市街地周辺に集中して生息するようになり,シカによる住民の生活環境被害や観光客への危害が問題化してきました。また,シカ自体にも人為的な環境への依存や過密状態によって,異物の誤食による健康被害などの弊害が見られるようになりました。
平成10年度には旧宮島町が「宮島町シカ対策協議会」を発足させ,これらの問題について検討し,シカの野生復帰の方針を示しましたが,解決には至っておらず,その後,平成18年度に環境省がシカの植生被害調査を行い,また市からの要望を受けて,平成19年度には県がシカの生息状況調査に基づく保護管理報告書を作成し,市に提供しました。
このような状況を受け,地元廿日市市では平成20年3月に学識経験者(専門家),地元宮島町の関係者及び廿日市市で構成する「廿日市市宮島地域シカ対策協議会」を設立し,その協議会において,シカの生息状況などに係るモニタリング調査及び住民意識調査を踏まえ,「宮島地域シカ保護管理計画」を策定しており,この計画に基づき,廿日市市がシカの保護管理対策を実施しているところです。
廿日市市ではシカを自然に帰すために「餌やりの禁止とゴミの管理の徹底による個体数管理」を対策の柱とした「宮島地域シカ保護管理計画」を策定し,地域住民の理解と協力のもとに保護管理を進めているところです。
なお,詳細は廿日市市のホームページで御覧いただけます。
宮島地域のシカについては,全国の皆様から多くの御意見や御提言が寄せられています。
宮島のシカは,最近の分子遺伝学的な研究や,ほとんどの個体が多くの時間を山の中で過ごすことなどから,野生動物として位置付けられています。
シカは元々森林の中でさまざまな植物を食べており,市街地への誘導による事故や被害防止の観点から,餌やりを禁止し,シバ草地などの造成もしないこととしています。
避妊処置については,個体数調整のための最終手段と考えており,野生動物に対する手法が確立されていない,シカへの影響の配慮や,倫理的な側面から反対の意見も多いことなどから原則として実施しないこととしています。
これらは,「宮島地域シカ保護管理計画」の中に位置付けられており,県はこの計画に基づくシカの保護管理を支持しているところです。
人とシカが共存し,野生動物として健全な個体群の維持を図るため,廿日市市宮島地域シカ対策協議会によるシカの保護管理について,御理解と御協力をお願いします。