2 是正指導を受けるに至った背景・要因
2 是正指導を受けるに至った背景・要因
学校の教育活動及び管理運営は,法令等に則り,教育の中立性を確保しながら行わなければならない。
しかしながら,本県においては,県教育委員会が当面する課題の円滑な対応を優先するあまり,職員団体,同和教育研究団体及び様々な運動団体との交渉や話合いに応ずる中で,しばしば幾多の妥協を余儀なくされてきた。
これらのことも要因となって,学校における教育活動及び管理運営において,次第に法令等から逸脱,もしくはそのおそれのある状況が生み出されてきた。
学校の管理運営においては,教職員の勤務管理,職員会議,主任制等に係る課題などを生み出した。中でも,主任制については,昭和51年の主任の制度化に伴い,職員団体の反対闘争を受けて,教育委員会が職員団体と「協定」「覚え書」を交わしたり,命課に当たり,「主任等を命ずるに当たっては,職員会議の討議などを経て行うものとする。」という教育長訓令を定めたりしたことから,教育委員会や校長は,長くこれらに拘束されることとなった。
その結果,主任等の命課に当たり実質的に校長の意思が制約され,校務分掌との乖離や経験の浅い教諭が輪番制で命課されるなど,主任制本来の趣旨が徹底できないという状況が続いた。
この他,校長権限が歪められた職員会議の運営,職員団体の学校分会による校内人事への介入,校長と職員団体の学校分会との間で交わされた不適正な勤務時間管理などに関する確認書などにより,多種多様な形で校長権限が制約され,法令等を逸脱する状況がつくりだされた。
また,教育内容面においても,学習指導要領を逸脱し,教育の中立性が侵されるなど,多くの課題を生み出した。
中でも,その背景には同和教育がすべての教育活動の基底にあるとした,いわゆる「同和教育基底論」により,一部の地域や学校において同和教育にさえ取り組んでいればよいといった風潮や,「総括」などの名の下に同和教育の視点から,学校教育の全体を点検・評価するなどの状況があった。また,昭和60年9月17日に当時の広島県知事,広島県議会議長,広島県教育委員会教育長,部落解放同盟広島県連合会,広島県教職員組合,広島県高等学校教職員組合,広島県同和教育研究協議会,広島県高等学校同和教育推進協議会によって作成された,いわゆる「八者合意」文書は,「連携」の名の下に職員団体,同和教育研究団体及び運動団体が学校内外で運動論に基づいた主張を展開することを正当化するような状況をつくった。これらのことが,学校における校長権限を著しく制約するとともに,法令等に逸脱した実態を生み出すこととなった。
さらには,平成4年2月28日,県教育委員会が職員団体及び運動団体に対して,国旗・国歌の実施を事実上制約する見解を示した,いわゆる「2・28文書」は,その後の本県における学習指導要領に基づいた国旗,国歌の適正な実施を阻害してきた。