5 是正指導各項目の取組みの成果と課題
【教育内容関係】
(1) 卒業式・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱
○国旗掲揚については,平成10年度入学式時点では,ほとんどの学校で実施される状況であった。一方,国歌斉唱の実施率については,平成10年度入学式では,公立の小学校で36.3%,中学校で35.8%,高等学校・盲学校・ろう学校及び養護学校で16.9%と低い状況であった。
○平成10年12月,学校運営の適正化及び学校における国旗・国歌の取扱いについて通達を発出し,学習指導要領をはじめとする法令等に則った教育の推進を図るよう県立学校長及び市町村教育委員会を指導した。さらに,教育事務所ごとに管内の市町村教育長会議及び校長研修会を開催し,指導の徹底を図った。
平成11年2月,臨時に県立学校長会議を開催し,その際,卒業式・入学式における国旗及び国歌の取扱いを学習指導要領に基づいて適正に行うよう,教育長が各校長に対し,職務命令をもって指示した。その中で,国歌「君が代」の指導にあたっては,その歌詞の意味は日本国憲法の枠組みの中で解釈されるべきものであり,我が国の繁栄を願った歌であるという考えを明らかにした。同日付けで,県立学校長,市町村教育委員会教育長に対し指導通知「学校における国旗及び国歌の取扱いについて」を発出し,国歌「君が代」についての県教育委員会としての考え方を示した。
○ 平成11年10月25日には,県立学校長会議,同月26日の市町村教育長会議において,いわゆる「2・28文書」が国旗掲揚・国歌斉唱の適正な実施に支障をきたしているという状況があることから,県教育委員会は,いわゆる「2・28文書」は現在においては意味を持たないと明確に否定し,学校においては,過去の文書にこだわらず学習指導要領に基づき,卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱を適正に実施するよう指導した。
○ 平成12年には,卒業式・入学式における国旗及び国歌の適正な実施を図るために,12月26日付けで指導通知「卒業式及び入学式における国旗及び国歌に係る指導について」を発出するとともに,「国旗掲揚は正面掲揚が望ましいこと」,「国歌斉唱に際しては,教職員は起立するとともに,児童生徒が起立して斉唱するよう指導すること」などについて,12月26日の県立学校長会議,翌27日の市町村教育長会議において指導した。
平成10年度以降の公立学校における卒業式・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱の状況
○平成12年度卒業式に引き続き,平成13年度の入学式においても県内すべての公立学校で,国旗掲揚・国歌斉唱が適正に実施された。
平成13年度入学式において国旗を正面掲揚した学校の割合及び国歌斉唱時の教職員不起立者数
小学校 |
中学校 |
高等学校・盲学校・ろう学校・養護学校 |
|
---|---|---|---|
正面掲揚(%) |
97.4% |
98.0% |
100% |
不起立者数(人) |
46人 |
2人 |
60人 |
○不起立者数は,平成12年度卒業式以後の指導により,平成12年度卒業式の合計194名に比べると大幅に減少したものの,依然として国歌斉唱時に着席するなど,教育に携わる公務員としての自覚に欠ける教職員がおり,県民の公教育に対する信頼を損う実態が残されている。
[成果と課題]
県内公立学校の卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施率が100%となった。
学習指導要領に則り,児童生徒に国旗・国歌の意義を理解させ尊重する態度を育成するとともに,教育に携わる公務員としての自覚を促すよう,引き続き取り組む必要がある。
(2) 人権学習の内容
○人権学習において,国旗・国歌を学習指導要領から逸脱した内容で指導したり,また,狭山事件に関する裁判を差別裁判として指導し,併せて,同和問題学習においても運動論に基づいた指導が一部に見られるなど,教育の中立性確保の観点から問題のある事例が存在していた。
○このため,平成10年度には,人権学習の実施状況調査を実施し,問題のある学校について,学習内容の適正化を図るよう指導した。
これ以降,毎年度同様の調査を実施するとともに,平成12年度からは,小・中学校長に対してヒアリングを実施し,学習内容の適正化を図るよう指導した。
○しかし,なお,平成11年度において狭山事件に関する裁判を差別裁判として司法に不信感を抱かせる内容で扱っている事例が,小学校で17校,中学校で3校あり,また,平成12年度においても同様の事例が小学校で11校,中学校で1校あった。これらの学校については,平成13年度のヒアリングにおいて是正を図っている。
なお,平成12年度の人権学習における1学年あたりの平均実施時間は,小学校6.6時間,中学校6.4時間,県立高等学校4.0時間となっており,平成11年度より減少している。
人権学習における1学年当たりの平均実施時間
年度 |
小学校 |
中学校 |
県立高等学校 |
---|---|---|---|
10年度 |
8.9時間 |
8.2時間 |
5.2時間 |
11年度 |
9.2時間 |
7.4時間 |
4.9時間 |
12年度 |
6.6時間 |
6.4時間 |
4.0時間 |
[成果と課題]
人権に関する学習の内容については,不適切な状況について一定の改善が図られた。
なお,一部の学校では狭山事件に関する裁判を差別裁判として扱うなど,学習内容において教育と政治運動,社会運動との明確な区別がつかず,教育の中立性確保の観点から問題のある状況が残されている。今後,人権に関する学習の在り方や内容などの具体的なものを提示することにより,適正な学習内容となるよう引き続き指導する必要がある。
(3) 道徳の時間の名称,その指導内容
○平成9年度において,児童生徒に示す時間割における道徳の時間の名称を「人権」,「M」等にしていた学校が,43校存在した。
また,当該校の道徳の時間では,指導内容が人権の内容に偏り,一部の内容項目しか指導されていなかった。
○このため,平成10年度には,道徳の時間の年間授業時数や指導した内容項目等について調査を実施し,各学校の指導案等を提出させるなどして,学習内容の適正化を図るよう指導した。
これ以降,毎年度同様の調査を実施するとともに,平成12年度からは小・中学校長に対してヒアリングを実施し,学習内容の適正化を図るよう指導した。
○道徳の時間の名称を「人権」等と表記していた学校については,平成10年度全校是正を図った。
道徳における内容項目の指導
年度 |
小学校 |
中学校 |
|
---|---|---|---|
全ての内容項目が指導されている |
11年度 |
526校(82.7%) |
187校(73.6%) |
12年度 |
582校(92.1%) |
214校(84.9%) |
|
一部の内容項目が指導されていない |
11年度 |
110校(17.3%) |
67校(26.4%) |
12年度 |
50校( 7.9%) |
38校(15.1%) |
○なお,道徳の時間において,全ての内容項目が指導されている学校の割合は,平成12年度では小学校で92.1%,中学校で84.9%となっており,平成11年度に比べ,適正化が図られた。
しかし,小・中学校において全内容項目の実施が達成されていない状況があり,また,ごく一部の小・中学校では,道徳の時間において人権学習の指導時数が多くなっていることから,平成13年度のヒアリングにおいて是正を図っている。
道徳の時間の平均授業時数
年度 |
小学校 |
中学校 |
---|---|---|
10年度 |
34.0時間 |
31.4時間 |
11年度 |
34.7時間 |
33.1時間 |
12年度 |
35.4時間 |
35.0時間 |
○ 平成12年度の平均授業時数は,小学校35.4時間,中学校35.0時間となった。平成11年度に比べ,授業時数が確保された。
平成12年度調査で,35時間以上が確保できている学校は,小学校では547校(86.6%),中学校177校(70.2%)であった。
[成果と課題]
道徳の時間の名称については是正が図られた。また,学習指導要領に示されている内容項目を全て指導している学校が増加しており,適正化が進んでいる。
しかし,「世界の中の日本人としての自覚をもち,国際的視野に立って,世界の平和と人類の幸福に貢献する。」など一部の内容項目が指導されていない学校がある。
今後,年間指導計画を作成させるなどして,全ての内容項目について取り扱うよう指導するとともに,学習指導要領から逸脱する学習内容とならないよう引き続き指導する必要がある。
(4) 国語の時間割
○国語の時間が,生徒に示す時間割では「日本語」と表記されていた学校が,平成9年度,中学校に1校あった。
[成果と課題]
「日本語」と表記されていた1校については,平成10年度に是正が図られた。
(5) 小学校の音楽での国歌「君が代」の指導
○多くの小学校において,音楽の時間で国歌「君が代」の指導がなされていなかった。
○このため,平成10年度の小学校の音楽における国歌「君が代」の指導状況について調査し,学習指導要領に則って適正化を図るよう指導した。
これ以降,毎年度同様な調査を実施するとともに,平成12年度からは小学校長に対してヒアリングを実施し,国歌「君が代」の指導の適正化を図るよう指導した。
小学校音楽の時間での国歌「君が代」の指導状況
調査項目 |
平成10年度 |
平成11年度 |
平成12年度 |
---|---|---|---|
全ての学級で指導した |
310校(48.4%) |
588校(92.5%) |
632校(100%) |
一部の学級で指導した |
95校(14.9%) |
32校( 5.0%) |
0校(0%) |
指導しなかった |
235校(36.7%) |
16校(2.5%) |
0校(0%) |
○平成10,11年度においては,小学校の音楽で国歌「君が代」が全く指導されていない学校もあったが,個別に市町村教育委員会及び学校を指導した結果,平成12年度においては,全ての学級で指導された。
しかしながら,年間指導計画が作成されていなかったり,年間指導計画があるにもかかわらずそれに基づく指導がなされていないことや,入学式や卒業式における国歌斉唱時に,国歌を歌えない児童生徒がいることなどの課題がある。
[成果と課題]
小学校音楽での国歌「君が代」については,平成12年度には全ての学級で指導が行われるようになった。
しかし,卒業式・入学式において一部の学校で児童生徒が国歌を歌えないような状況があり,学校教育全体を通して,学習指導要領に基づいた国歌の指導の徹底を図る必要がある。
(6) 授業時数及び単位時間
○中学校学習指導要領では,「各教科等のそれぞれの授業の1単位時間は,50分を常例」とすることが規定されていたが,これを45分とし,しかも,総授業時数(1050時間)の確保の上で問題のある中学校があった。
○平成10年6月に,小・中学校の総授業時数の状況を調査するとともに,適正に確保されるよう各市町村教育委員会を指導した。
これ以降,毎年同様な調査を実施するとともに,総授業時数確保が適正に行われるよう各市町村教育委員会を指導した。高等学校についても,授業時数の状況調査を行い,適正に確保されるように指導した。
○平成12年度については,小学校では,ほとんどの学校,学年で標準授業時数を上回っており,確保できている。中学校及び高等学校においても改善されてきている。
[成果と課題]
授業の1単位時間については,平成10年度に是正が図られた。
また,各学校の総授業時数についても着実に改善が図られてきている。
(7) 指導要録の記入
○平成9年度の指導要録への記入について,「指導に関する記録」の「各教科の学習の記録」のうち「観点別学習状況」や「所見」,「行動の記録」のうち「所見」や「指導上参考となる諸事項」に関して,児童生徒の全員について未記入の小・中学校があった。
○平成10年6月に,小学校児童指導要録及び中学校生徒指導要録について,適正に記入するよう指導した。
○これ以降,毎年,同様な調査を実施し,指導要録の適正な記入について引き続き指導を行っている。
[成果と課題]
指導要録の記入については,是正が図られた。なお,指導に役立つ適正な記入について引き続き指導していく必要がある。
【学校管理運営関係】
(1) 教員の勤務及び勤務時間に係る管理
○勤務時間の終わりに休息時間を置き,教員が終業時刻前に退勤したり,毎日勤務校を離れてその勤務時間の大半について出張等を行い,同和教育研究団体の事務に従事することなどの実態があった。さらに,県立学校においては,勤務時間中に職員団体の活動に従事する際,年次有給休暇を取得しなければならないにもかかわらず,一旦,形式的に年次有給休暇の届けを行い,その後破棄するという,いわゆる「破り年休」の実態があった。
○このため,平成11年度には,職員は,法令等に特別の定めのある場合を除き,勤務時間中には職務に専念する義務があることや,条例所定の事由によらなければ給与を受けながら職員団体のために活動してはならないことを指導するとともに,勤務実態調査を実施して,条例所定の事由がないのに給与を受けながら勤務時間中に職員団体のための活動を行った職員について,違法に勤務場所を離脱した時間に相当する給与額の返還を求めた。
同和教育研究団体に関しては,広島県同和教育研究協議会の事務局員に対する職務専念義務免除(長期研修)の措置を解除した。
また,県教育委員会として同和教育研究団体との関係を見直し,広島県同和教育研究協議会及び広島県高等学校同和教育推進協議会の活動は,勤務時間中や職務としては認めないよう指導の徹底を図った。
○校長が所属職員の勤務状況を把握できるようになり,研修,出張等を含む勤務管理が適正に行われるようになった。その中にあって,職員団体主催の教育研究集会に出張や研修で参加させるなど,引き続き指導を要する学校がある。
[成果と課題]
校長が所属職員の勤務状況を把握できるようになり,研修,出張等を含む勤務管理が適正に行われるようになった。
なお,一部の小・中学校においては,職員団体主催の教育研究集会に出張や研修で参加させるなどの状況があり,市町村教育委員会を通じて引き続き指導する必要がある。
(2) 主任等の命課の時期及び人選
○主任等の命課が年度当初速やかに行われなかったり,担当分野に関する経験が少ない者が充てられるなど主任等が十分に機能しておらず,調和のとれた学校運営のもと,円滑かつ効果的な教育活動が展開されていない状況があった。
○このため,平成10年度には,校長ヒアリングを通して主任等の命課の実態を把握するとともに,適格者を充て,年度当初に速やかに命課するよう指導を行った。県立学校においては,主任制の適正化を図るため,広島県立高等学校等管理規則を改正し,主任等についてその職務内容を明確にするとともに,命課は教育委員会の承認を得て校長が行うことに改め,併せて,「主任等を命ずるに当たっては,職員会議の討議などを経て行うものとする。」といった校長権限を制約する教育長訓令を廃止した。
主任等の命課状況
区分 |
小学校 |
中学校 |
県立学校 |
---|---|---|---|
H10 完了月日 |
6月25日 |
6月15日 |
4月22日 |
H11 完了月日 |
5月14日 |
5月19日 |
4月21日 |
H12 完了月日 |
5月 1日 |
5月 2日 |
4月13日 |
H13 完了月日 |
4月 6日 |
4月 6日 |
4月12日 |
○このような取組みにより,主任等の命課時期の早期化や適格者の命課など,主任等の機能化に向けての全般的な改善は進んだが,一部の学校では,主任等の命課及び機能化の面で課題が残っている。
[成果と課題]
主任等の命課については,新年度の早い時期に命課が行われるとともに,位置付けやその役割も明確になり,適格者が命課されるようになった。
なお,一部の学校において,主任等が機能していない状況があり,定期的な研修を行うとともに,主任等が機能するような校内体制を整備する必要がある。
(3) 主任手当の拠出
○職員団体は,主任制に反対する立場から,主任の職務内容と校務分掌を乖離させたり,主任手当を拠出させるような取組みを行っていた。
○このため,主任等は,各学校において教育活動が適切な校務分掌のもと円滑かつ効果的に展開され,調和のとれた学校運営が行われるために重要な役割を果たすこと,また,主任手当の支給は,主任等の職務を給与上評価して行われるものであることなど,主任制及び主任手当の趣旨の徹底を図るよう通知した。
さらに,校長ヒアリングにおいても主任等の命課に際し,主任制度及び主任手当の趣旨を徹底するよう指示した。
○主任手当の拠出については,年々減少しているが,いまだ拠出している状況がある。
[成果と課題]
主任手当の拠出については,引き続き主任制及び主任手当の趣旨の徹底を図る必要がある。
(4) 職員会議の運営の実際等
○職員団体は,長年にわたって職員会議を「最高の議決機関」として位置付ける取組みを行ってきた。そのため,職員会議の議決によって学校運営が行われ,校長権限が制約される状況があった。
○このため,平成10年6月に通知を発出し,職員会議について,校長の責任と権限の適正な執行を補助する校内組織として位置付けること,校長が招集し主宰すること,校務運営規程や校務分掌表,校務運営組織図において最高議決機関等不適切な位置付けをしている場合は速やかに是正すること,の3点を県立学校長及び市町村教育委員会に指導した。また平成11年3月に広島県立高等学校等管理規則の一部を改正し,校長の職務を補助させる組織として明確に位置付けるとともに,市町村教育委員会に対しても規則を改正するように指導通知を発出した。これに加え,県立学校長及び市町村教育長に対するヒアリングを定期的に実施し,職員会議の運営について実態を把握するとともに,その適正化について継続して指導した。
職員会議における「校長権限の制約」の状況
区分 |
全く制約されない |
案件により制約される |
多くの校長権限が制約される |
|
---|---|---|---|---|
10年度 |
811校(81.8%) |
145校(14.6%) |
36校( 3.6%) | |
11年度 |
897校(90.8%) |
88校( 8.9%) |
3校( 0.3%) | |
12年度 |
933校(94.9%) |
50校( 5.1%) |
0校( 0.0%) | |
13年度 |
968校(98.9%) |
10校(1.0%) |
1校( 0.1%) |
○平成13年度は,校長権限が制約されるという状況は,大半の学校で是正された。県立学校については,職員会議が校長の責任と権限の適正な執行を補助する校内組織として,広島県立高等学校等管理規則の規定の趣旨に則って運用されるようになった。
[成果と課題]
職員会議を,校長の職務を補助させる組織として明確に位置付け,ほとんどの学校で職員会議が適正に運営されるようになった。
なお,一部の学校において,案件によっては職員会議により校長権限が制約される状況があり,引き続き職員会議の適正な運営について指導する必要がある。
(5) 学校運営に係る校長と教職員団体学校分会との確認書等の状況
○組合活動を阻害する人事の意見具申はしないこと,人事に関する問題は職員団体の学校分会会員で互選された委員で構成する人事委員会の議を経て行うこと等の人事に関する協定書や,主任手当を拠出しない者は主任に命課しないこと等の主任に関する確認書など,学校運営に関する校長権限を制限し,法令等に違反する内容について,校長と職員団体学校分会が交渉等で確認書を締結する状況があった。
○このため,管理運営事項である内容や法令等に違反する内容について確認書等を締結している場合は速やかに破棄するなど是正するよう指導した。
○校長権限を制約する確認書の締結をしている学校は,平成13年度には無くなり改善された。
[成果と課題]
校長権限を制約する確認書を締結する学校は無くなった。
引き続き,違法・無効な確認書等を締結しないよう指導する必要がある。
(6) 市町村立学校の管理運営に関する県教委の取組み状況
○県教育委員会が,市町村教育委員会において設置管理する学校の管理運営の実態を十分には把握していない実態があった。
○このため,平成10年度,市町村立の全小中学校を対象に,「職員会議の位置付け及び運営等の状況」「主任等の命課等についての状況」など大きく5項目にわたり,詳細な実態調査を実施した。
調査の結果,教職員の勤務時間管理,校長権限の確立,校長を中心とした学校運営等に係る課題が明らかになった。
これを受け,各学校ごとの管理運営状況について,市町村教育委員会立会いのもと,教育事務所職員が直接校長からヒアリングを行った。その際,あらかじめ調査回答票を各校長に配布し,学校ごとの課題をより明確にするとともに,校長自らがその責任と権限を自覚し校務運営を行うよう指導した。
さらに,所管する学校の管理運営に万全を期し,職員会議の位置付けについて,校長の責任と権限の適正な執行を補助する学校の内部組織となるよう,市町村教育委員会に指導通知を発出した。
○また,教職員の服務監督権者である市町村教育委員会の意識改革が十分ではなかったという反省を踏まえ,平成11,12年度においても,全ての市町村教育委員会教育長に対しヒアリングを実施した。その結果,特に,課題のある市町村教育委員会教育長に対し再三にわたりヒアリングを行うとともに,校長ヒアリングを実施して学校管理運営の適正化を図るよう指導した。
○平成13年度においては,全小中学校の校長を対象にヒアリングを実施し,管理運営などの状況の把握を行っており,職員会議の運営などに課題のある学校を所管する市町村教育委員会については,さらに引き続き重点的な指導が必要である。
[成果と課題]
市町村教育委員会教育長ヒアリングなどを通じて,市町村教育委員会の学校管理運営の状況を把握し,適切に指導できるようになった。しかし,一部の地域において学校の管理運営に課題があり,引き続き市町村教育委員会を指導する必要がある。