この大刀は、広島市安佐北区の地蔵堂山第1号古墳から見つかった素環頭大刀をもとに、江の川の砂鉄からつくった鉄を原料にして復元製作したものです。
環頭大刀は中国を起源とする円環状の柄頭(つかがしら)をもつ大刀です。なかでも円環のなかに装飾のない素環頭大刀は最も古い形式で、古墳時代中期(5世紀頃)に我が国でも製作されるようになりました。
地蔵堂山第1号古墳から見つかった大刀は、この時期の国産の素環頭大刀と考えられ、県内では東広島市の白鳥古墳出土のものと二例しかなく大変貴重なものです。
制作方法を検討する
1. 卸し鉄(おろしがね)をつくる。
たたら製鉄で作った鉄のかたまり塊を細かく砕いて鍛治炉で加熱・溶解し、
精製された鉄素材(卸し鉄)をつくる。
鍛治炉で卸し鉄をつくる |
2.鍛打(たんだ)<折り返し鍛錬>
卸し鉄をてこ棒に付けて鍛治炉で加熱し、何度も折り返して打ち鍛え、
鉄の中の不純物を取り除き、固さや成分を均質にした鋼をつくる。
鍛打(折り返し鍛錬) |
3.素延べ
おおまかな刀の形をつくる。
素延べ |
4.火造り
刀の刃や茎(なかご)など細かい部分の形をつくり、全体の形も調整する。
火造り |
5.焼き入れ
鍛治炉で加熱した刀を、水のなかに入れ急激に冷却して鋼を硬化させる。
刀身完成 |
6.研ぎ
刀身を研ぎ師が十数種類の砥石を使って研ぎあげ、
白銀色に輝く刀が完成する。
研ぎ |
研ぎ完成 |
7.鞘つくり
刀の外装である鞘や柄(つか)を刀に合わせてつくる。
鞘や柄は全国から出土した古墳時代の鞘木や柄木、
装飾古墳の絵画などから推定復元した。
鞘つくり |
鞘完成 |