【サイズ】
一巻 紙本墨摺著色 寛文11年(1671) 縦35.5cm×横1368.0cm
【解 説】
〇『古今立花集』は「いけばな」の作品集
この巻物は,池坊2代専好とその弟子たちの立花作品53図を載せた作品集で,大成された頃の立花の様子を,形や色などで具体的に伝えている。
このような「いけばな」を具体的に描写した図絵を「花形絵(はながたえ)」といい,『古今立花集』は,最初に出版された「花形絵」である。映像で記録することができなかった江戸時代,当初は文字や言葉で説明して姿かたちを伝えていた。絵で具体的なイメージを伝えることができる「花形絵」の出現は画期的で,人気のあった立花が学びやすくなったことであろう。立花は元禄文化の特色の一つにもなった。
〇立花(りっか)とは
「立花」は「いけばな」の形式の一つ。室町時代に「たてはな」と呼ばれるいけばなの原型が生み出され,次第に工夫が重ねられて,江戸時代初期に池坊2代専好によって立花という形式として大成された。
真(しん)とよばれる枝を中央に,副 (そえ) ・請 (うけ) などとよばれる七つの枝(七つ道具)をあしらって構成するこの形式によって,専好は一瓶の中に自然の様相を表現しようとしたのである。
〇元禄文化の特色の一つ
立花は,17世紀後半に上方を中心に栄えた元禄文化にも影響を与えた。近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)の浄瑠璃(じょうるり)には立花の用語が多く登場し,町人の間で立花が流行していたことをうかがわせる。
この時期,いけばなをたしなむ人口の増加を反映して,立花の秘伝を公にする花伝書(かでんしょ)があいついで刊行され,立花を理論的にかつ分かりやすく解説した『立花大全(りっかたいぜん)』などが出版された。『古今立花集』もこの出版ブームの中で出版された。
【参考文献】
工藤昌伸『いけばな文化史1いけばなの成立と発展』同朋舎出版(1992年)
細川護貞他編『いけばな美術全集5立花の展開』集英社(1982年)
『古今立花集』の作品から
立花の枝の構成図