広島県立文書館は,広島県に関する重要な行政文書・古文書を収集・保存・整理し,それらを県行政に役立てると共に,広く一般に公開する業務を行っています。
資料の収集・保存・整理という仕事は,文書館にとって,言わば核となる業務ですが,閲覧室の裏側で職員が日々地道に取り組んでいる仕事であるため,通常,一般の利用者の目に触れることはありません。
そこで,このページでは,文書館がどのような仕事を行っているのか,その日常の姿を発信していきます。目立たないながらも重要な文書館の業務について,広く知っていただきたいと思っています。
なお,展示や実習・講座など,当館が行う行事については,ここでは準備の様子を中心にお知らせします。各行事の当日の詳しい様子は,「 文書館 Monthly Report 」 で報告しますので,そちらをご覧ください。
今日も,広島史料ネットのボランティアとして,遠くは東京の国立公文書館,九州の小郡市埋蔵文化財センター,東広島市立美術館,竹原市立書院図書館,広島市内の安田女子大学から,6名のみなさんがレスキュー活動に参加してくれました。今日の作業は,公民館の村役場文書の乾燥状態の確認とカビの拭き取りでした。
8月と9月の火曜日・木曜日・土曜日に,ボランティア活動に参加していただいた方々は延べ49名です。10月以降も火曜日と木曜日に広島史料ネットを通してボランティアを受け付けていますので,興味のある方は,文書館までお問合せください。
史料ネットの吉川さん,国立歴史民俗博物館の天野さん,宮城歴史資料保全ネットワークの安田さんが来館し,2日間にわたり,カビが発生した帳面類への対処や,カビが発生している軸物の保管方法についてアドバイスを受けました。作業は職員総出で行いました。帳面類はスパチュラやへらで1ページずつ丁寧に開いていきます。軸物は,まず全体の状態を撮影して記録し,巻き戻して中性紙の薄葉紙で包み,シリカゲルとともに数本ずつまとめてポリ袋に入れて密封しました。
土砂に流された神社の文書には,粘土状に固まった泥がこびりついています。今日は乾燥した文書のページを開きながら,丁寧に泥をへらやスパチュラで落とし,刷毛で払う作業を行いました。乾燥した神社の文書は8月中に返却予定なので,これから広島歴史資料ネットワークのボランティアのみなさんの協力も得ながら,乾燥した文書のドライクリーニング作業を進める予定です。
三原市から公民館に保管されていた旧村役場文書が被災しているとの連絡があり,コンテナ9箱分の役場文書を受け取りに行きました。被災から7週間が経過していますが,まだ文書は濡れた状態で文書の表紙や小口部分には黒カビが発生し,表紙同士が固着しているものもあります。ボランティアの方の活動日だったため,一緒に吸水紙を挟み込んで,書棚に縦置きにして乾燥させました。乾燥作業にはキッチンペーパーに新聞紙を挟み込んだ吸水紙が大量に必要になるため,日常業務の合間に,みんなでキッチンペーパー新聞紙サンドを作っています。
三原市教育委員会から,公民館の郷土資料室が浸水し,ガラスケース内の和書が水に濡れてカビの被害などもあるとの連絡を受けたため,職員3名で文書のレスキューに伺いました。和書は公民館の職員のみなさんが水洗いして泥などを落としたのち,吸水紙を挟んで横置きにしてありましたが,濡れとカビの状態がひどかったため,館に持ち帰り,吸水乾燥の処置をすることにしました。ページの間に吸水紙を挟み込み,書棚に縦置きにして乾燥させていますが,ページを開くことができない文書もあり,対処の難しさを感じる一日でした。
今日は和歌山大学の橋本唯子さんがボランティアで来館し,神社の文書の乾燥作業を職員と一緒に行いました。午後からは,乾燥させた旧家の書簡やハガキを「モルデナイベ」に封入しました。7月30日に株式会社資料保存器材から提供していただいた「モルデナイベ」は,低酸素の状態を保つことができるため,新たなカビの発生を抑制しながら文書を保管できます。乾燥作業,少しずつ進んでいます。
国文学研究資料館の青木睦さんが来館され,被災文書のレスキュー方法について技術支援をしていただきました。濡れた文書に発生したカビへの処置,固着した文書の開披方法,軸物の本紙のカビの除去と乾燥後の保管方法など,文書の状態に即して丁寧にご指導いただき,職員も一緒に作業を行いました。冷凍した文書の真空凍結乾燥についての情報や,被災した文書の洗浄などについても教えていただきました。
また,地下1階の行政文書庫の環境改善策として,冷気を循環させるためのサーキュレーターの位置や風向き,増設する場所などについても,アドバイスをいただきました。
新潟市歴史文化課の長谷川伸さんから,カットした段ボール板200枚を送っていただきました。きれいにカットされた段ボール板はさっそく吸水乾燥作業に使っています。
今日は,神戸の歴史資料ネットワークの吉川圭太さん,国立歴史民俗博物館の天野真志さん,兵庫県立歴史博物館の吉原大志さん,宮城歴史資料保全ネットワークの安田容子さんが来館し,カビ被害がひどい商家文書の冷凍のためのパッキング作業を指導していただきました。作業は当館職員も総出で行い,段ボール箱17箱分の文書のパッキングを終えることができました。パッキングした文書は市内の倉庫会社の冷凍庫に搬入して,冷凍保管しています。また,木箱に入っていた軸物類も1本ずつ取り出して,外側のカビをエタノールで拭き取り,乾燥させました。固着した軸物の開き方なども教えていただきました。
31日には山陰歴史資料ネットワークの板垣貴志さんと島根大学の学生のみなさん,神戸の歴史資料ネットワークの松岡弘之さん,室山京子さん,跡部史浩さんも加わって,はがきや書簡などの乾燥とカビへの対処を行い,作業が一気にはかどりました。史料ネットのみなさんには,キッチンペーパーや手袋などの資材も提供していただきました。各地の史料ネットからのレスキュー支援,心強くありがたいです。
なお,株式会社資料保存器材からは防カビ・殺虫用の無酸素パック「モルデナイベ」300セットを提供していただきました。冷凍する文書のパッキングや,乾燥後の文書のカビ予防などに活用していく予定です。貴重な資材を提供していただき,大変助かります。ありがとうございました。
再発足した広島史料ネットの被災文書レスキューのボランティアとして,広島経済大学の平下義記さんが神社の文書の乾燥作業に参加しました。職員と一緒にページをめくりながら吸水紙を交換し,乾燥状態を確認していきます。クリアファイルに入っている文書は,乾きがわるいため,クリアファイルのビニールを切って中の書類を取り出して乾燥させました。ボランティアによる支援は,地道な乾燥作業の継続に大きな力となります。8月・9月は火曜日・木曜日・土曜日にボランティアを募って,作業をしていく予定です。
呉市学校教育課から市内の小学校の文書が被災したとの連絡があり,当館職員が小学校に伺ったところ,校舎1階の校長室にあった卒業証書台帳が水損していたため,段ボール1箱分の文書を預かりました。持ち帰った文書14点はすぐに吸水処置を行い,縦置きにして風をあてて乾燥させています。
今日は,福井県文書館からキッチンペーパー,ビニール手袋,インナー手袋などの支援資材を送っていただきました。ナイロン製のインナー手袋は薄くて手になじみ,使い勝手がよく,大好評です。
瀬野川沿いの旧山陽道に面し,戦前に酒屋を営んでいた旧家の古文書が水没被害を受けたとの情報が入り,職員2名が文書のレスキューに行きました。当館の公用車で2回に分けてコンテナ21箱とタンスの抽斗,木箱,段ボール箱をそれぞれ3つずつ,計31箱の文書を受入れました。被災した旧家がある辺りでは,氾濫した川の濁流が大人の胸の高さくらいにまで達しており,旧街道の両脇の家はみな畳を外して復旧作業に追われていました。一部の文書は所蔵者宅の縁側で陰干しされていましたが,蔵の中の文書類は被災後3週間濡れた状態のままだったため,汚水臭がひどく,とくに軸物類や帳簿類には黒カビや緑色のカビが発生していました。持ち帰った文書は大量だったので,ひとまず荷解室に仮置きし,濡れがひどくカビ被害のある文書に対しては,冷凍などの対処を考えていくことになりました。
福山市内の神社で多数の文書が被災したとの連絡があり,宮司さんからの依頼を受けてレスキューのため文書を引き取りに行くことになりました。お預かりした文書はコンテナ22箱分で,すでにカビが生えているものもありました。この日は,先日追加で受入れた海田町の神社からも,さらに追加でコンテナ2箱分の文書を受入れました。預かった文書は早速当館の荷解室に運び込み,作業台や移動式書棚に並べ,乾燥作業の準備にかかりました。
17日に当館から広島大学へ運搬した広島市内の小学校文書の乾燥作業を支援するため,当館職員が広島大学へ行き,作業を行いました。この日は福岡から,各地の被災資料レスキューに携わってこられた方が支援に来てくださり,乾燥状態の確認や今後の作業の進め方などについて,豊富な経験に基づくアドバイスをいただきました。また,神戸の歴史資料ネットワーク(史料ネット)から代表の奥村弘さんと吉川圭太さんも来られ,長らく休眠状態になっている広島歴史資料ネットワークの再興に向けての話し合いも行いました。史料ネットからは,今後の被災資料の保全について全面的に支援していただける旨,お話をいただきました。福岡から支援に来られられた方は,21日も当館へお越しいただき,先日呉市から受入れた屏風の乾燥作業とカビへの対処を指導していただきました。
また,国文学研究資料館准教授の青木睦さんから,吸水処置に使用するキッチンペーパー段ボールサンドを大きな段ボール箱に2箱分送っていただきました。段ボールを同じ大きさにカットするのは大変なので,すぐに使える資材の支援はほんとにありがたいです。さらに,全史料協(全国歴史資料保存利用機関連絡協議会)の調査研究委員会(事務局:茨城県立歴史館)から段ボール1,500箱の提供を受けました。今後適宜活用させていただくことになりますが,迅速かつ大量に提供していただき,ほんとにありがたいです。
今日は,呉市のクリーンセンターに災害ごみから見つかった屏風を受け取りにいきました。屏風の下張りには商家の日誌や謡本など近世文書や和書が使用されており,「文化二年」と書かれた文字も見受けられます。下張り部分は濡れた状態でカビが発生しているため,乾燥させる作業が必要です。また,この日は,先日受入れた海田町の神社文書の追加分(コンテナ4箱)も受入れ,キッチンペーパー,新聞紙,段ボールで初期乾燥処置を行いました。
小学校文書の乾燥作業を広島大学へ引き継ぐことになったため,初期乾燥処置を終えた文書を広島大学へ搬入しました。当館では広島大学文書館との間で「災害等の発生に伴う史・資料保護に関する相互協力協定」を締結しており,この協定に基づく活動の一環として行いました。
文書の乾燥場所は24時間空調で,サーキュレーターや扇風機も設置してあり,乾燥作業に適した環境が整っています。搬入した文書は,コンテナから出して,括ごとに縦置きにして並べ,さっそく広島大学75年史編纂室の石田雅春さん,広島大学文書館の高杉洋平さん,アルバイトの学生さんたちと一緒に吸水紙の交換作業を行いました。吸水紙の交換,文書の頁の開披,カビの除去,乾燥の確認など,小学校文書のレスキュー作業は,広島大学のみなさんが継続してくださることになりました。
被災した文書は水に濡れた状態なので,文書の運搬にはプラスチック製の折り畳みコンテナが必要です。今日は,コンテナの提供をお願いしていた鳥取県立文書館から,コンテナが100個届きました。カビの殺菌に必要なエタノールも一緒に提供していただきました。貸与していただいたコンテナは,さっそく被災した神社文書の受入れに活用しました。ご支援ありがとうございました。
昨日受入れた小学校の文書の初期乾燥処置を当館の研修室で行いました。水濡れの軽い文書は研修室の机や移動式書棚に並べて乾燥させました。水濡れがひどい文書には吸水紙としてキッチンペーパー新聞紙サンド(折った新聞紙にキッチンペーパーを巻いたもの)を挟み,文書の両側をキッチンペーパー段ボールサンド(A4サイズより少し大きいサイズの段ボール板にキッチンペーパーを巻いたもの)で挟んでスズランテープで縛り,机の上に縦置きにました。また,乾燥を促進させるためにサーキュレーターと扇風機も稼働させました。作業には広島市公文書館の職員も応援に来てくださいました。
当館の荷解室で,昨日受入れた神社文書の乾燥作業を行いました。まず文書についた泥をおおまかに取り除き,文書を開いて吸水紙を挟み込みます。濡れがひどく,ページを開くことができない文書もありました。吸水処置をした文書は棚に並べて,サーキュレーターの風を当てて乾燥させました。今後は乾燥状態を確認しながら,順次,吸水紙の交換を行っていく予定です。被災文書は泥水につかっているため,防塵マスク,使い捨てビニール手袋,エプロンなどを着用し,換気にも注意して作業を進めました。
この日は新たに広島市内の小学校で文書が被災しているとの情報が入りました。当館職員が現地確認に行ったところ,小学校の現用文書が大量に水損被害を受けており,濡れた文書は廊下に平積にされ,校庭で天日干しされている文書もありました。被災文書は全て当館で預かることにし,公用車で2回に分けて当館へ運搬しました。
7月6日に西日本一帯を襲った豪雨災害は,広島県内でも非常に広範囲にわたって,土砂災害や河川の氾濫・洪水等により大規模な被害をもたらし,多くの人命が失われる事態となりました。豪雨から5日が経過したこの日,初めて被災文書の情報が海田町から寄せられ,当館職員が受入れのため出張しました。海田町役場周辺では職員の方々が土砂の掻き出し作業に追われていました。受入れた文書は,土砂崩れで被災した町内の神社文書で,祝詞などの文書が土砂にまみれた状態で町役場に運び込まれていました。これらを当館でお預かりし,乾燥作業を行うことにしました。
昨年度,カビ被害のある行政文書を燻蒸処理して行政文書庫へ再配架していましたが,文書整理ケースの外側には,カビの残滓が付着したままの状態でした。カビ自体は燻蒸により殺菌されてはいますが,残滓が付着したまま放置していると,保存環境によっては再びカビが発生する基となる恐れがあるため,新しい文書整理ケースに入れ換えることにしました。
当館会議室の机にマスカーテープを貼り,空気清浄機を2台設置して作業を行いました。地下1階の行政文書庫から移動式書棚に乗せて2階の会議室まで運び,文書整理ケースを入れ換えました。中の文書にカビの残滓が付着している場合は,エタノールでふき取りました。入れ換えた文書整理ケースには新しくラベルを貼って番号を記入し,番号順に移動式書棚に並べて,地下書庫へ戻しました。この日は,午前中の作業で124冊の入れ換えを行いました。
当館が個人から寄贈を受けた映画フィルムにカビ被害が発生していることが分かり,点検作業を行いました。たまたま資料デジタル化の説明に来ていた業者に見てもらおうと,保管庫から映画フィルムを出して箱を開けてみたところ,フィルムに白カビが付着していました。
フィルムのカビ被害は,専門業者に依頼する必要があるため,まずは保管庫にある映画フィルムを全て点検することになりました。当館の会議室の机にマスカ―テープを敷いてフィルムを容器から出し,カビの有無を職員で手分けして点検しました。白カビの被害を発見したら,現状を撮影して記録し,容器はエタノールを染み込ませたキムワイプで拭き取って,しっかり乾燥させました。また,フィルムが入っていたビニール袋には,酸と湿気を吸収する映画用フィルム保存剤「モレキュラー・シーブ」を入れ,その中にフィルムを入れ戻して密閉し,保管庫のキャビネットに戻しました。
この日,旧家から1万点以上にのぼる大量の古文書の寄贈を受け,当館への搬入作業を行いました。土蔵の中に置かれている木箱類のうち,古文書が収められている箱を事前にチェックさせていただき,正確かつ迅速に運搬することを心がけました。当館へ搬入された古文書は,荷解室に組まれた櫓の枠内に収まるよう積み上げられ,燻蒸の実施に備えました。
当館では一昨年末に行政文書庫でカビ被害が確認され,被害文書は職員により除菌作業を行いましたが,処理しきれなかったものについては,昨年10月に燻蒸処理を行いました。その後,12月に書庫内を点検したところ,教育委員会から移管された文書にも新たにカビ被害が確認されたため,今回それら行政文書66箱と高等学校から移管された大型帳簿類を燻蒸処理することにしました。また,5月1日に1万点規模の古文書(家文書)の受入れがあるため,昨年度受け入れた古文書10数箱と合せて当館で燻蒸することにしました。
この日,燻蒸を行う当館の荷解室では,業者による櫓の設置作業が行われました。組み上げた櫓の枠内に燻蒸予定の行政文書と古文書を配置。余ったスペースには,5月1日に搬入予定の文書群を積み上げます。