槙林家では,明治30年(1897)から酒造業の経営を開始し,「菊の光」と「初賀里」の二種類の清酒を醸造していた。これらは軍用酒としても評判を呼び,全国酒類品評会でも,明治42年(1909)以後,連続一等賞の栄冠を得ている。この賞状は,昭和12年(1937)広島県酒造組合呉安芸支部主催の第33回酒類品評会で,「菊の光」が一等賞を受賞したときに授与されたものである。
賞状にはカビの被害がなかったので,平置きにして自然乾燥させたが,紙面に泥水の汚れが付着した状態である。
被災した槙林家の蔵内には,清酒の包紙やラベルなども大量に保管されていた。これは清酒「菊の光」の包紙である。被災して濡れた包紙の束は,広げた状態で平置きにして自然乾燥させたが,紙に滲んだ泥水の痕が残っている。