享保13年(1729),清国から連れてこられたベトナム生まれの牡牝の象2頭が,将軍徳川吉宗に献上されるため長崎に上陸した。
牝象は長崎で急死したため,牡象だけが江戸まで350余里の道程を,翌年3月から5月にかけて74日間の旅をした。もちろん当時の人々は実物の象を目にするのは初めてで,道中いたる所で多数の見物人が押しかけ,巨大で特異な鼻をもつ珍獣に目を見張った。京都や江戸では象に関する書物も多数出版されている。
一方,道筋の各領主は,その飼料や飲料水,宿泊の世話など多大な費用を要する上,将軍献上用だけに,領内で不祥事が起こると一大事になるため,象が領内を通行し終わるまで神経をすり減らした。広島藩領内を,象は4月5日から10日にかけて通過している。
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