庄屋・地主・町人など旧家に残される古文書は,ふつう内容のまとまりごとに,紙縒(こより)や紐・荒縄などで括られ,あるいは袋や封筒などに仕舞われていることが多いでしょう。これらは,そのままの状態では閲覧利用するのに不便であり,また,保存管理の面から見ても,しかるべき整理を施しておくことが必要です。
古文書を整理する際,どのような点に留意すればよいでしょうか。かつては,古文書整理といえば,「支配」・「土地」・「租税」などといった主題を設け,古文書を主題別に仕分けするのが一般的でした(写真)。これは,図書の主題別分類を応用した考え方で,現在でもこの方法で整理しているところがあるようです。しかし,一見雑然としているように見える古文書でも,よく見ると,関連する内容の文書ごとに一括されていたり,重要な文書を木箱に入れて別扱いにするなど,残された状態そのものの中に,古文書を残し伝えてきた人達の意図が込められていることが分かります。主題別に仕分けしてしまうと,その文書が残されてきた元々の状態(そこに含まれている秩序や意図)が分からなくなってしまい,重要な情報を消してしまうことになります。
そこで,こうした情報を消さないよう,古文書整理は,次の5つの原則に基づいて行います。
ある家(出所)の文書と他の家の文書を混ぜ合わせてはいけない,というもの。最も基本的な原則です。
ある文書群が実際に現用文書として使われていた時の配列状態(原秩序)を出来る限り尊重して整理するというもの。「出所の原則」と並んで重要かつ基本的な原則です。
文書群の中から,整理しやすいもの,内容の面白そうなものだけをピックアップして整理してはならない,というもの。基本的に,全ての古文書には同等の価値があると認めて整理するということです。
袋や包紙などによる一括状況を記録したり,包が未開封である場合には,未開封であることを記録するなど,文書の原形を保存し,もしくは記録にとどめておく,というものです。原形保存ということでは,折り目もそれ自体大切な情報であり,消さないようにするのが原則です。
~『広島県立文書館だより』第17号 より~