槙林家は広島市安芸区瀬野で近世期から醤油・酒造業などを営み,瀬野村の村長や県会議員なども務めた旧家です。「平成三十年七月豪雨」では,家の傍の瀬野川に合流する支流が氾濫し,家屋が浸水して蔵内の文書が被災しました。被災後,高温多湿の蔵に置かれていた文書にはカビが繁殖し,紙の腐敗も進行して臭いがひどい状態だったため,七月二十六日と八月一日に,被災した文書(四十四箱分)を当館に搬入し,乾燥などの応急措置を開始しました。
水に濡れた文書を冷凍すると,カビの繁殖や腐敗の進行を抑えることができるため,保全活動では,冷凍庫の確保も課題の一つとなります。今回のレスキューでは,広島市内で大型の冷凍施設をもつ倉庫会社のご支援により,文書の冷凍保管が可能となったため,水濡れの激しい文書やカビによる被害,腐敗の進んだ文書(二十箱分)については,七月三十日に冷凍して保管し,十二月に解凍・乾燥作業を行いました。
このたびの保全活動では,神戸市ほか各地の史料ネットやレスキュー専門家の支援,関連諸機関との連携,広島大学文書館や広島歴史資料ネットワークのボランティアの皆さんとの協働,各地からの資材の提供などが活動の大きな支えとなりました。
槙林家付近を流れる瀬野川の様子
濡れてカビが発生した帳簿類と掛軸
《受け入れた槙林家文書》 コンテナ・木箱など44箱分