令和5年度を振り返って【取組と成果】
目次
ウィズ・アフターコロナにおける経済の発展的回復に向けたLXの実践
- 県民の挑戦を後押し ~県民が抱く不安を軽減し『安心』につなげる~
- 県民の挑戦を後押し ~県民の『誇り』につながる強みを伸ばす~
- 県民の挑戦を後押し ~県民一人一人の夢や希望の実現に向けた『挑戦』を後押し~
- 特性を生かした適散・適集な地域づくり
令和5年度の総括
令和5年度は、新型コロナウイルス感染症の5類への引き下げに伴う行動制限の緩和によって、社会全体に開放感を取り戻していく動きがみられ、本県においてはG7サミットの後押しもあり、インバウンドを含む観光・宿泊を中心にコロナ禍前の水準に戻るとともに、製造業においても、供給制約の緩和により生産が回復するなど、県内景気が緩やかな回復に向かった1年でした。
このように、かつての賑わいを取り戻す動きがみられた一方で、コロナ禍によって生まれた首都圏から地方への回帰の潮流は、コロナ禍の落ち着きとともに、再び東京一興集中への動きへとコロナ禍前に逆戻りしています。本県においても、社会動態の均衡に向けては様々な施策領域で取組を進めていますが、外国人の転入は増加に転じたものの、依然として就職などを要因とした転出超過が続いており、特に若年層の転出超過が喫緊の課題となっています。このため本県では、令和6年度より、若年層の転出要因について、これまでの取組内容やその成果も含めてあらためて分析し、その結果を踏まえた社会減対策の再構築に取り組むこととしています。
こうした中、令和5年度はG7広島サミットが開催されました。サミット開催により、県内への直接的な経済波及効果は約725億円にも及び、さらには観光客数の増加見通しなどによって、令和9年度までの5年間で約1,649億円の観光消費額がもたらされると推計されています。
こうした経済波及効果に加え、サミットでは、平和に関するメッセージはもとより、広島が誇る自然や食、文化など本県が持つ多彩な魅力が国内外のメディアを通じて世界に発信され、広島への注目度が飛躍的に高まっています。
このような広島のプレゼンスの高まりを追い風に、県内をはじめ、国内外の人々に「ひろしまは、美味しさの宝庫である」と実感してもらえるよう、広島和牛や瀬戸内さかな、日本酒など、本県の多様で美味しい「食」の魅力や価値を創り伝える「おいしい!ひろしま」プロジェクトの推進や、多彩で豊富な観光資源を生かした本県でしか得られない高い価値を提供できる観光プロダクトの開発などに取り組み、国内外から広く共感いただくことで、「ひろしまブランド」の価値のさらなる向上を図ってまいります。
また、デジタル化等の技術革新や、カーボンニュートラルなどの社会経済情勢等の変化は、今後さらに加速すると予測されており、この変化に対応して本県経済を持続的に発展させていくためには、成長の原動力や、その基盤となる挑戦心(アニマルスピリッツ)を育むことが必要不可欠と考えており、本県では、乳幼児期から社会人まで、一貫した人づくりを推進しています。さらに、スタートアップ支援などのイノベーションが生まれやすい環境誠意に取り組むとともに、環境・エネルギー分野や、ゲノム編集技術等を活用した健康・医療関連分野など、市場拡大が見込まれる分野への支援に取り組み、多様な人材や企業が活躍することで、本県がさらなる成長を遂げるための活力にしてまいります。
このほか、令和5年度から国においてはこども家庭庁が発足し、6月には「こども未来戦略方針」が策定され「すべてのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充」や、「共働き・共育ての推進」などの取組に注力することが示されました。
こうした中、本県では、これまで全国に先駆けて独自に取り組んできたひろしまネウボラの構築や産後ケアなどの支援の拡充、男性の育休取得促進などの働き方改革などについて関係部局が一丸となって一層加速させ、県民の皆様の結婚・妊娠・出産・子育ての希望の実現を後押しするとともに、子育てしやすい環境整備に取り組んでまいります。
新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症への対応
保健・医療提供体制の確保
県民生活や本県経済に大きな影響を及ぼした新型コロナに対し、県では、県民・事業者の皆様に基本的な感染防止対策の徹底を促すとともに、医療体制のひっ迫を防ぎながら、診療体制の維持・確保や重症化リスクのある高齢者等を守る対策に取り組むなど、県民の皆様が安心して生活できる社会の確立に向けたウィズコロナの保健・医療提供体制の整備を進めました。
具体的には、感染症法上の位置付けが5類感染症に変更されたことにより、医療提供体制を特定の医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による通常の対応に移行し、各医療機関や医師会等の関係団体のご協力により、県民・事業者の皆様に大きな混乱が生じることなく、医療提供体制は概ね確保されています。
物価高騰・円安等への対応
物価高騰・円安等への対応
本県経済においても、ウクライナ情勢や急激な円安の影響などから、エネルギーや原材料、食料品などの価格が高騰し、企業収益や家計を圧迫しました。さらに、各国の金融引き締めによる世界経済の減速など多くのリスク要因も懸念される状況でした。このため、県内産業や国民生活において、物価高騰や円安などの影響を受ける事業者や県民に必要な支援が行き届くよう、国や市町とも連携して、時機を逸することがないよう必要な対策を講じてきました。
具体的には、国が定める公的価格によって経営を行う医療機関や社会福祉施設等に対し、光熱費や食材費などの高騰額の一部を支援しました。
農林水産業者に対しては、配合飼料価格の高騰による畜産経営体への影響を緩和するため、配合飼料の購入金額の一部を補助するほか、急速に悪化している酪農経営の子牛収入の減少分を緊急的に緩和する措置などを講じるとともに、和牛子牛の市場取引価格の急落による和牛繁殖経営体への影響を緩和するため、国の支援に加え県独自の支援を行いました。
中小企業等に対しては、長期・低利の資金繰り支援の拡充を図るため、金融機関を活用した伴走支援型特別資金の融資枠を拡大したほか、特別高圧契約により受電した電気を使用する中小企業等や、家庭業務用LPガスを使用している一般家庭及び中小企業等に対し、料金高騰の負担を軽減するための支援も行いました。
加えて、将来を見据えた構造的な課題に取り組む事業者への支援として、交通事業者が行う今後の持続可能な公共交通の実現に資する投資に係る経費の一部を支援し、トラック運送事業者に対しては、生産性向上や人材の確保に向けた支援を、製造業者等に対しては研究開発投資を減退することがないよう、応用・実用化開発に対する支援を行いました。
社会的基盤の強化
地域共生社会の実現
住民と多様な主体の連携・協働による課題の解決
人口減少・少子高齢化等による社会構造の変化や、個人の価値観やライフスタイルの多様化、さらには長期化したコロナ禍の影響も重なり、地域での人と人とのつながりや、支え合う意識の希薄化が一層進む中で、複合的な課題や、制度の狭間の問題などが顕在化しています。
このため県では、県民誰もが住み慣れた地域でつながり、生きがいや役割を持ち、支え合いながら生き生きと暮らしていくことができる「地域共生社会」の実現を目指し、住民をはじめとした地域社会を構成する多様な主体のつながりづくりや、それを支える担い手の育成、様々な生活課題等を抱える人や世帯に対して必要な支援が届けられる包括的な支援体制の構築を図る市町への支援に取り組んでいます。
こうした中、令和5年度には、社会情勢の変化や地域の実情等を踏まえ、地域共生社会における目指す姿や取組の方向性を反映した、本県の地域福祉に関する基本方針となる「第2期広島県地域福祉支援計画」を策定しました。
このほか広島県では、従前から全国に先駆けて地域包括ケアシステムの推進に取り組んできた結果、体制の構築や質の向上は一定の水準に達していると考えています。今後は、地域の個別の実情に応じた一体的・総合的な伴走支援に転換し、「地域まるごと支援」の視点をもって、地域包括ケア支援システムの一層の質の向上と充実を図ってまいります。
障害者とその家族が安心して生活できる環境整備
障害者が地域で安心して生活していくためには、日常での相談体制や見守り体制、緊急時の受け入れ態勢など、地域で支え合う仕組みを構築する必要があります。
令和5年度は、人工呼吸器による呼吸管理やたん吸引といった医療的ケアを理由にスクールバスが利用できず、保護者送迎により通学する生徒等に対し、介護タクシー及び訪問看護ステーションから派遣された看護師によって行う通学支援を試行的に開始し、利用した保護者からも評価いただいたことから、令和6年1月からも継続して実施しています。さらに、医療的ケアが日常的に必要な「医療的ケア児」とそのご家族の皆様を支援する「広島県医療的ケア児支援センター」の運営も開始しました。県では、当センターを中心に、保健、医療、福祉等の関係機関と連携しながら、市町が行う支援をバックアップしていくことで、医療的ケア児とそのご家族が、県内のどこにいても必要な支援が受けられ、安心して暮らせる環境を整えてまいります。
妊娠期からの切れ目ない見守り・支援の充実
核家族化の進展や地域のつながりの希薄化、新型コロナの影響の長期化などにより、妊産婦や子育て家庭が孤独や不安を抱えやすく、さらに子育てに対する助言や協力を身近な人から得ることが難しい状況になっています。このため、全ての子供と子育て家庭が安心して暮らし、子育てができるよう、子供を取り巻く関係機関が連携し、妊娠期からの切れ目のない見守り・支援を行うとともに、福祉と教育が連携し、データを活用することで、児童虐待などのリスクを早期に把握し、必要な支援を届ける仕組みが必要です。
こうした中、県では、保育所・幼稚園や医療機関などの関係機関と一体となって子育て家庭を見守る仕組みであるひろしまネウボラの構築に取り組んでおり、令和5年度末時点では17市町で実施されています。引き続き、ひろしまネウボラの全県展開へ向けて取り組むとともに、令和5年度から開始しているモデル3市町における戦略的PR事業等により、ネウボラの認知度を高め利用促進を図ってまいります。
予防的な支援を届ける仕組みについては、モデル4市町において乳幼児健診などの情報に加え、子供の育ちに関する様々な情報を統合し、AIを活用したリスク予測などを参考に、虐待などのリスクを早期に把握し、支援の対象者を決定し、ネウボラや学校などと情報共有しながら、予防的な支援を継続的に行う仕組みの構築を進めています。こうした取組などにより、支援や見守りが必要な子供を新たに把握できたことなど、少しずつ成果が現れ始めており、実証期間の最終年度である令和6年度には、これまでの成果と課題をまとめ、より効率的な活用方法について検証を進めてまいります。
このほか、令和5年度から新生児・小児聴覚検査の体制を拡充し、精密検査が必要な新生児の情報や検査の受診状況を一括して管理できるオンラインシステムを全国で初めて整備しました。さらに、関係機関に対するフォローアップや保護者向けの普及啓発などの役割を担う新生児・小児聴覚検査フォローアップセンターを開設するなど、適切な療育支援体制の整備などにも取り組んでいます。
高度医療機能と地域の医療体制の確保
高齢者人口の増加に伴い医療ニーズが高まる一方で、労働力人口の減少により医療サービスを支える人的な資源が縮小するとともに、多数の症例や研修体制が充実する大都市圏の病院に若手医師や研修医が集中することで、県内の医師不足が顕在化することが見込まれます。また、今後も、少子高齢化の進展が見込まれており、さらなる人口減に伴う医療人材不足や、医師の働き方改革への対応といった新たな課題にも直面しているところです。このため県では、有識者会議の提言や医療機関に対するヒアリングなどを経て、令和4年11月に高度医療・人材育成拠点基本構想を取りまとめたところです。
令和5年度は、この構想を実現するため、高度医療・人材育成拠点(以下、「新病院」という。)を整備することとし、新病院の役割や必要な医療機能、施設整備等について、関係者と検討を重ね、高度医療・人材育成拠点基本計画を策定しました。引き続き令和6年度においても、計画を推進していくために、統合・再編の対象となる病院など関係機関とも連携し、新病院の建設に向けた基本設計や、新病院の運営主体である地方独立行政法人の設立に向けた準備を進めてまいります。
このほか、今後、複数の疾患を有する高齢者の増加が見込まれることから、県では、幅広い領域の疾患を診ることができる総合診療医の育成に取り組んでいます。令和5年度には、研修生や医学部生を対象に、総合診療医を目指すきっかけとなるセミナーや現場見学会、指導医を対象とした意見公開会を開催するとともに、今後は広島大学と連携して総合診療医の育成・派遣に取り組むこととしています。
外国人が安心して生活できる環境整備
言葉の壁や習慣等の違いなどにより、地域で暮らす外国人が社会的に孤立する恐れがあることから、県では、外国人が必要な情報やサービスを確実に受け、地域社会の一員として安心して生活できる環境の整備に努めています。
令和5年度は、市町と連携して、生活に必要な情報を外国人同士で共有できる仕組みづくりに向けたキーパーソン等の発掘や、小中高生の異文化理解の促進、行政情報や日常生活に関する情報の提供機会の充実、地域日本語教室の新規開設などに取り組み、蓄積したノウハウや成功事例を横展開しながら、取組を進めました。
外国人が円滑かつ適切に就労し、安心して生活できる環境整備
新型コロナの感染拡大に伴う入国制限により、一時的に県内の外国人材は減少したものの、水際対策の緩和以降、技能実習及び特定技能等が牽引力となって、再び増加に転じています。こうした中、企業においては、外国人材の受け入れに関する制度の理解や職場のコミュニケーションなどが引き続き課題となっており、課題解消に向け、受け入れや就労に必要な情報提供を継続していく必要があると考えています。
令和5年度は、企業ヒアリング等をもとに、企業ニーズに応じたオーダーメイド型の出前講座やセミナーを実施するとともに、外国人材の職場定着や特定技能2号の輩出を目的としたモデル事業を実施し、造船・舶用工業分野では全国初となる特定技能2号が誕生したところです。今後、モデル企業の取組等をセミナーなどで紹介し、横展開を図ることで、外国人材の職場定着や特定技能2号の輩出に取り組む企業の増加につなげていきたいと考えています。
働き方改革の促進
新型コロナの影響の長期化により、令和5年度の県内の求職者数は高い水準で推移し、求職期間が長引く傾向にあることに加え、構造不況に伴う事業縮小等の影響を受けた離職者等の発生が見込まれていました。このため県では、求職者の早期再就職や雇用維持に向けたセーフティネットの構築に取り組んできました。
こうした中、働きたい人全力応援ステーションでは、仕事を探している方や転職を考えている方の就職を支援しています。相談者に対しては、キャリアカウンセリングによるキャリア形成支援や、資格や能力・適性に基づく経験職種を超えた個別マッチングなどの支援を行っており、令和3年6月の開設以来、相談者2,712人、うち1,374人が就職に結びつきました。
女性の活躍促進
新型コロナの感染拡大は、女性の雇用環境において、非正規雇用が多く雇用調整の対象となりやすいという課題の存在を浮き彫りにしました。このため県では、離職した女性や再就職を希望する子育て世代の女性等に対する相談対応や就職活動に対する支援を継続するとともに、雇用形態や業種転換を希望する女性離転職者等への支援に取り組んでいます。
令和5年度は、女性離転職者等に対してデジタルスキル習得の意識啓発等を図るキャリアアップセミナーを開催するとともに、県内企業に対して子育て世代女性等の多様な人材の潜在能力を知ってもらい採用に繋げるための意識改革セミナーを開催し、両者のマッチングの場を提供する「リスタートプログラム2023」を実施しました。
こうした様々な取組によって、県内の25歳から44歳の女性の就業率は、令和2年の国勢調査によると77.4パーセントと、10年前と比較して9.4ポイント上昇しており、働き続けられる職場環境の整備が一定程度進んでいます。
激甚化・頻発化する気象災害等への対応
激甚化・頻発化する気象災害等への対応
ハード対策等による事前防災の推進
毎年のように全国各地で大規模な災害が発生するなど、近年の地球温暖化等による気象災害の激甚化・頻発化や、南海トラフ巨大地震等が懸念される中、大規模災害への備えを着実に進めておく必要があります。
こうした中、令和6年1月に発生した能登半島地震では、道路の寸断による人命救助や物資輸送の難航、耐震性の低い家屋の倒壊など、様々な課題が顕在化しており、県としては引き続き、ハード対策として緊急時における円滑な救助活動等のための輸送経路の確保や、木造戸建住宅の耐震化の促進などに取り組んでまいります。
このほか、令和3年豪雨により甚大な浸水被害が発生した6河川における改良復旧プロジェクトでは、北広島町の冠川や出原川において工事が完了し、東広島市の三津大川では橋梁の復旧工事が完了するなど、順次工事を進めています。また、安芸高田市の多治比川や竹原市の本川においても用地取得を進め工事に着手したところであり、引き続き、早期完成に向け取り組んでまいります。
また、ため池については、防災工事が実施されるまでの間、定期的なパトロールや遠隔監視システムを導入し、関係市町と連携して安全と安心の確保に取り組んでいるところですが、昨年度、全ての防災重点農業用ため池の診断を終えたところであり、今後は、ため池の規模や下流への影響度の大きいため池から優先して防災工事を進めてまいります。
防災教育の推進、自主防災組織の体制強化
本県では「災害死ゼロ」の実現に向け、県民、自主防災組織、事業者、行政などあらゆる主体が一体となって、広島県「みんなで減災」県民総ぐるみ運動を推進していますが、いざという時に、県民一人一人が、災害から命を守るために適切な避難行動をとるためには、住んでいる場所の災害リスクや、災害の種類に応じた避難場所、避難のタイミングについて、日頃から正しく認識しておく必要があります。このため、自然災害に備えて日頃から行うべきことや、いつのタイミングで、何をすべきかなどをあらかじめ決めておくひろしまマイ・タイムラインを、県内全ての小学校に配布し、出前講座により活用を促進するなど、防災教育の推進に取り組んでいます。
令和5年度は、中学校における防災教育を推進するため、新たに、動画や画像を効果的に取り入れた防災e-ラーニング教材を制作し、県内中学校で活用できる環境を整備しました。
また、県下一斉の地震防災訓練を開催し、新たに製作した地震・津波タイムラインや、新たに運用を開始したひろしま自然災害体験VR(地震・津波シナリオ)の活用を促進しました。
さらに、適切な避難行動を促すには、近隣住民や家族などの「他者からの呼びかけ」が有効であるとの調査結果などを踏まえ、県では、自主防災組織による避難の呼びかけ体制の構築を進め、避難の実効性を高めていく必要があると考えています。
このため、災害時に避難の呼びかけが確実に行われるよう、令和5年度から土砂災害リスクの高い地域の約1,200組織を優先して、呼びかけ体制の構築と、地域防災タイムラインを活用した住民避難訓練等による実践的な取組を進め、組織の体制強化を図っています。また、組織が設立されていない地域についても、町内会等が実施する住民避難訓練などの地域の防災活動の支援により、避難の呼びかけの実効性向上に取り組むとともに、マイ・タイムライン等を活用して、個人の避難の準備行動を促進し、県民の皆様の適切な避難行動につながるよう取り組んでいます。
きめ細かな災害リスク情報の提供
県民の皆様が、自ら適切な避難行動を行うためには、きめ細かな防災情報の提供や、災害リスクを正しく認識できる取組を推進する必要があると考えています。
こうした中、県では市町による水害リスクを踏まえた防災まちづくりの検討に活用してもらうため、浸水深や浸水範囲を降雨規模別に示した浸水想定区域図や、降雨規模ごとに想定される浸水範囲を浸水深別に示した水害リスクマップの作成を進めており、令和5年度は二級水系の32水系52河川において作成・公表しました。
さらに、地域の水害の危険性を実感できるよう、全ての市町を対象に想定される浸水深等の情報を「まちなか」に掲示する「まるごとまちごとハザードマップ」にも取り組んでおり、令和5年度は、竹原市、尾道市、東広島市、府中町の役場や小・中学校、公民館等の公共施設に標識を設置しました。
また、令和5年度末で土砂災害警戒区域を有する県内420小学校区への土砂災害警戒区域や避難所等を示した標識の設置が完了しており、小学校への砂防出前講座等において実風景と対比しながら説明するなど、土砂災害リスクの認識を深めてもらっています。
このほか、ひろしま自然災害体験VRでは、今後30年以内に県内でも被害の発生が見込まれている南海トラフ地震を想定し、地震発生から避難するまでの一連の過程と津波を疑似体験するためのた地震・津波シナリオを制作し、市町の防災イベントなどでの活用を促進しています。
災害に強い都市構造の形成
県では、安全・安心に暮らせる都市の実現に向け、市街化区域内の土砂災害特別警戒区域を市街化調整区域に編入する逆線引きを進め、災害ハザードエリアにおける開発を抑制していく必要があると考えています。
令和5年度は、これまで実施してきた現地調査や地元調整等により確定した先行的に進める約500箇所について、国や関係機関と協議を行い、都市計画の変更素案を取りまとめました。引き続き、令和6年度末の都市計画変更告示に向け、公聴会の開催や案の縦覧、都市計画審議会への諮問等の都市計画手続きを適切に進めてまいります。
ウィズ・アフターコロナにおける経済の発展的回復に向けたLXの実践
生産性向上
イノベーション環境の整備
社会情勢の変化に対応し、新しい付加価値の創出に向けて挑戦する人を増やすためには、まず、企業経営者や先輩起業家から刺激を受けることで意欲を引き出し、さらに、その挑戦を支える環境が整えられた「イノベーション・エコシステム」の形成に地域で取り組む必要があると考えています。
令和4年度から実施しているひろしまユニコーン10プロジェクトでは、引き続き、スタートアップ企業等の事業成長を支援するプログラムを通じて採択企業16社に対し伴走支援を行うとともに、ベンチャーキャピタル向けのプレゼンテーションイベントによる資金調達機会を提供したほか、JETRO広島と連携し、海外展開の支援にも取り組んでいます。
さらに、起業家や経営者との交流の場を提供し創業支援を行う「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」の令和5年度の利用者数は、徐々にコロナ禍以前の状況に回復しており、力を入れている個別相談は年間 1,064件と前年度の約2倍、マッチング数も 84 件となるなど、利用者数・相談数ともに増加傾向にあります。
このほか、ひろしまサンドボックスにおいては、地域課題を新しい技術やビジネスモデルによって解決するチャレンジも促進しており、参画した県外のスタートアップ企業が広島拠点を確保し、地元の新卒学生を採用するといった動きも見られるようになってきました。
また、スタートアップの技術とビジネスモデルによる新たな市場創出を目指し、社会実装に向け障壁となる規制の緩和やルールメイクに先駆けて挑戦するサキガケプロジェクトでは、継続支援中の5件に加え、新たに公募により2件の新規案件を選定し開発実証に取り組んでいます。
さらには、広島の起業家が、自分らしく成長できるフラットなコミュニティ「広島イノベーションベース」を設立し、活動を開始するなど、イノベーションに挑戦できる環境整備が着々と進んでいます。
乳幼児教育・保育の充実、学びの変革の推進、高等教育の充実
本県では、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な人々と協働して新たな価値を創造することのできる人材」を育成すべき人材として掲げ、挑戦心を育む土台となる批判的思考(クリティカルシンキング)や、「やり遂げる力」などの重要な非認知能力が身に付く教育など、乳幼児期から社会人まで一貫した人づくりに取り組んでいます。
こうした中、乳幼児期における教育・保育の質を高めるためのツールとして「遊び 学び 育つ ひろしまっ子!」育みシートを作成し、研修等で試行活用するとともに、乳幼児期に育みたい「5つの力」の客観的な把握と子供への理解を深めるための評価指標を作成しました。
また高等学校においては、令和4年度から県立高等学校3校をモデル校として、教科横断的な学びによって実社会での具体的な課題発見や解決、さらに社会的な価値を創造していく資質・能力の育成を目指すSTEAM型カリキュラムの開発に取り組んでおり、この好事例などをホームページなどで紹介するとともに、研修などの様々な機会を通じて普及していくことで、全ての県立高等学校の魅力向上に向け取り組んでいます。
高等教育の充実
18歳人口の減少に伴い、大学運営が厳しさを増す中、デジタル技術の浸透による技術革新といった新たな課題に対応するためには、人的リソースの確保など、個々の大学・短大による取組では限界があるため、より一層、大学連携による取組を強化する必要があると考えています。
このため、令和5年度には、県内大学・短大の学生が必要なデジタルリテラシーを修得できる環境の整備に向けて、県立広島大学や叡啓大学と連携し、デジタル分野に係る「リテラシーレベル」の動画教材の提供や専任教員の派遣など、県内大学等に対する支援を開始しており、今後は、より難易度の高い「応用基礎レベル」に係る支援をスタートさせるほか、広島工業大学等との連携による公開講座の拡充など取組を強化していきます。
さらに、次代の産業を支える専門高校生等が産業界で必要な資質・能力を習得できる環境の整備に向け、学校と産業界をつなぐコーディネーターを新たに専門高校等に配置し、高度な知識技能を持つ外部人材を学校に招聘することで、産業界のニーズや将来的な社会変化に対応した職業教育の充実を図っていきます。
産業DX・イノベーション人材の育成・集積
デジタル化の進展等に伴い、企業を取り巻く経営環境が急速に変化する中、県内中小企業等がイノベーションを継続的に創出していくためには、常に新しい知識・技術等を取り入れて革新・改革を続けていく必要があると考えています。
このため県では、イノベーションの原動力となる高度で多彩な産業人材の育成を促進するため、県内の中小企業等向けに、社員を研修等へ派遣する経費の一部を補助するイノベーション人材等育成事業補助金や、個人向けの広島県未来チャレンジ資金により、本県の産業発展に不可欠なイノベーションの創出に寄与すると認められる専門職大学院の課程等での修学に要する費用を支援しています。
広島の強みを生かした新成長産業の育成
現在の健康志向やヘルスケアへのニーズは、今後より一層高まると考えられることから、県では、広く健康・医療分野全般までターゲットを拡大した取組や、新興国等のニーズも捉えた開発を促進し、ゲノム解析・編集技術など、広島の強みを生かした取組を進める必要があると考えています。このため、健康・医療関連分野については、本県の新たな成長産業の一つとなることを目指し、令和7年度の県内生産額を1,150億円とすることを目標に取組を進めています。
こうした中、広島大学発のスタートアップ企業が進める「アレルギー物質を減らした卵」に関する研究開発が農林水産省の大型補助事業に採択されたところであり、取組の加速が大いに期待されています。県としても引き続き、関連産業の集積促進に向けた支援を強化してまいります。
このほか、環境・エネルギー産業を本県の産業の柱とするため、既存の製品やサービスを、市場規模が大きく、成長率の高い海外市場へ展開して販路拡大に取り組むとともに、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた世界的な動きなど、社会環境の変化を捉えた多くのビジネスの創出も必要と考えています。
令和5年度には、カーボンニュートラルを起点とした事業変革に向けてひろしまものづくりカーボンニュートラルビジネスプロジェクトを開始し、企業ニーズに応じたコンサルティング支援等を実施しており、今後はサプライチェーン等における企業間連携の強化を図るため、多様な企業参画によるワークショップの開催や実証支援を通じて、県内企業のカーボンニュートラルへの取組を拡大・加速してまいります。
中小企業・小規模企業の生産性向上・経営改善
新型コロナの影響が長期化し社会経済が変化する中、中小企業等が「新事業活動」に取り組むことは、事業を継続する上で以前にも増して重要となっています。こうした中、計画の作成・承認によって様々な支援措置を利用することが可能となる経営革新計画の活用促進に取り組んでおり、令和5年度には、計画の承認件数が4,000件を超えました。県では引き続き、経営革新計画の活用を促進し、中小企業等の新規事業活動を支援します。
DXの推進
イノベーション環境の整備
ものづくりプロセス全体のデジタル化による産業競争力の向上を目的としたひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラムでは、ひろしま産学共同研究拠点(東広島市)に集った産学官のメンバーが創発的な研究活動を実施しており、県では、開発した要素技術の地域実装を視野に投資を加速しています。
このほか、県内外の産業DX人材や企業の集積を図るため、ひろしまサンドボックスを通じてデジタルの活用により実証・開発されたソリューションが県内に実装されるよう、県主導による公共・共同調達や国家戦略特区の活用等などにより、国や産業界と連携した規制緩和やルールメイクに取り組んできました。
公共・共同調達では、広島県内15市町が抱える地域課題等に対し、スタートアップ等から304件もの課題解決に資するサービス等のエントリー・提案がありました。審査の結果、12市町において26件が採択され、スタートアップ等により開発された商品・サービスの市町などへの共同調達が促進され,県内への横展開とスタートアップの地方進出・地域拠点の整備による企業・人材の集積につながっています。
産業DX・イノベーション人材の育成・集積
デジタル化のスピードが急速に高まり経営環境が大きく変化する中、県内企業がデジタル技術やビッグデータを活用して生産性向上や付加価値を創出するには、必要な知識・スキルを蓄積することが重要です。一方で、県内の高等教育機関の情報系学部・学科等では、将来的に産業DXやイノベーションの原動力となる高度で多彩な人材を育成していますが、これらの卒業生の半数以上が県外で就職しています。
このため、産業DXやイノベーションの原動力となる情報系人材の県外への流出防止及び県内企業等への定着促進を図るため広島県未来チャレンジ資金を拡充し、情報系学部・学科等で学ぶ学生を対象に、県内就職を返還免除の要件とするひろしまDX人材育成奨学金を令和5年度から貸付しています。
学びの変革の推進
県では、学校生活や学習に、日常的にデジタル機器を活用できる環境の構築に向けて取り組むとともに、これまで、中山間地域等の高等学校3校と都市部の高等学校1校を単位としたコンソーシアムを県内3地域(県東部、中央部、西部)にそれぞれ構築し、各学校に遠隔教育システムを導入しました。これにより、地域を超えて専門性の高い授業や多様な人々との交流学習など、質の高い学びの機会を提供しており、県東部のグループは文部科学省のCOREハイスクール・ネットワーク構想に採択され、令和5年度には、遠隔教育サミットin広島を開催し、3年間の取組の成果を全国に向けて発信しました。
高等教育の充実(再掲)
ライフステージに応じた県民の健康づくりの推進、県内企業と連携した「からだとこころ」の健康づくりの推進
近年、健康経営の取組が進みつつありますが、県内従業者の約8割を占める中小企業では、健康経営に取り組む企業の割合が未だに低い状況にあり、働き盛り世代へのアプローチとして、健康経営の実践企業の拡大を推進していく必要があると考えています。
このため県では、健康経営に取り組む県内企業と連携し、働き盛り世代の従業員に対して検診データを活用し、AI技術を用いた将来の健康リスクの「見える化」や、スマートフォンのアプリ等を活用した生活習慣の改善方法等の提案により、行動変容につながる実効性のある取組を検証する実証実験を行っています。
高度医療機能と地域の医療体制の確保
人口減少・超高齢社会が到来し、医療従事者等の働き方改革も推進される中、新たな技術を活用して、適切な医療・介護サービスを効果的・効率的に提供することが期待されています。
こうした中、コロナ禍がきっかけとなり、街の医療機関や薬局でも導入が進んでいるオンライン診療・服薬指導について、県では、すそ野の拡大や好事例の横展開、知識の習得支援等を進め、安全で適切な利活用を推進しており、令和5年度も、オンライン診療等を新たに実施される施設に対し導入のサポートを実施しました
企業誘致・投資誘致の促進
DXや異業種、異分野といった様々な主体が持つ技術やノウハウなどを組み合わせ、革新的なビジネス等につなげ、本県産業の付加価値を向上させていくためには、デジタル分野の人材と企業の本県進出が重要な要素であり、県ではさらなる集積に向けて、継続的なデジタル系企業を中心とした誘致が必要と考えています。
こうした中、令和5年度においても企業誘致プロモーションの集中期間Hi! HIROSHIMA business week 2023を開催し、関係市町のみならず、地元企業や大学、シェアオフィス等とも連携して、本県のビジネス拠点としての魅力を実際に体験する機会をつくることで、参加者による SNS 発信などによる情報拡散を促し、より多くの企業の関心を高め、デジタル系企業等の本県への進出が促進されるよう取り組みました。
また、令和5年度には、三原市の本郷産業団地においてデータセンターの立地が決定し、全区画が一括完売となったほか、半導体関連大手のディスコが、新たな産業用地取得に向けて呉市と売買契約を締結するなど、大規模な投資に向けた動きもありました。
このほか、イノベーション創出の源泉となる高度人材と企業の集積に向けた本社機能・研究開発機能の誘致について、カーボンリサイクルをはじめとした本県の先進的な取組など、産学官連携も活用した研究開発機能の誘致に取り組むとともに、製造業等においては、少子化・高齢化の進展により企業の雇用確保も課題となる中、AI、IoT、ロボット化などの生産性向上の観点からの投資や、県外への転出抑制に資する拠点機能強化(マザー工場化)に向けた投資促進を図り、業態転換や新事業創出を促進する必要があると考え、取組を進めています。
スマート農業の実装等による生産性の向上
農業分野においても、ロボットやAI,IoTなどを取り入れ、生産性を飛躍的に高めるスマート農業技術の実装が全国的に広まっていますが、中山間地域では活用しにくい技術が多いことから、本県の生産条件に応じたひろしま型の技術を構築する必要があると考えています。
令和5年度は、ひろしま型スマート農業の実装に向け、令和3年度に開始したテーマに係る技術の費用対効果を検証し、中山間地域に対応した収益性の高い経営モデルを作成したところです。引き続き、アドバイザーの派遣などによる伴走支援を行い、ひろしま型スマート農業を普及していくとともに、令和4年度、令和5年度に開始したテーマについても、農業者の皆様の意見を踏まえつつ、実証試験の中で技術改良を進めてまいります。
デジタル技術を活用したインフラマネジメントの推進
県では、建設分野においても、デジタル技術を最大限に活用し、建設工事の生産性向上や新たなサービスや付加価値の創出などに取り組む必要があると考えており、令和3年度に策定した広島デジフラ構想に基づき、具体な50項目の取組を進めています。これらの推進にあたっては、建設分野におけるデジタル人材の育成が重要であるため、建設事業者の皆様に対してICT活用工事の普及拡大に向けた3次元設計データの作成など実践的な講習を継続的に実施しており、令和5年度も経験の少ない建設事業者などを対象とした「ICTチャレンジ実践講座」を県内3箇所で計6回開催しました。
また、インフラマネジメント基盤「DoboX」により、3次元点群データや災害リスク情報等のデータをオープン化していることで、行政だけでなく、民間企業や大学の研究機関等においても活用が進むとともに、地域の防災活動や小学校の出前講座などでの活用も広がっています。
さらに令和5年度には、DoboXのデータを活用して地域課題の解決に有効なアプリケーションやアイデアなどの優秀作品を選考するコンテスト「DoboX データチャレンジ 2023」を開催しました。コンテストの受賞作品の一部は実用化に向けて取組が進むなど、オープンデータの利活用による新たなサービスや付加価値の創出につながっており、さらなる活用に向け取り組んでまいります。
データと新技術を活用したまちづくり(スマートシティ化)の推進
都市や地域が抱える諸課題の解決を図るため、県では、オープンデータ化やAI・IoTなどの新技術の利活用により、防災やまちづくりなどの地域課題を解決するスマートシティ化を推進していく必要があると考えています。
こうした中、都市の現況や将来の見通しを把握するため、DoboXにおいて、令和3年度から5年度にかけて実施した都市計画基礎調査情報を、順次、オープンデータ化するとともに、その利活用のため竹原市において3D都市モデルの整備を行い、防災分野で活用を行っています。
また、これらのデータ利活用の意識醸成を図るため、民間事業者を対象としたセミナーを開催するとともに行政職員自らが地図上でデータの可視化や分析の手法を会得できるよう、勉強会も開催しました。
リスキリングの推進と円滑な労働移動の実現
産業DX・イノベーション人材の育成・集積
デジタル化など経営環境が急速に変化する中、県内企業等がデジタル技術を活用して、生産性の向上や新たな付加価値の創造、成長分野での競争力強化を実現し、円滑な労働移動を実現するためには、企業が従業員のリスキリングに取り組み、成長分野や新たな業務に対応できる人材を育成することが必要と考えています。
このため県では、今後習得が必要なスキルの明確化、労働市場の流動化を踏まえた社会システムの在り方などについて公労使の代表者で構成する「広島県リスキリング推進検討協議会」で議論を行い、最終報告書をとりまとめました。また、報告書とあわせて県内企業のリスキリング実践に向け作成したガイドラインなどを活用し、リスキリングの推進と円滑な労働移動の実現に向けて、県内企業の皆様への支援を行っています。
また、リモートワークなど働く環境が変化し、地方転職、地方副業・兼業への関心が高まる中、県では、地域への人材の環流と、県内中小企業への「攻めの経営」への転換を促すため、多様な就業形態によるプロフェッショナル人材の集積を図る必要があると考えています。
そのため、広島県プロフェッショナル人材戦略拠点を運営し、金融機関等と連携した県内受け入れ企業の掘り起こしを行うとともに、令和5年度は、大都市圏等のプロフェッショナル人材に対し、広島県で働く・暮らす魅力を訴求するため、県内企業とのマッチング(転職)イベントを開催するなどプロフェッショナル人材の県内への環流を促進しています。
働き方改革の促進
人材獲得競争が激化する中、AI,IoTや高齢化社会の進展に伴うミスマッチの拡大を見据え、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで企業価値の向上につなげる人的資本経営の重要性が高まっています。一方で、働く側にとっても、社会の変化に対応したスキルアップ、キャリアアップを自立的、継続的に図ることが必要となっており、優秀な人材を育成・確保する観点からも人的資本経営が注目されていることから、県では、人的資本経営の導入に取り組む事業者の支援に取り組んでいます。
令和5年度は、人的資本経営の取組か管に向けた機運醸成を図るため、県内の中小企業を対象に、人的資本経営に取り組む県内の先進事例等を紹介するセミナーを開催するとともに、先進事例や具体的なノウハウを共有する「広島県人的資本経営研究会」を設立し、企業同士の意見交換などを通じて、県内企業の人的資本経営の理解促進に取り組んできました。この講演会やワークショップには延べ100名以上にご参加いただいており、人的資本経営の実践手法の選択肢が広がったといった声もいただいています。
若年者等の県内就職・定着促進
広島県の移住先としてのブランドを確立し、東京圏からの高い水準での安定的、継続的な移住につながるよう、県では、コロナ禍での暮らし方や働き方に対する価値観の変化も踏まえ、移住の検討を促進する情報発信に取り組む必要があると考えており、県外からの移住者の獲得に向けては、魅力発信、マッチング、受け皿づくりの取組を一体的に展開しています。
令和5年度も、東京都内で市町や企業等と連携して個別相談などを行う移住フェアの開催に加え、食の魅力や転職、継業など様々なテーマによるセミナーも数多く開催しました。さらに、市町と共同で移住体験ツアーを実施することで受け皿づくりの活動を促すとともに、仕事や生活環境など移住にあたっての不安に応える地域コーディネーターの皆様に加え、新たに地域を限定せずに目的別に対応する移住サポーターの皆様に広島県への移住定住活動に加わっていただいています。
それぞれの欲張りなライフスタイルの実現
県民の挑戦を後押し ~県民が抱く不安を軽減し『安心』につなげる~
妊娠期からの切れ目ない見守り・支援の充実(再掲)
子供の居場所の充実
県では、これまでも保育の受け皿の拡大を図ってきていますが、それを上回る保育ニーズや保育のミスマッチによって、依然として一部の市町において待機児童が発生しています。
このため、令和5年度も待機児童の大半を占める1・2歳児の受け入れ促進を図るとともに、保育総合支援サイトほいくひろしまや広島県保育士人材バンクを活用し、保育関係者への幅広い支援と保育士確保に取り組んでいます。
また、保育施設に従事する保育士に求められる役割が多様化する中で、初任者から中堅職員まで幅広く、保育の質の向上と専門性の向上に向け保育士キャリアアップ研修を実施しています。
児童虐待防止対策の充実
児童虐待相談対応件数が増加する中、複雑な家庭環境などを背景として、医療、教育、司法の関係者との連携を要する事案などへの適切な支援が求められており、県こども家庭センターのさらなる専門性の強化と、市町や民間団体との適切な役割分担と連携が必要になっています。
こうした中、県では、児童虐待等により一時保護が必要な子どもたちが、できるだけ良好な家庭的環境で、安心・安全に過ごすことができるよう、東部こども家庭センターの一時保護所の増改築工事を実施し、令和5年7月から供用を開始しました。
また、相談者の利便性向上を図るとともに、増加する児童虐待相談等に、よりきめ細かに対応するため、県こども家庭センターの所管区域等の見直しを行い、令和6年4月から安芸高田市を北部こども家庭センターの所管としました(西部こども家庭センターからの移行)。さらに令和7年度には、東広島市と三原市にこども家庭センターの支所を新設する予定としています。
学びの変革の推進(再掲)
学びのセーフティネットの構築
学校に居づらさを感じている児童生徒や、不登校及び不登校傾向にある児童生徒が、個々のペースで学習に取り組むとともに、他者との関わりを持ち、社会とのつながりを維持するための居場所づくりを推進する必要があります。
令和4年度から開設したSCHOOL”S”では、対面とオンラインの両面から社会とつながる場を提供するとともに、個々の状況に応じた学びを支援することで社会的な自立に向けて必要な力を育てる取組を進めています。令和6年3月末時点の登録者数は270名で、1日平均約65名が利用するなど、児童生徒の居場所としての機能は充実してきており、また、指導主事が学校や支援を希望される市町の教育支援センター等へ訪問し、環境整備、学習支援や学校生活支援に向けてサポートしました。引き続き、スペシャルサポートルームの設置、充実の推進とともに、SCHOOL”S”の取組で得た知見も活用して、市町の教育支援センター等とのネットワークを構築するなど、不登校等児童生徒への支援の一層の充実を図ってまいります。
特別支援教育の充実
県立特別支援学校に在籍する自立通学が困難な医療的ケア児の通学については、既存のスクールバスでは車内で医療的ケアを実施することが困難なことから、保護者等が送迎している実態があります。
このため、令和5年度は、自宅と学校間の通学(登下校)について、介護タクシー及び訪問看護ステーションから派遣された看護師によって行う通学支援を試行実施し、その検証結果を踏まえ、令和6年1月からも継続して実施しています。利用された方からは、「わが子をよく知る看護師さんに安心して任せることができた」などの声をいただいているところです。
高等教育の充実(再掲)
ライフステージに応じた県民の健康づくりの推進、県内企業と連携した「からだとこころ」の健康づくりの推進(一部再掲/メンタルヘルス対策の推進)
これまで県では、こころの健康維持・増進に関する普及啓発や、早期対応のための人材育成、相談支援体制の整備や窓口の周知、経済問題や職場のメンタルヘルス及び自殺未遂者や遺族への支援等に対応する関係機関の連携を推進してきました。これらの取組により、自殺者数は平成29年度から令和2年度まで減少傾向にあったものの、新型コロナの影響などにより、令和3年から増加し、特に中高年層の増加が著しい状況となりました。その後、いのち支える広島プランの見直しや相談窓口(SNS、電話)の拡充などに取り組み、減少傾向となったものの、コロナ禍前の水準までは減少していない状況にあります。このため県では、各種相談窓口の周知はもとより、相談窓口間の連携強化などにより、悩みを抱えている人が、早期に、適切な支援につながるよう取り組んでいます。
がんなどの疾病の早期発見・早期治療の推進
県ではこれまで、がんなどの疾病の早期発見・早期治療を推進するため、デーモン閣下を起用した啓発キャンペーンを展開するとともに、中小企業の従業員などに対して個別に受診を促す取組などを実施してきました。その結果、検診(健診)受診率は上昇傾向となっていますが、依然として全国平均を下回っていることから、県ではこれまで効果のあった企業及び保険者等と連携した取組を継続するとともに、ライフイベントの機会を捉えた受診勧奨等に取り組むことで、がんなどの疾病の早期発見、早期治療を推進しています。
こうした中、令和5年度には、企業との連携により県民総ぐるみのがん対策を推進するTeamがん対策ひろしま登録企業制度が10 年目を迎え、登録企業数は188社となりました。県では引き続き、参加企業の拡大を図るとともに、中小企業への個別訪問支援により、企業ごとの課題等に沿ったきめ細かな伴走支援や好事例の横展開などを行いながら、より多くの企業でのがん検診実施につなげ、さらなる受診率の向上に取り組みます。
高度医療機能と地域の医療体制の確保(再掲)
障害者とその家族が安心して生活できる環境整備(再掲)
ハード対策等による事前防災の推進(再掲)
防災教育の推進、自主防災組織の体制強化(再掲)
きめ細かな災害リスク情報の提供(再掲)
デジタル技術を活用したインフラマネジメントの推進(再掲)
交通事故防止に向けた総合対策
交通事故の抑止に向け、交通指導取締りや各種交通安全対策を推進するとともに、より安全な道路交通環境を整備しています。
令和5年度も、区域(ゾーン)を定めて最高速度30キロメートル毎時の速度規制を実施するゾーン30やゾーン30プラスなど、生活道路等における人優先の安全・安心な歩行空間の整備を推進するとともに、老朽化した交通安全施設や、摩耗した横断歩道の補修など適切な維持管理、信号灯器のLED化など交通安全に資する整備を推進しています。
若年層の県内就職・定着促進
インターンシップ等の見直しの動きを踏まえ、今後、学生により早い段階から県内企業を知る機会を提供していくことで、就職までのステップアップを図り、県内就職につなげていく必要があると考えています。
このため令和5年度は、県内において,高校及び大学と連携して出前講座を拡大して実施したほか,県内企業に就職した若手社員の就職活動や働き方の経験をインタビューとして広く配信し,県内企業の魅力がより多くの学生等に届くように取り組むひろしま就活サポーターなど,県内学生等の県内就職の促進に取り組みました。また県外学生に向けては,就職支援協定を締結した大学とも連携し,業界研究会の拡大実施やSNSなどを活用し,就職に至るまで継続して有益な情報を届けることなどにより転入促進にも取り組んでいます。
世界とつながる空港機能の強化
県では、令和3年7月から空港運営を開始したHIAPが掲げる広島空港の将来ビジョンの達成に向けて、ポストコロナにおける需要回復の機を逃さないよう、連携して取り組む必要があると考えています。
こうした中、開港30年を迎えた広島空港では、コロナ禍で休止していた国際路線について、8月には大連・北京線が、9月には上海線が復便するとともに、7月にはソウル線が新規就航し、令和6年1月には1日往復に増便するなど、各国と本県との交流が活発になっています。利用状況を見ても、国内線及び国際線の旅客全体では前年度比で131.2%となっており、国際線の搭乗者数は完全には回復していないものの、国内線は平成30年度比の95.5%となり、コロナ禍前にほぼ回復しています。
また、令和5年度には、広島空港を利用する県民や、国内外から訪れる方々が、より便利で快適に移動できる空港アクセスネットワークの構築に向け、広島空港と宮島口などを直接結ぶ空港アクセス路線の運行実証実験も開始しました。
世界標準の港湾物流の構築とクルーズ客船の寄港環境の整備
県では、東南アジア諸国等との交易拡大を支えるため、広島港及び福山港において、大水深岸壁の整備など、国際物流拠点としての機能強化を進めるとともに、クルーズ客船の受け入れ環境の充実に取り組んでいます。
こうした中、広島港における令和5年1月から12月のコンテナ取扱量は、主要品目である自動車部品の輸移出が増加したことなどにより、過去最高の取扱量(約28万TEU)となりました
また、令和5年度には、広島港宇品外貿ふ頭において、クルーズ客船の乗客への快適な待合空間の提供や円滑な出入国検査等に対応した広島港クルーズターミナルが供用開始しました。クルーズ客船の寄港は、コロナ前を上回る水準にまで回復しており、県では引き続き、さらなるクルーズ客船の誘致を通じた地域の活性化につなげてまいります。
加えて、港湾における脱炭素化を目指すため、広島港及び福山港において関係者と連携のうえ、カーボンニュートラルポート形成に向けた取組を推進しており、令和5年度には、広島港及び福山港における港湾脱炭素化推進計画の策定に向けた協議会を立ちあげました。
人・モノの流れを支える道路ネットワークの構築
県では、生産性の向上を図るため、県内の都市部を中心に発生する渋滞による損失時間を低減させ、既存の高速道路ネットワークへのアクセス強化等を図り、企業活動を支える物流基盤となる道路ネットワークを構築していく必要があると考えています。こうした社会資本マネジメントにおける道路分野の整備計画として、県では道路整備計画を策定しており、現在は令和3年度から令和7年度までを計画期間としている広島県道路整備計画2021に基づき道路整備を進めています。
令和5年度には、計画策定から2年が経過したことから、計画に掲げる成果目標等の進捗状況について総点検を行い、年間渋滞損失時間や主要渋滞箇所における対策箇所数等の目標値に対して、概ね順調に進捗していることを確認しました。
また、最先端メモリ半導体(DRAM)の製造企業であるマイクロンメモリジャパンの大規模設備投資が、半導体等の戦略分野に関する国家プロジェクトの生産拠点の整備に選定されたことを受け、生産拠点と高速道路インターチェンジを結ぶアクセス道路である一般国道375号の4車線化や一般県道吉川西条線の道路拡幅等について、国が新たに創設した「地域産業構造転換インフラ整備推進交付金」を活用し、事業の加速を図っているところです。
引き続き、計画に掲げる目標を達成できるよう、地元市町と連携を図りながら、適切な工程管理などを行い、着実な事業進捗を図ってまいります。
ネット・ゼロカーボン社会の実現に向けた地球温暖化対策の推進
国は、2030年度の温室効果ガス削減目標を引き上げるとともに、地球温暖化対策計画を改定し、全国で脱炭素先行地域を創出し、地域のカーボンニュートラルの実現を後押しするなど、地球温暖化対策を推進しています。また、今後、大きな市場として成長が見込まれるカーボンリサイクル技術については、広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想に基づき、国の取組とも一体となり、県内外の研究者やスタートアップ等の研究や実証を支援し、協議会を通じたプロジェクト創出やマッチング支援、次世代教育プログラムの提供など、カーボンリサイクル関連技術の研究強化と拠点化、新たな産業集積に向け、多角的な取組を支援しています。
こうした中、令和5年度には、カーボンリサイクル産学官国際会議が地方開催としては初めて本県で開催されました。20の国や地域から国内外の研究者、関係者の皆様にご参加頂き、本県や大崎上島町のカーボンリサイクル実証研究拠点が社会実装に向けて重要な役割を果たすことが確認され、また、県独自の取組として国際会議参加者と県内の高校生や大学生との交流事業も実施しました。会議の参加者からは「広島県での先進的な取組に感銘を受けた」「次世代を担う若者が参加することは大変意義がある」との声をいただいたところであり、県では今後も、国などと連携しながらカーボンニュートラルの取組を加速してまいります。
地球環境の保全
海洋プラスチックごみ問題が世界的に深刻化する中、本県の宝である瀬戸内海の環境を保全するため、2050年度までに新たに瀬戸内海に流出する海洋プラスチックごみをゼロにすることを目指し、県では、飲料メーカーや小売・流通事業者、市町等が参画するGREEN SEA瀬戸内ひろしま・プラットフォームにおいて、生活系プラスチックごみの流出防止対策に取り組んでいます。
令和5年度は、デジタル技術を活用した中四国初となるテイクアウト飲料容器のシェアリングサービスの実証や、ポイント還元による使用済みプラスチック容器(シャンプー等)の店頭回収やリサイクル、清掃イベントなど様々な取組を実施しています。また、次世代を担う若者が主体となって、海洋プラスチックごみ問題を自分事として捉え、企業等と連携・共創しながら問題解決に向けたアイデア創出を実践につなげていくプログラム「ゼロチャレ広島」などにも取り組みました。
県民の挑戦を後押し ~県民の『誇り』につながる強みを伸ばす~
産業DX・イノベーション人材の育成・集積(再掲)
中小企業・小規模企業の生産性向上・経営改善(再掲)
企業誘致・投資誘致の促進(再掲)
地域の核となる企業経営体の育成
県では、農林水産分野において、経営体の「稼ぐ力」を高めるため、マーケットインの視点で、農業経営体と多様な業種の企業が連携し、広島が誇る新商品や新サービスの提供に向けた取組を進めています。
こうした中、新たな「食」のビジネスを創発し、農業経営体の「稼ぐ力」を高めることを目的に令和4年度から実施している「Hiroshima Food Baton(ひろしまフードバトン)」は2年目を迎え、6社が様々な社会課題に挑む他分野の企業との共創でイノベーションを起こし、消費者の潜在的な需要に応える高付加価値型の商品開発や、そこから派生する新ビジネスの創出などに取り組んでいます。
持続可能な広島和牛生産体制の構築
県では、広島和牛が広島の食を代表するひとつとなるよう、比婆牛に焦点を当てて重点的なブランディングを進めています。
令和5年度には、G7広島サミット1日目のワーキング・ディナーで比婆牛が首脳陣におもてなしされたことを契機に、サミットで提供された食の生産地を訪れるモニターツアーや観光プロダクトの開発など、新たに取り組むとともに、広島県内の高級飲食店の料理人が、比婆牛と県産食材を組み合わせた特別な一皿を各店舗で提供する比婆牛体験フェアなども実施しました。こうした取組により需要の拡大を図りつつ、料理人や生産者団体などの関係機関による意見交換会の場を設置するなどバリューチェーンの構築に向けた取り組みを進めています。
瀬戸内の地魚の安定供給体制の構築
県では、瀬戸内の多彩な地魚についても、広島を代表する食材として県民の誇りとなり、観光客の訪問のきっかけともなるようブランド化に取り組んでいます。
令和5年度は、その魚の魅力を広めるため、「瀬戸内さかな」というネーミングとシンボルマークを作成し、G7広島サミットの国際メディアセンターにおいて、魚をさばく技法の実演や伝統的な日本料理である握り寿司を提供しました。さらに期間限定で、旬の瀬戸内さかなを4種類以上使った特別なコース料理を17店舗で提供する瀬戸内さかな日和フェアを実施するなど飲食店における営業実証にも取り組んでいます。
海外展開の促進
県産品の海外販路拡大にあたって県では、広島らしさに焦点を当て、国内最大の生産量を誇る牡蠣を重点品目と定め、中国、東南アジア市場での現地パートナーの発掘、現地レストランや小売店をターゲットとした販路拡大に取り組み、これまで日本からの輸入が増加しているマレーシア、シンガポールや台湾などにおいて、県内牡蠣事業者と輸入業者とのマッチングを進めてきました。
令和5年度は、県産牡蠣のアジア市場への輸出拡大を図るため、冷蔵牡蠣のニーズが高い台湾及びシンガポールで現地輸入業者と県内牡蠣事業者との商流構築に向けた商談会と、牡蠣と親和性の高い県産日本酒の商談会を同時開催しました。
加えて、フランスにおいて現地輸入業者やメディア等に対しトップセールスを行い、県産牡蠣とサミットで注目された日本酒のペアリングによる新たな味わいの提案が、現地での高い評価につながっており、海外での販路拡大に好感触が得られるなど、一定の成果が出ています。
ひろしまブランドの価値向上
県ではひろしまブランドの価値向上や広島ファンの増加を目的としてひろしまブランドショップTAUを設置し、首都圏における情報発信に取り組んでいます。令和5年度は、ブランドショップの来店者数、売上額は前年度を上回ったところであり、さらに首都圏への販路開拓に意欲のある県内事業者等を対象に、店頭でのテストマーケティングを行うとともに、首都圏での販路拡大が見込まれる商品について商談会等を実施し、年間で51商品の商談が成約し、成約数においても前年を約2割上回る結果となりました。
このほか、食の本場であるフランスを重点市場に位置づけ、県内の酒造会社とともに、県産日本酒の現地販売代理店の設置など販売ルートの定着に向けた取組やプロモーションイベントに取り組んできました。
令和5年度は、G7広島サミットの開催によって世界各国から広島への注目が集まる中、広島を代表する特産品である牡蠣と日本酒について、フランスでの認知度向上及び輸出拡大に向け、現地輸入業者やメディア等に対しトップセールスを行うとともに、EUへの販路拡大も視野に入れた基本合意書を現地輸入業者と締結し、より強固な関係を構築しました。さらに現地の大手航空会社や著名な雑誌社を訪問し、県産牡蠣と日本酒等の魅力発信や観光誘客につながる連携に取り組んでいます。
加えて、食の分野で世界的な影響力・発信力を有する著名レストランシェフや輸入事業者、現地メディアを本県に招き、酒造り現場の視察や食体験を通じて、広島県産の日本酒のこだわりや特徴、歴史などの知識を深めてもらい、県産日本酒の魅力を発信しました
このような取組の結果、フランスでの県産日本酒を取り扱う小売店舗数は平成30年度からの5年間で約2.5倍の630店舗にまで増加し、レストラン等での取扱店舗も増えており、引き続き、フランスでの認知度やブランド力を高めることで、フランスだけでなく、他国への輸出拡大にもつなげていきたいと考えています。
誰もがスポーツに親しむ環境の充実
県では、スポーツを「する」人だけでなく、「みる」「ささえる」人も増やすため、県民が楽しみながらスポーツに関心を持っていただけるような仕組みづくりが必要と考えています。このため県では、全国トップリーグや地域において活躍するスポーツチームが数多く存在している本県の強みを生かし、県内25チームと連携し、広島横断型スポーツ応援プロジェクトTeam WISHを創設し、令和5年度においても、Team WISHを中心として、県内チームの認知度の向上を図るとともに、県民の皆様にさらにスポーツに関心をもっていただけるよう取り組みました。
また、東京2020パラリンピック競技大会や、本県で開催されたパラスポーツ大会によって、県民のパラスポーツへの関心が高まる中、(公社)広島県パラスポーツ協会を中心に、誰もが参画し共にスポーツに親しめるインクルーシブ・スポーツ・フェスタ広島2023が東広島市で初開催されました。このイベントを契機に、県民に広く浸透するよう、県パラスポーツ協会を中心に県内市町、競技団体、企業、指導者など多様な主体と連携を図りながら、スポーツを通じた多様性を認め合う共生社会の実現を目指していきます。
文化芸術に親しむ環境の充実
県民の身近なところで、地域の独自性ある魅力的な文化芸術イベントや、良質な文化芸術を鑑賞できる機会の充実を図るため、県では、令和5年度において広島交響楽団などが県内12市町を巡回するミュージックキャラバンを実施したほか、「広島県公立文化施設ネットワーク」において、外部講師を招いた県外優良事例の勉強会や地域住民参画型のイベントの企画や運営など、様々な取組を行ってきました。こうした取組の結果、伝統芸能や食文化などの様々なジャンルの文化芸術に触れることができる体験型イベントや学校行事と地域の文化祭を融合した手作り芸術祭など、地域が連携した自主的・継続的なイベントも生まれてきています。
このほか令和5年度には、G7広島サミットで各国首脳やメディア関係者等に神楽が披露され注目を集めた機会を捉え、中四国各県の神楽団が一堂に会し神楽公演を実施する中四国神楽フェスティバルinひろしまも開催しました。
核兵器廃絶に向けた新たな政策づくりと多国間枠組みの形成
ロシアによるウクライナ侵略を背景に、一部の国では核兵器に依存する傾向が高まるなど、核を巡る情勢は危機的な状況にあります。この状況を打開するため、県では、人類史上初の被爆地である広島が有する道義的権威としての影響力を発揮し、世界に核兵器廃絶に向けたインパクトを与えることが必要と考えています。
令和5年度は、ウィーンで開催されたNPT運用検討会議第1回準備委員会に参加し、長崎県との共催によって、「持続可能性な平和と繁栄」「核軍縮の中期的視点という提案」をテーマに、核抑止に替わる安全保障をテーマにパネルディスカッションを開催しました。また、NPT全締約国に今年に10回目の開催となったひろしまラウンドテーブルの議長声明文を添えて書簡を送付し、平和な国際社会の実現に向けて具体的な行動をとるとともに、広島を訪問し、被爆の実相に触れていただくことを要請しました。
さらにニューヨークで開催された核兵器禁止条約第2回締約国会議に参加し、本体会議でのパネルディスカッションへの参加、各サイドイベントへパネリストとして登壇するとともに、広島県としてもサイドイベントを開催しました。こうした取組を通じて、安全保障と持続可能性の二つの観点から、核兵器廃絶と核軍縮の重要性を多面的に訴え、賛同者拡大の働きかけを行っています。
県民の挑戦を後押し ~県民一人一人の夢や希望の実現に向けた『挑戦』を後押し~
働き方改革の促進
働き方改革の進展により、県内企業において働きやすい環境づくりが広がる中、県では、今後は経営メリットの発現と相関性がある働きがいの向上に取り組むことを通じて、従業員の能力を最大限引き出し、組織力を高め、企業成長へとつなげていくことが必要と考えています。
このため県では、働きがい向上に取り組む県内企業の創出と自律的な取組の促進を目的に、働きがい向上に積極的に取り組む企業が民間調査会社の実施する「働きがいのある会社」調査や認定ランキングに参加する際の費用等を一部補助する事業を実施しており、令和5年度には参加企業の中から5社が優秀企業として調査会社から選出されました。
広島の強みを生かした新成長産業の育成(再掲)
スマート農業の実装等による生産性の向上(再掲)
森林資源経営サイクルの構築
県ではこれまで、年間40万立方メートルの県産材の生産量確保に向け、高性能林業機械の導入や路網整備の支援などを行うとともに、生産された県産材の需要を確保するために、大型製材工場の整備や県産材を利用した住宅を建築する取組に対して支援を行ってきました。その結果、スギ・ヒノキの生産量は令和3年度から概ね40万平方メートルで推移しています。
こうした中、庄原市に整備が進められていた製材工場が令和6年3月に完成し、今後、流通コストの低減や、庄原市等において生産量の増加が見込まれるヒノキ等のさらなる利用促進が図られることが期待されています。
ネット・ゼロカーボン社会の実現に向けた地球温暖化対策の推進(再掲)
特性を生かした適散・適集な地域づくり
人材の発掘・育成、ネットワークの拡大
持続可能な中山間地域の実現のためには、中山間地域が持つ魅力や豊かさに共鳴し、地域の抱える課題の解決や、新たな価値を生み出していくための主体的な活動を展開していく、地域に根差したリーダーを育成・確保していく必要があると考えており、県ではこれまで、こうした人材の活動が、将来にわたって主体的かつ継続的に展開していくよう、登録型人材プラットフォームひろしま里山・チーム500を開設し、これを基盤とした人材育成や地域と登録者間のネットワークの構築を進めており、令和5年度末の登録者数は700名を超えています。
こうしたひろしま里山・チーム500の登録者が地域の皆様と協働して行う新たな取組は累計120件を超えています。取組の中には、事業開始後、取組に共感した地域内外の方々から協力の申し出があるなど活動の輪が広がっている事例や、メディア等でも取り上げられ、地域づくりの一つのモデルとして各地域への広がりや新たな連携が期待される取組など、様々な形で地域に元気をもたらす活動が展開されています。
新たな事業展開に向けたチャレンジ支援
企業のサテライトオフィス誘致に取り組む中山間地域を有する市町の支援を進める中、デジタル企業には、進出先における地元企業との連携といった新たなビジネス展開などに関するニーズが高いことがわかりました。
令和5年度は、こうしたニーズに対する具体の提案が行えるようサテライトオフィスの誘致を行う県内12市町との連携を強化し、本県の都市地域に進出したデジタル企業が、中山間地域にさらにオフィスを設ける動きなども出てきています。
持続可能な生活交通体系の構築
持続可能な生活交通体系の構築に向けて、令和5年度は県全域を対象とした地域公共交通政策のマスタープランである「広島県地域公共交通ビジョン」を策定しました。今後はこの交通ビジョンに基づく関係施策に取り組むことで、地域の生活交通を維持・確保していきます。
また、デジタル化の進展は、中山間地域における交通の諸課題を克服できる可能性を秘めており、県では交通と医療、福祉、商業等を結びつけた新たな交通サービスとして広島型MaaSを推進してきました。引き続き、地域の創意と工夫による生活交通の確保に向けた取組を後押しするため、デマンド交通やボランティア輸送など、地域が主体となった新たな生活交通への取組を支援するとともに、様々な移動サービスの検討も行い、地域の生活交通の持続可能性を高めてまいります。
自然環境と生物多様性の保全の実現
本県の自然公園等施設は、老朽化に加えて利用者のニーズの多様化などに十分対応できているとは言えず、安全で快適に利用できるよう、魅力向上に向けた取組を進める必要があると考えています。こうした中、令和5年度には、もみのき森林公園において、民間事業者自らの投資と創意工夫による新たな運営方法をモデル的に導入し、民間ノウハウの活用による新たなサービス提供等に向け準備を進めました。
人を惹きつける魅力ある都心空間の創出
県では、広島の都心においてひろしま都心活性化プランに掲げる将来像の実現に向け、エリアマネジメント活動の一層の活性化など、広島市や広島都心会議等と連携して、官民一体となったまちづくりを推進しています。
広島市都心では、広島サッカースタジアムが開業し、隣接する広場エリアや広島城三の丸においても商業施設や多目的広場の整備が進められるなど、新たな賑わい拠点整備に向けた取組が着実に進んでいます。
また、民間企業などまちづくりに関わる様々な関係者で構成される広島都心会議において、民間主体で広島都心部の目指すべき姿などをとりまとめた広島都心会議未来ビジョン2030も発表されました。
さらに、備後県域の玄関口である福山駅周辺地区においては、福山駅前再生ビジョンの「めざす福山駅前の姿」の実現に向けて、福山駅周辺デザイン計画に掲げた取組の推進や、民間主体のエリアマネジメント体制の構築など、福山市と連携した取組を進めています。
令和5年度は、ウォーカブルなまちなかの形成に向け、民間主体で一部の道路を歩行者専用にして飲食ブースを設置するなどの社会実験が実施された他、三之丸町の旧キャスパ等跡地の再開発が竣工するなど、福山駅周辺の再生に向けた取組が進んでいます。
ネットワーク及び交通基盤の強化
広島都市圏東部地域においては、その拠点としての役割を発揮するため、道路と鉄道との立体交差化や周辺地域の基盤整備により、都市交通の円滑化と鉄道により分断された市街地の一体化を図る必要があると考えています。
こうした中、広島市東部地区連続立体交差事業においては、事業効果の早期発現のため、区間を分けて工事を進めており、府中町域と広島市域をまたぐ1期区間では、令和12年度の完成に向け、仮線路工事や高架橋等の詳細設計に取り組んでいます。また広島市域と海田町域をまたぐ2期区間では、令和9年度の工事着手に向け、仮線路の設計を進めています。県では引き続き、広島市やJR等の関係者と連携し、計画的な整備を推進していくとともに、周辺地域の一体的なまちづくりに資する都市計画道路の整備や、土地区画整理事業の促進に取り組んでまいります。
機能集約された都市構造の形成
持続可能なまちづくりを実現するためには、県では、行政・医療・商業機能などを集約して拠点性を高めながら既存ストックの活用を促すことで、都市のスポンジ化や市街地の郊外拡張を抑制し、集約型都市構造を形成していく必要があると考えています。
令和5年度は、地域のまちづくり組織やエリアマネジメント団体が掲げるビジョンの実現に向けて、地域の方々と共に、まちの魅力を発信して求心力を高めながら、まちとその周辺エリアに暮らす選択肢を提案する官民連携プロジェクトDIG:R HIROSHIMAを開始しました。このプロジェクトでは、県と多様な民間団体がメンバーとなり、利便性の高いエリアへの居住誘導に向け、地域のビジョンを踏まえた魅力の発信や、住宅ストックの活用促進に取り組んでいます。
災害に強い都市構造の形成(再掲)
地域と連携し、地域の特性を生かしたまちづくりの推進
広島型の「適散・適集」なまちづくりの実現に向けて、県では、価値観やニーズの多様化を踏まえながら、広島県の地域特性や強みを生かした、ゆとりと魅力ある居住環境を創出していく必要があると考えています。
令和5年度も引き続き、東広島市「広島大学周辺エリア」、府中市「府中駅西側エリア等」、廿日市市「市役所周辺エリア」の各地区における将来ビジョンの実現に向け、市町と連携しながら取組を進めています
データと新技術を活用したまちづくり(再掲)
広島サミットの開催とレガシーの継承・発展
令和5年5月19日から21日の3日間に渡り開催されたG7広島サミットの開催にあたっては、多くの皆様にご理解とご協力をいただき、安全かつ円滑にサミットを行うという開催地としての責務を果たすことができました。皆様に心より感謝を申し上げます。
今回のサミットは、ロシアによるウクライナ侵略など国際情勢が緊迫化し、核兵器使用のリスクが高まっている中での開催であり、とりわけ「平和の回復と維持」が重要なテーマとなりました。こうしたサミットのテーマと、原子爆弾による破壊から復興した広島の地が持つメッセージ性はかつてないほど一致し、歴史的なサミットになったと受け止めています。さらにG7や招待国の首脳、国際機関の長などの皆様が、広島に集い、被爆の実相に触れ、対話を重ねられたことは、世界に大きなインパクトを与え、世界平和の実現に向けた力強いメッセージとなりました。
また、広島の魅力についても、海外メディア向けのプレスツアーや国際メディアセンターでのおもてなしなどを通じて、先人たちが築き上げてきた広島の産業、多彩な食資産、文化などを世界に発信することができました。こうした活動にオール広島で取り組み、訪問者の方々を広島ならではの温かいおもてなしでお迎えできたことで、被爆の惨禍から目覚ましい復興を遂げた広島だからこそ感じられる平和による繁栄のメッセージを届け、世界中に広島ファンを増やすことができたと確信しています。
加えて、空港での歓迎セレモニーやパートナーズプログラム、インフォメーションカウンターなど、様々な形で多くの学生ボランティアの方々にご参加いただき、首脳等の平和記念公園訪問時には、地元の子供たちから花輪を渡していただくなど、様々な場面で若い方々にご参加いただきました。このことは広島の担い手である若者達の自発的な行動を後押しするきっかけになったものと考えています。
こうした広島サミット開催の経験や成果は、県民の皆様一人一人にとっても「誇り」となり、大きな財産になったものと考えています。これを一過性とすることなく、引き続き平和発信や観光、産業の振興など広島の発展に尽力してまいります。
安全、安心で円滑なサミットの開催を支援
首脳会議等のサミット関連プログラムの開催支援
首脳会議やパートナーズ・プログラムなどのサミット関連プログラムが安全・安心かつ円滑に開催されるよう、関連プログラムで必要となる施設や食材、物品、各種コンテンツなどの推薦や関係機関との調整など、国のプログラム実施に向けた支援に取り組むとともに、県民会議による歓迎・おもてなしのレセプションを開催しました。
また、外務省が、各国報道機関関係者の活動拠点として県立総合体育館に国際メディアセンターを設置することに合わせて、各国報道関係者が円滑に取材活動を行い、広島からサミットに係る最新情報が発信できるよう、各種申請や関係施設管理者との調整など必要な支援に取り組みました。
加えて、会場周辺の警備等に当たる警察関係者や消防士、サミット期間中の関係者向け医療スタッフ等の宿泊場所の約38万1千泊分の確保や、約40万食分のお弁当の提供など、食事の継続した供給にも取り組むとともに、サミット開催による県民生活への影響を最小限に抑えるため、住民説明会の開催や、サミット期間前後の交通規制による渋滞緩和のための交通総量抑制対策などに取り組みました。多くの皆様のご理解とご協力にあらためて感謝申し上げます。
会場等における消防特別警戒の実施
サミット期間中の災害、火災及び事故などの発生に備え、災害等が発生する前の査察や訓練指導、会場等での警備活動の実施や、災害等が発生した場合の救急・救助活動など消防特別警戒を実施するための体制を、消防庁や広島市などの関係機関と構築しました。
各国要人等に対する保健・医療提供体制の構築
国と連携し、現地医療対策本部等において医療拠点の運営に取り組むとともに、来訪中の海外報道関係者を対象に、外国人記者自らが受診できる遠隔医療通訳を設置しました。
また、新型コロナの感染拡大防止のため、サミット開催前から各国代表団や海外報道関係者、現地で業務にあたる警察官や消防士等が検査を受けるための体制整備にも取り組みました。
さらに、サミット開催期間中の災害やテロの発生などに備えるため、災害用医薬品の確保や供給体制を整備し、広島県赤十字血液センター等の関係機関と調整し、輸血用血液製剤の確保と迅速な供給体制の整備に取り組みました。
このほか、毒物や劇物の多い施設への立入検査や、サミット関連施設での保健所による食品衛生指導の実施、市町と連携したサミット関連宿泊施設の衛生指導、水道テロなどの未然防止等のための立入検査など、監視指導体制及び検査体制を強化しました。
各国要人等の安全、安心かつ円滑な移動のための公共土木施設の環境整備
サミット開催期間中の各国要人等の安全、安心かつ円滑な移動を確実に実施するため、サミット主会場及びその周辺、宿泊施設、各種サミット関連プログラムで利用される訪問先や移動ルートにおける公共土木施設の補修などによる安全性の確保を図るとともに、要人等の警備の観点から、不測の事態が発生した場合においても的確に対応できるよう、定期的なパトロールを実施するとともに、関係機関と連携し、緊密な連携・協力体制の構築に取り組みました。
広島サミットに伴う警備諸対策の推進
安全・安心なサミットの開催のため、国内外要人等の安全確保、サミット関連行事の円滑な進行の確保、テロ等の重大事案の未然防止、県民生活の安全・安心の確保のため、警備諸対策や交通規制、サイバー攻撃対策、官民連携によるテロ対策等に関係機関と連携しながら取り組み、警備の万全を期しました。
広島らしさを感じていただくおもてなし
サミットの開催に向けた歓迎機運の向上とおもてなし
サミット開催の成功には、開催地である県民の皆様のサミットへのご理解、ご協力が不可欠であったことから、県民の皆様に向けて、節目でのイベント開催や、県内各地でのサミットに関するPR活動を行ったほか、住民参加型のおもてなし事業や清掃活動に県民の皆様と一緒に取り組み、クリーンアップ運動に参加した企業及び団体数は200以上に及びました。
さらに、交通接点等でのカウントボードの設置や、看板・バナーの作成・掲出、公共交通機関等を活用したラッピング電車やバスの運行などに取り組みました。なお、これらの制作等にあたって、デザインの一部は、県内の高等学校等、延べ21校にご協力いただいて制作しました。
また、民間企業や市民団体などの皆様が、サミットに関連付けて実施するサミットを応援する取組や協賛を広く募集させていただいたところ、2,045もの取組が寄せられており、県民会議においてとりまとめて情報発信させていただくなど、様々な主体によるおもてなしや歓迎機運の醸成に取り組みました。
サミットで活用する可能性のある関連施設等の改修・修繕
サミット期間中に、各国要人や海外報道関係者が心地よく滞在していただけうよう、サミットでの活用が予定された施設や、サミット誘致計画書に記載している公共施設等を、おもてなしの一環として改修・修繕を行いました。
また、サミット開催や、その後のインバウンド需要の回復を見据え、宿泊施設をはじめとして観光施設のデジタル化やユニバーサル化、省エネ対策など受け入れ環境整備に取り組みました。
世界に向けた平和の発信
被爆の実相に直接触れる機会の提供
サミットでは、各国首脳に被爆の実相に直接触れていただくため、平和記念公園行事において、平和記念資料館の視察や被爆者との対話、原爆死没者慰霊碑への参拝・献花、平和のメッセージの発信、記念植樹の実施を国に対して働きかけた結果、いずれも実現することができました。加えて、被爆の惨禍から目覚ましい復興を遂げた広島の歴史の発信に取り組みました。
核兵器のない平和な世界の実現に向けた発信
広島サミットの開催を通じて、広島から力強い平和のメッセージを世界中に発信し、核兵器のない真に平和な世界の実現に向けた機運を高めるため、フォーラムや世界平和経済人会議ひろしまをサミット開催前に実施するとともに、核兵器のない平和な世界の実現に向けて、海外メディアによる平和の発信に取り組みました。
県民市民によって磨き上げられた広島の魅力を世界に発信
国内外に向けた広島の魅力の発信
サミットでは、広島の魅力を詰め込んだプレスツアーの開催や、国際メディアセンターに設置した広島情報センターでの様々な情報発止、在外日本大使館等での各種行事における広島サミットのPR、観光や文化・芸術、県内の食資産などの広島の魅力や平和の取り組みなどを一つにまとめたプレス用のハンドブック配布などにより、国内外の報道関係者に対して、様々な広島の魅力を発信するよう取り組みました。その結果、メディアへの露出は国内が約17万件、海外が約25万件で、合計は約42万件となり、広告換算額としては約8,832億円となりました。特に海外においてメディア露出件数が大きくなっており、世界に向けて広島のプレゼンスの向上と魅力の発信につなげることができ、国内外で大きなインパクトを残すことができたものと受け止めています。
また、県内各市町が、地元の魅力をPRするために実施する広島サミットを応援する取組を広く募集し、その取組を県民会議において情報発信するなど、県内各市町の魅力発信にもつながるよう取り組みました。
県内の魅力的な観光や文化・芸術、産業、環境・エネルギー、食資産の発信
サミットは世界中の多くの人々の注目が集まるという千載一遇のチャンスでした。このため、観光や文化・芸術、産業、環境・エネルギー、さらには食資産など、広島の多くの魅力を世界に発信し、国内のみならず、世界各国からも注目を集め、広島を訪れる、あるいは選んでもらえる契機となるよう取り組みました。具体的には、県産品の認知度向上と消費拡大のため、中四国各県や政令指定都市などで県産品の展示会や即売会を実施し、サミット後においても県産品の認知及び評価が高まるよう取り組みました。
また、広島の多彩な食資産を多様な主体と共創して磨き上げ、広島和牛や瀬戸内さかな等と併せて効果的に情報発信する「おいしい!広島」プロジェクトを展開し、県産農林水産物の販路拡大と消費拡大につながるよう取り組みました。
具体的には、生産者と飲食店等のマッチング、県民の皆様のアイデアや協賛する企業により磨き上げられた食のお披露目会や、食を目的としたグルメツーリズムを促進するEatrip HIROSHIMAキャンペーンの開催のほか、県産食材を積極的に活用した料理や商品を堪能できる「おいしい!広島 食べんさい店」の登録は1,200店舗を超え、生産者や事業者の新たなチャレンジへの意欲も高まっており、県内の多様な主体の参画による「おいしい!広島」のイメージづくりに向けた機運が醸成されています。
サミットの成果を未来につなぐためのポストサミットを見据えた若者の参画
サミット関連プログラムへの若者の参画
サミットに関連する様々な取組に次世代を担う若者が関わる機会を提供するため、外務省などと調整を行い、サミット関連プログラムへの若者の参加機会を確保するとともに、県民会議が主催するG7広島サミットジュニア会議に地元の高校生を招待し、その成果文書を発表するとともに、岸田首相を訪問し、その成果文書を手交しました。
国際問題に関心を持つ若者の増加
サミット開催前に、国際舞台で活躍する現役の外交官によるサミットや外交・国際問題をテーマにした講座などを県内の中学校及び高等学校で開催しました。また、県立図書館に過去のサミットのテーマとなった様々な分野の図書や参加国に関する図書を用意した特設コーナーを設けるなど、子供たちのサミットに対する興味・関心を促し、国際社会が直面する諸課題に関する学びを喚起する機会となるよう取り組みました。
さらに、サミット開催後、若者をG7各国に派遣し、現地の若者との対話を通じて、サミットで議論された平和をはじめとした地球規模の課題の解決に向けた機運醸成を図る若者たちのピースキャラバンを実施しました。このプログラムの活動の様子は現地のメディアでも取り上げられ、多くの広島への関心を高めることができました。また、参加者からは「実際の行動に移したい」との声があがるなど、国際感覚やチャレンジ精神を涵養できたほか、サミットの成果を今後につなげる取組ができたと考えています。
令和5年度の主な取組(一覧表)
時期 | 区分 | 内容 |
---|---|---|
4月 |
新生児・小児聴覚検査フォローアップセンターの開設 | 新生児・小児聴覚検査の関係機関に対するフォローアップや、保護者向けの普及啓発などの役割を担うセンターを開設 |
カルビー株式会社の広島新工場新築工事起工式 | 先端テクノロジー導入による最新鋭マザー工場の役割を担う五日市地区の新工場の新築工事の着工 | |
G7 Gymnastics Hiroshimaが広島で開催 | G7広島サミットの開催に伴う国際体操連盟の主催でG7各国の著名な体操選手が広島へ集い、平和の願いを発信 | |
5月 |
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に移行 | 国の方針を受けこれまでの県の取組も見直しを行うが、移行後も必要な方が入院できる医療提供体制を維持 |
マイクロンテクノロジー社による広島工場への投資計画等の発表 | 最大5,000億円となる次世代DRAM開発・製造計画に向けた投資計画や、国内初の半導体製造装置(EUV)の導入を発表 | |
G7広島サミットが開幕 | 7か国並びに欧州理事会議長と欧州委員会委員長が参加し、毎年行われる国際会議が広島で開催 | |
ウクライナのゼレンスキー大統領が広島を電撃訪問 | ゲストとしてサミットに参加したゼレンスキー大統領が原爆死没者慰霊碑に献花を行うとともに、平和記念資料館を訪問 | |
G7広島サミットが閉幕 | 被爆地での初めての開催となる広島サミットが3日間の日程を終え無事に閉幕 | |
6月 |
メキシコ・グアナファト州とスポーツ交流協定を締結 | メキシコ・グアナファト州とのスポーツ交流の更なる推進のため、スポーツ分野の交流に関する覚書を発展締結 |
HIROSHIMA FOOD HEROES CHALLENGE 食の磨き上げお披露目会 | 広島の誇るべき一皿と食文化を磨きあげ、“おいしい”の高みを目指すプロジェクトのお披露目会の開催 | |
広島スタートアップサミット開催 | Google主催による広島発のイノベーションを促進し、スタートアップの支援とコミュニティの育成を後押しするプログラムの開催 | |
7月 |
平成30年7月豪雨災害の発災から5年 | 150名以上もの尊い命が失われ、甚大な被害をもたらした平成30年7月豪雨災害から5年が経過 |
Eatrip HIROSHIMAキャンペーン開催 | サミットを契機に注目が集まった「広島の食の魅力」でグルメツーリズムを促進するキャンペーンの開始 | |
ひろしまラウンドテーブル2023の開催 | 「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた10回目となる多国間協議の場を開催 | |
ひろしまクールシェアがコロナ禍を経て4年ぶりに開催 | 商業施設などに出かけ涼しさをシェアすることで、家庭の電力使用量を削減し、地域全体の省エネに繋げていく取組を4年ぶりに実施 | |
G7広島サミット回想展の開催 | G7広島サミットにおいて各国首脳等が記帳した芳名録や首脳会議等で使用された円卓等を一般公開 | |
医療的ケア児支援センターが開所 | 医療的ケア児やその家族が、地域の中で安心して生活ができるよう 様々な相談を受けつける窓口を開所 |
|
8月 |
県動物愛護センターがリニューアルオープン | 譲渡促進のための施設、命について学ぶ施設、人が集まる施設を基本コンセプトに、土日祝日も開館してリニューアルオープン |
ひろしまLED照明器具購入応援キャンペーン開始 | 身近で買い替えのしやすい照明器具のLED化によって省エネ効果を実感していただくためのキャンペーンの実施 | |
9月 |
高度医療・人材育成拠点基本計画の公表 | 医療資源を集約し環境を整備することで、全国から医師を惹き寄せ、地域完結型医療と医療人材の派遣循環体制を構築する計画を策定 |
広島南警察署新庁舎の運用開始 | 老朽化等による建替整備を進めてきた広島南警察署が移転し、新庁舎で業務を開始 | |
カーボンリサイクル産学官国際会議の開催 | カーボンリサイクルについて各国間の協力関係を強化するべく行われる会議に広島県が初めて地方開催地として選ばれた | |
宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)の運用開始 | 盛土規制法に基づく規制区域を県内全域(政令市、中核市を除く)に指定し、全国に先駆けて運用を開始 | |
インクルーシブ・スポーツ・フェスタ広島2023の開催 | 障がいの有無にかかわらず、誰もが参加し、楽しむことを目的としたインクルーシブスポーツの体験会やトークショーなどのイベントを開催 | |
10月 |
Hi! HIROSHIMA business week2023の開催 | 参加者同士や地元のキーパーソンとのネットワーキングなど、通常の出張では出会えないビジネスマッチングを創出するイベントを実施 |
県産牡蠣及び日本酒等のフランスでのトップセールスの実施 | 広島産牡蠣や日本酒等について、フランスでの認知度向上及び輸出拡大に向けてバイヤーやメディア等に対しトップセールスを実施 | |
広島空港が開港30周年を迎える | 開港以来、本県企業の底堅いビジネス需要や、国際交流によって旅客需要が支えられた広島空港が開港30周年を迎える | |
11月 | 本郷産業団地の完売 | 本郷産業団地にデータセンターの立地が決定し、同団地が完売 |
核兵器禁止条約第2回締約国会議への参加 | 本体会議へのパネルディスカッションや県主催サイドイベント、国連及び各国関係者の面会等を通じ核兵器廃絶に向けた働きかけを実施 | |
インド共和国タミル・ナドゥ州との経済交流に関する覚書の再締結 | 人材交流や双方向での企業進出及び投資を促進することなどを盛り込んだ経済交流を推進するための協定を締結 | |
12月 |
広島空港の新バス路線が誕生 | より便利で快適な広島空港アクセスを実現するため宮島口空港線とアルパーク・ジ アウトレット広島空港線の2路線を運行開始 |
冬の光熱費節約チャレンジの実施 | 暖房や照明などで最も光熱費が高くなる冬期における家庭の省エネを応援する企画の実施 | |
広島都心会議ミライビジョン2030の発表 | 広島都心会議において、民間主体で広島都心部の目指すべき姿などをとりまとめた広島都心会議ミライビジョン2030を発表 | |
1月 | 旧広島陸軍被服支廠の重要文化財指定 | 建築物の価値調査のとりまとめ結果を踏まえ、国の文化審議会文化財分科会において答申が行われ、重要文化財に指定された |
DoboXデータチャレンジ2023最終審査会の開催 | DoboXのデータ等を活用して地域課題の解決に有効なアプリケーションやアイデアなどを援交するコンテストの最終審査会の開催 | |
2月 | 新サッカースタジアム開業 | 広島の新たなランドマークとなる365日のにぎわい作りを目指した日本初のまちなかスタジアムの開業 |
3月 |
ひろしまユニコーン10スタートアップアクセラレーション2023成果発表会の開催 | ユニコーン企業のような高い企業価値と急成長を目指してプログラムに取り組んだ16社による約7カ月間の成果発表イベントを開催 |
第1回JR芸備線再構築協議会の開催 | より利便性・持続可能性の高い最適な地域公共交通の実現に向けて、改正地域交通法に基づき設置された第1回芸備線再構築協議会の開催 | |
広島港クルーズターミナル供用開始 | 多くのクルーズ船が寄港する宇品地区において、円滑な出入国手続きが行えるようクルーズターミナルを整備 |