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がんゲノム医療

印刷用ページを表示する掲載日2023年4月27日

【目次】

※このページは,国立がん研究センターがん情報サービスのコンテンツを引用して作成しています。

 

遺伝子情報に基づく個別化治療

 近年では,肺がん,大腸がん,乳がんといったがんの種類別だけでなく,遺伝子変異(※)などのがんの特徴に合わせて,一人一人に適した薬や方法を選び,治療を行うことができるようになってきました。このような医療を「個別化治療」と呼び,遺伝子情報に基づく「個別化治療」が始まっています。

(※)細胞の中の遺伝子が,何らかの原因で後天的に変化することや,生まれ持った遺伝子の違い。

 

がん医療における標準治療としての遺伝子検査

 現在,一部のがん治療では標準治療として,医師が必要と判断した場合にがん遺伝子検査を行い,1つまたはいくつかの遺伝子を調べ,がんの診断をしたり,検査結果を基に薬の効きやすさや副作用の出やすさなどについて判断し治療が行われています。

 がん遺伝子検査の内,保険診療となっているものは,医師が必要と判断した場合に行っています。がんに関連した遺伝子検査について詳しく知りたい方は,まずは主治医にご相談ください。また,お近くのがん相談支援センターでもご相談いただけます。

 

がんゲノム医療

 「ゲノム」とは,遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味し,私たちの体をつくるための,いわば設計図のようなものであり,一人一人違っています。

 「がんゲノム医療」とは,前の項目で説明したがんの「個別化治療」の一つであり,主にがんの組織を用いて,多数の遺伝子を同時に調べ,遺伝子変異を明らかにすることにより,一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療です。

 

がんゲノム医療を行う場合

 がんゲノム医療として,多数の遺伝子を同時に調べる検査である「がん遺伝子パネル検査」(がんゲノムプロファイリング検査)は,その一部が保険診療として,標準治療がない,または標準治療が終了したなどの条件を満たす場合に行われています。

遺伝子情報に基づくがんの個別化治療についての図
▲遺伝子情報に基づくがんの個別化治療(国立がん研究センターがん情報サービスより)

 がん遺伝子検査では一つまたはいくつかの遺伝子を調べるのに対して,がん遺伝子パネル検査では多数の遺伝子を同時に調べます。

 

がんゲノム医療「がん遺伝子パネル検査」について

 がん遺伝子パネル検査とは,効果が期待できる薬があるかどうかを調べる検査です。生検(※)や手術などで採取されたがんの組織を用いて,高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で,1回の検査で多数(多くは100以上)の遺伝子を同時に調べます。遺伝子変異が見つかり,その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には,臨床試験などでその薬の使用を検討します。

(※)病変の一部を採って,顕微鏡で詳しく調べる検査です。(生検組織診断とも呼ばれます。)手術や内視鏡検査などのときに組織を採ったり,体の外から細い針を刺して組織を採ることで,がんであるかどうか,悪性度はどうかなど,病理医が病変について詳しく調べて診断を行います。

 

がん遺伝子パネル検査の対象

 現在,がん遺伝子パネル検査は誰でも受けられるわけではありません。一般的には,(1)標準治療がない固形がん,(2)局所進行もしくは転移があり,標準治療が終了した(終了見込みを含む)固形がんの人で,次の新たな薬物療法を希望する場合に検討します。また,患者さんの全身状態などの条件もあります。

 

がん遺伝子パネル検査に基づく治療と留意点

 がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではありません。

期待できること

 遺伝子変異が見つかった場合は,その遺伝子変異に対応した薬があれば,臨床試験などでその薬を使用することを検討できます。また,新たな治療法の開発などにつながる可能性があります。

留意すべきこと

  • 検査の結果,遺伝子変異が見つからない場合もあります。
  • がんの種類にもよりますが,治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異は,約半数の患者さんで見つかります。
  • 遺伝子変異があっても,使用できる薬がない場合もあり,がん遺伝子パネル検査を受けて,自分に合う薬の使用(臨床試験を含む)に結びつく人は全体の10%程度といわれています。
  • がん遺伝子パネル検査では,多くの遺伝子を調べるため,本来目的とする個別化治療とは別に,がんになりやすい遺伝子をもっていることがわかる場合があり,これを二次的所見といいます。この場合,将来の健康に対する不安が生じる可能性があります。
    ※もちろん,もともと調べたいがんのこと以外(遺伝性のがんなど)は,たとえ見つかったとしても結果を聞かなくても構いません。結果を聞く場合には,十分な理解ができるように,病院は遺伝に関する相談体制を整備しています。
  • 新たに組織を採取するための生検を行う場合などは,検査に伴う体への負担が生じる可能性があります。

 

がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院

 がんゲノム医療を必要とするがん患者さんが,全国どこにいても,がんゲノム医療を受けられる体制を構築するため,がんゲノム医療をけん引する高度な機能を有する医療機関として,「がんゲノム医療中核拠点病院」及び「がんゲノム医療拠点病院」が,またそれらの拠点病院と連携してがんゲノム医療を提供する「がんゲノム医療連携病院」が,国(厚生労働大臣)により指定されています。

 令和5年4月1日現在,全国で,がんゲノム医療中核拠点病院が13箇所,がんゲノム医療拠点病院が32箇所,がんゲノム医療連携病院が202箇所が指定されています。県内の指定状況は次のとおりです。

 なお,保険診療としてがんゲノム医療を受けられるのは,この中核拠点病院,拠点病院,連携病院に限られます。

 

がんゲノム医療中核拠点病院

 県内にはありませんが,中国地方では岡山大学病院が指定されています。

連携するがんゲノム医療連携病院

 

がんゲノム医療拠点病院

がんゲノム医療連携病院 

 

がんゲノム医療を受けるには?

 がんゲノム医療を受けたいときには,まずは主治医に相談しましょう。また,お近くのがん相談支援センターでも相談することができます。がんゲノム医療について,知りたいことや不安などがあるときは,お気軽にご相談ください。

 

留意事項(国立がん研究センターがん情報サービスから抜粋)

  • インターネットには信頼できる情報もある一方で,効果が科学的に証明されていない自由診療で行われる治療に関する情報もあるため,慎重な確認が必要です。数ある情報に迷った時には,ひとりで悩まず主治医やがん相談支援センターにご相談ください。
  • がんや生活習慣病のかかりやすさに関連した遺伝子検査が可能であるとして,簡易な遺伝子検査(いわゆるDTC[Direct-to-Consumer])が市販されています。市販の遺伝子検査の多くは,遺伝や医学を専門とする医師の判断を必要としておらず,検査結果やその解釈,推奨される対策などの信頼性に欠けるものもあります。市販の遺伝子検査を受ける場合には,信頼できる医療機関か,対面での遺伝カウンセリングが行われる体制が整っているかなどについて慎重な確認が必要です。遺伝子検査の結果,家族性腫瘍などの遺伝性疾患の可能性が見つかる場合があり,専門家のサポートが必要になります。市販の遺伝子検査を希望する場合には,遺伝の専門家(臨床遺伝専門医など)に相談することが望ましいとされています。

 

ゲノム情報の管理

 保険診療として行うがん遺伝子パネル検査の結果と,付随する臨床情報は,患者さんの同意に基づき,「国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)」に集められ,大切に保管されます。その情報は,ご本人の今後の治療や診断のみならず,ほかの患者さんのよりよいゲノム医療のためにも,貴重な基盤データとなります。また,適切・公平な手順で,国内外の研究者による,がんの新しい治療開発などの研究のためにも活用されます。

 

参考になるサイト

 

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